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2009年 11月 19日

被災地・トゥブライ町長の悩み

台風ペペンでもっとも大きな被害を受けたのが、ベンゲット州のトゥブライ町、イトゴン町、アトック町。トゥブライ町の町長、ルーベン・パオアッド氏は、CGNボランティアのJさんのコーディリエラ大学院の同級生でもありました。有機農法に関心が高く、町内の有機農業を力強くあと押し。通っているコーディリエラ大学の駐車場でも、週2回、トゥブライ町直送のオーガニック野菜のブースをオープンするなど、その本気に(いや、政治家はスタイルだけの人もたくさんいますから)CGNも一目置いていました。CGNの環境保全活動にも興味しんしんで、わざわざ忙しい中、CGNオフィスも何度か訪ねてくださりました。
フィリピン文化センター(CCP)のアート・セラピー・プログラムを行ったコロス集落で40もの家が土砂崩れにあっていながら、まったくニュースになっていないのに驚いて、スタッフ3人とともにパドアッド町長を訪ねました。

トゥブライ町での台風の死者は13人。アンバサダー村の金鉱山のサント・ニーニョでの土砂崩れによるものでした。コロス集落も同じアンバサダー村に位置しますが、幸いにも土砂崩れが起きたのが夜ではなく、朝7時だったため、早起きの農民たちは危険を察知し、高台の教会などに避難していて、死傷者はでなかったそうです。しかし、21軒が倒壊。その後の専門家による調査で、倒壊した21軒を含む全40軒が、現在の場所では住居を構えるには危険であり、別の土地に移住するのが望ましいと判断されたそうです。サント・ニーニョ集落も移住を強いられる人が約60家族(これは土砂崩れの危険性という理由だけでなく、違法採掘者という問題もあるようですが、その話はまたの機会に)。全部で100家族が移住する場所を探すというのが目下のパオアッド町長のもっとも大きな悩みです。
100家族といえば、コーディリエラ地方の山の中の村ひとつの平均的な家屋数です。新しい村ひとつを人工的に作るというには、もう計り知れない問題が伴い、パオアッド町長の悩みは一朝一夕には解決しそうにありません。

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    ↑左からトゥブライ町長、ルーベン・パオアッド、反町、ブルーノ、カルラ、リリー

もうひとつの町長の悩みは、被災者の避難所のことです。
「台風から1ヶ月たった今も、実はまだ町内に一箇所だけ避難所があるのです。でも、もう2週間、僕は顔を出していない」町長の顔は曇ります。
なぜかというと、避難所に収容されている人のリストと、台風によって家が全倒壊、あるいは部分倒壊した人のリストを照らし合わせたところ、ただの一家族も一致しなかったのだそうなのです。
つまり、避難所に今もいる人たちは家を失った人ではなく、もともとトゥブライに家を持っていない人たち。。。。。。金鉱山で掘っ立て小屋を建てて非合法に金採掘をしていたいわゆる「プライベート・マイナー」や、農家に出稼ぎに来ていたローランド(山岳地方=ハイランドに比較して低地に住む人のことをこう呼びます)の人たちだというわけです。

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   ↑トゥブライ町役場から見た山の土砂崩れのあと。
    「まるでシミみたい」とリリー  

バギオの町に住む自家用車をもっているようなちょっと余裕のある層は、テレビのニュースで避難所でインタビューに答える台風被災者の困窮した様子を見て、善意でスーパーマーケットで救援物資を購入し、まず避難所にもって行きます。

が、町長いわく。
「たった一つ残った避難所には、いまも缶詰のダンボールが山積みです。でも、トゥブライに住む山岳民族の文化は、マニラやローランドとは違います。山岳民族には、家を失ったからといって、避難所に好んで住む人はいない。たとえ、避難所に行けばタダで米や缶詰が手に入るとしてもです。みんな、避難所ではなく、どこか親戚の家に身を寄せているんです」

市長によると、まったく本来の役割を果たしていない避難所(小学校の校舎の一部を使っています)を閉鎖するために、役場の職員が避難所にいる人たちを引っ越しさせるための説得をしている最中だそうです。「僕らも台風で被害にあった」という避難所にいる出稼ぎ者をむやみに追い出すわけにもいかず、半年は町がアパート代を負担するという条件の提示するまで追い込まれているようです。これが、なかなか表には出ない台風被災処理に関するパドアッド町長の悩みのひとつ。

私たちCGNが、「緊急支援ではなく、中長期の復旧プログラムの相談に来ました!」
と言ったら、「そうなんです。私たちが求めているのはそれなんです!」と町長はヒザを打ちました。
CGNのトゥブライ町における復旧活動については、またブログでご紹介していきます。

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     ↑役場に貼ってあったトゥブライの地図。
      土砂崩れはおきやすい地域など、ちゃんと色分けされていました。
      わかっていはいても、何かが起こってからではないと
      行動には移せないものなのです。

CGNでは、台風ペペン被災地の復旧活動のための義捐金を募集しています。
詳しくはこのページをご覧ください。

by cordillera-green | 2009-11-19 13:00 | 緊急支援


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