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2012年 07月 05日

Kapwa-3国際会議 報告1 アイヌ民族の方々が参加

 2012年6月25日から7月1日の1週間、Kapwa-3という先住民族会議がバギオ市で行われました。コーディリエラ・グリーン・ネットワークは、アナク・ディ・カビリガンの環境演劇公演でご招待を受けて参加。また、ボランティアとして、日本人ゲストの方々のコーディネイトをお手伝いしました。
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  ↑vocasでのオープニング。鼻笛の名手DOM-ANとカミギンから来たロサリーが
   オープニングのパフォーマンス。

 この会議の目的は、フィリピン各地に暮らす先住民族の知恵の価値を再認識し、学びあい、現代の教育や開発に生かしていこうというもの。フィリピン政府機関の国家文化芸術委員会(NCCA:National Commission for Culture and the Arts)の伝統文化の継承を目的としたスクール・オブ・リビング・トラディション(SLT: School of Living Tradition)という教育プログラムで指導をしている20余りの民族の伝統文化の継承者とそこで学ぶ若者たちが集い、それぞれの伝統文化のチャント(朗誦)や踊りを披露する一方で、世界各国から伝統文化の継承、先住民族の人権確立、先住民族の若者のアイデンティの回復などのために活動してきたゲストが 招かれ、それぞれの経験をシェア。また、メイン会場のフィリピン大学ではフィリピンの先住民の伝統文化について調査・研究をする学者たちの発表も数多く行われました。
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↑驚きの先住民族の芸能が次々披露されました、フィリピンは広い!
 
 会議を主催したのはNGO法人Heritage and Arts Academies of the Philippines(H.A.P.I.)。在バギオの映像作家、キドラット・タヒミックと奥さんのカトリン・デ・ギアが中心のNGO。Kapwa国際会議は、過去2回イロイロ市で開催され今回が3回目の開催でした。
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 会議には、フィリピン各地からのSLTを中心とする先住民族約20民族、計150名が参加。さらにアメリカやマニラなどから学術関係者が50名ほど参加しました。
日本からは 先住民族のアイヌを代表してアイヌ民族党代表の萱野志朗氏と事務局の島崎直美氏、アイヌの伝統芸能や木彫りを継承・紹介するグル―プ、ミナミナの会(大阪市)の4名が参加しました。また、先住民族特有の体の動きを取り入れたダンス作品を創作しているJun Amanto氏(大阪・中崎町のコンテンポラリー・ダンサー)が先住民族の若者たちを対象としたワークショップのファシリテイターとして招待されたほか、京都大学東南アジア研究所所長の清水展教授が招待参加。さらに、愛知県立大学・多文化共生研究所所長の稲村哲也教授、昨年のアナク・ディ・カビリガンの日本でのイベントのコーディネイトをしてくれた日丸美彦氏、京都産業大学のJennufer Teeter氏、山形国際ドキュメンタリー映画祭事務局の濱治佳さんなども参加されました。
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 その他、海外からは、アメリカからネイティブ・アメリカン オジブエ族のリーダー、デニス・バンクス氏。モンゴルから世界的詩人DR. ゴンボジャヴ・メンドオーヨ GOMBAYAVIN MEND-OOYO、タイ・チェンマイからカレン族のコミュニティ・リーダー、 Jorni Odochao氏(タイ・カレン族のコミュニティ・リーダー)なども参加。国際色豊かな会議となりました。
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 主催のキドラット・タヒミックらしいというのか、フィリピン大学のホールで行われたアカデミックな会議以外は実にいい加減な仕切りで、いつどこでだれが何をやるのかわからないままこの大がかりなイベントはスタート。アイヌのゲストの方々も最初は不安に感じたようですが、そのうちこの流れに任せる進行にのツボにはまったようで、それぞれみな、居心地がよい場所を探して、自分が伝えたいことを耳を傾けたい人に伝えるという風になっていって、なんだか終わってみたらみなそれぞれに満足していて、在バギオのお手伝いスタッフとしては胸をなでおろしています。
 そうなんですよね。お膳立てがしっかりあって、予定通りに動くことが前提になっているから、ちょっと時間が遅れたり、参加のお客さんが少なかったったり、主催事務局のコーディネイトが至らなかったりすると不満が募るのですが、参加者がそれぞれ自分がやりたいことを見つめ直して動くと、けっこうそのほうが無駄がなくって、中身の濃いワークショップや活動内容になっちゃたりするものなのだ~~。と今回も学ばせていただきました。フィリピン風いい加減さの生むマジックです! ゲストのはずのJUNさんもアイヌの方々の伝統文化披露の際の音響などの裏方やってくれたり、演劇ファシリテイターで自費参加してくれた花崎さんもAANAK DI kABILIGANと同じドミトリーに泊まってくれてお芝居だけでなくて子どもたちの生活の面倒まで見てくれたり、、、スタッフ不足、準備不足、資金不足で穴だらけの状態だからこそ、お互い補い合っていつの間にかいいチームが出来上がるってこともあるのだと実感です。
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↑ロサリー、濱はるかさん、花崎攝さんと。みんな初対面。

VOCASで行われたSLTミーティングのオープニングで萱野氏がご挨拶と、アイヌ民族資料館の紹介をされました。
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ミナミナの会の藤戸裕子さんと梶原ミアさんは、VOCASでアイヌの民謡や踊りを披露したほか、SLTの若者たちにムックリの演奏やアイヌの子どもたちの遊びも含めたワークショップを開催。
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アイヌ木彫り工芸家の藤戸幸夫さんは、イフガオ族の木彫り名人とともに、二股になった木を3日間で彫り、アイヌとイフガオの友情の印としました。
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藤戸幸夫んが作ってプレゼントしてくれた髪飾りのお返しに、CGNボランティアのガワニGawani Domogoが、詩をお返しに作ってfacebookにアップしています。ここに転載。素敵な交流ですね。

I've learned from you
Beyond translated speech.
Blades give life
You've shown:
Cuts, holes and scratches
Don't harm or hurt this time.
But rather
Your knife cuts the umbilical chord
Of branch, of trunk
From earth mother
And wood breathes
Life of its own.
Your knife clears the surface
Off any obstruction
I see only the essence.

I'm only smiling
At what you've carved
A creation
Smiling back at me.

[Yukio was part of the Ainu delegation during the Kapwa 3 Conference last month in Baguio. Together with Ifugao woodcarvers, they did carving demo/workshop at Assumption.]
[***Thanks Kizel Cotiw-an for photo :)]

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KAPWA-3 International Conference

会期:2012年6月25日―7月1日
会場:フィリピン共和国バギオ市 フィリピン大学バギオ校、VOCAS
主催:NGO法人Heritage and Arts Academies of the Philippines(H.A.P.I.)

会議のプログラムと内容:
●フィリピン大学バギオ校フアン・ルナ・ホール(Juan Luna Hall)会場
おもに研究者、NCCA、メディア関係者によるプレゼンテーション 海外ゲストのスピーチ、合間に伝統文化継承者の芸能披露が行われた。
●VOCAS(キドラット・タヒミック主催のアートスペース)会場
―各地のSLTの指導者、若者たちの芸能披露と交流
―SLTの若者たちを対象としたワークショップ
―環境をテーマとした北ルソン・コーディリエラ地方の先住民族による演劇公演(在バギオの日本人・反町が代表を務める環境NGO「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク」がワークショップで制作した作品)
●バギオ市内のギャラリーなどでの関連展覧会開催
詳細は以下のHP(英語)で。
http://kapwahan.wix.com/kapwahan#!page4/cfvg

主催団体H.A.P.I.を率いるキドラット・タヒミック氏の紹介:
1942年生まれ。映像作家/インスタレーション/パフォーマンス・アーティスト
 私的ドキュメンタリーの映像作家として山形国際ドキュメンタリー映画祭に開始時から招待され、日本でも名を知られるようになった。作品上映の際に自らパフォーマンスで登場するなど、映画監督という枠には収まらない多彩な表現を取り入れている。ルソン島北部コーディリエラ山岳地方の先住民の伝統文化に大きく影響を受けた作品制作を行っている。近年は今回の会議の会場になったVOCASや自宅、現在建設中のバギオ市中心部のアートスペースなど、インスタレーション・アートか建築物か判断の付きかねる創作活動も多い。2012年7月末に開始される現代美術のフェスティバル、妻有アート・トリエンナーレにも招待作家として参加。コーディリエラ山岳地方の先住民のひとつイフガオ族の木彫り職人とともに参加して作品制作を行う。最近のキドラット・タヒミック氏は映像にとどまらず、マルチメディアな現代美術家としての側面が強いと言えるかもしれない。本年度のアジア文化賞を受賞。

 キドラット・タヒミック氏は、萱野志朗氏と過去に様々な先住民族関係の催しで同席し交流を持ったことがあり、今回の会議開催に当たり、萱野氏の参加を熱望し実現した。


(反町眞理子)

by cordillera-green | 2012-07-05 13:49 | 国際交流


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