映画「クロスロード」撮影コーディネイト日記①―マヨヤオ編

b0128901_22120893.jpg
 2015年、コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)はJICA青年海外協力隊50周年記念映画「クロスロード」の撮影コーディネイトのお手伝いをした。

 50年の間に青年海外協力隊のOB/OGはなんと40,976名にもなるそうで、青年海外協力協会(JOCA)という団体を結成し、情報交換などを行っている。JOCAが協力隊の隊員たちの海外の様々な活動現場でのリアルな日常とその後の人生にその経験がどんな影響を及ぼしたかをテーマに劇映画することになり、50年間で1583人の隊員を受け入れてきたフィリピン(マラウィに次いで2番目に派遣隊員数が多いそう)が撮影ロケ地として選ばれた。

 映画のストーリーではフィリピンに派遣された3人の隊員が主人公。一人は農村開発隊員として世界遺産の棚田の村に派遣、もう一人の女性は助産婦を指導するために病院に赴任、そして主人公のカメラマンは写真の技術を教えるために町の観光省に派遣されたという設定だ。物語は3人がそれぞれの赴任地での出会い、挫折、ジレンマ、ほのかな恋などを通して、人間として成長していく姿と帰国後の人生を描いている。隊員を演じる俳優陣はEXILEの黒木啓司、渡辺大(あの渡辺謙の息子さん、杏ちゃんの兄貴)、ファッション・モデルや女優として世界を舞台に活躍するTAO


b0128901_22134706.jpg

 渡辺大が演ずる農村開発隊員の赴任地がルソン島北部の棚田であるという設定から現地コーディネイトをやってほしいという話が舞い込んだ。農村開発隊員は棚田でドジョウ養殖を指導するという役柄で、バギオ近辺の棚田でロケに敵した地を探したが、やはりお話のモデルとなった現役のドジョウ養殖隊員の赴任地である世界遺産の棚田にはかなわない。



b0128901_22104723.jpg


 マヨヤオは一般によく知られている世界遺産の町・バナウェから断崖絶壁の悪路を3―4時間のところに広がる棚田の村。マニラからバナウェ経由かふもとのイサベラ州経由で陸路15時間はかかる遠隔地だ。山肌に広々と広がる棚田の中には古い伝統的な高床式の家屋がぽつんぽつんと建ち、人々は古来あまり変わらないと思われる素朴な暮らしを営んでいる。マヨヤオの棚田も、もちろんユネスコによって世界遺産に指定されているのだが、なぜか「世界遺産の棚田=(イコール)バナウェ」という先入観がフィリピン人にはもちろん世界からの観光客にも広がっていてとんと観光客が訪れない。


b0128901_22112897.jpg


 ホテルもレストランもないこのマヨヤオでの撮影を、制作班は「やはりこの景色しかない!」と何回かのロケハンのあとで決定した。日本からは25名ほどの撮影隊が来るという。観光客が少ないためほとんど使われていない丘の上に建てられたユースホステルを貸し切り、食材を持ち込んで、日本食を作り、棚田の中でのハードワークに従事する撮影スタッフに供しようということになった。

 バギオに住んでいる料理上手の日本人女性にシェフを依頼し、ロケハンで撮影場所からもっとも近い(といっても車で3時間!!)町の市場とスーパーマーケットで手に入る素材を調べ、足りない食材や調味料をバギオ、そして、制作スタッフに日本から運んでくるように依頼した。ユースホステルのキッチンは、早朝出発の多い撮影班の朝食、棚田周辺でのお弁当仕出し、疲れきって戻ってくるスタッフたちのペコペコの胃袋を満たし、憩いのひと時を与えようという夕食の準備で、撮影現場に勝るとも劣らない忙しさだった。


b0128901_22131052.jpg

 マヨヤオでの撮影は、ボンガン、ポブラシオン、バランバンなどの村人たち、町長、副町長、観光課、開発課、農政課をはじめとする自治体各部署、スタッフの警護を受け持ってくれた地元警察、そしてなによりも青年海外協力隊でこの村に2年間滞在して地道に根気強くドジョウの養殖指導を行ってきた渡辺樹里さんと事業の受益者たちの献身的な協力なしには成り立たなかった。素晴らしい映像を収めたいとの思いからのさまざまな撮影チームからのリクエストにも村人たちは笑顔で応え、協力を惜しまなかった。


b0128901_22144283.jpg

 大型台風の進路がマヨヤオ直撃ときいて青ざめたチームだったが、伝統のシャーマンでもあり村人たちの辛抱の厚い副町長が8羽の地鶏をつぶし、棚田でとれた米から作ったタポイと呼ばれる瓶のどぶろくで撮影の無事と成功を地域の神に祈ってくれたせいか、フィリピン上陸直前で跡形もなく姿を消すという奇跡も起きた。

b0128901_22141527.jpg


 ドジョウ養殖を教える隊員役を演じた渡辺大さんは、草の根で住民の立場に立って指導してきた渡辺樹里さんそのままに、快適とは決して言えないロケ地の環境に愚痴一つこぼさず、地元自治体のカウンターパートである農業省の役人との心通う重要な場面を感動的に演じてくれた。

b0128901_22224030.jpg

 結婚式や歓迎会のシーンでマヨヤオに伝わる歌と踊りを披露するため、イフガオ州国立大学(IFSU)の伝統芸能グループの学生たちが駆けつけてくれ、夜遅くまで練習を重ねてくれた。


b0128901_22124294.jpg
b0128901_22155933.jpg


 撮影監督の長田勇市氏は、ロケハン時からマヨヤオの棚田の美しさに魅了され、一人早朝起きだして朝日の映る棚田の清澄な空気を映像に収めた。また、月夜の幻想的な棚田を捉えるために闇の中を展望のいい丘に向かい撮影を行った。

(長田氏のマヨヤオでの撮影中の写真がこのサイトにあります。http://www.pronews.jp/column/20150804110039.html

b0128901_22370015.jpg

 マヨヤオの撮影だけでお願いしたエキストラは総勢200人近い。地元高校の元校長先生が、大戦で腕を失った長老という難しい役で出演してくれた。まさに、村人たちの力によってなしえたマヨヤオでの撮影だった。

b0128901_22152149.jpg


 映画「クロスロード」では、一流の映像カメラマンによるマヨヤオの棚田のさまざまな表情がみられるはずだ。その美しい景色と、あたたかな人々のこころが、いつまでも続いていくことを願ってやまない。


b0128901_22363149.jpg



[PR]

by cordillera-green | 2015-11-23 09:25 | 映画「クロスロード」

<< 映画「クロスロード」撮影コーデ... 吉田智久さんの演劇を活用した環... >>