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2008年 09月 19日

マヨヤオ村の子供たちの未来予想図

 サバガンの小学校の子供たちに「未来予想図」を描いてもらったときに、「自分たちの住んでいるコミュニティ(村)がどうなっていたらいいと思う?絵に描いてみてくれる?」と言ったら、みんな、さっさとクレヨンを走らせ始めましたが、出来上がった絵のほとんどはきれいな村の風景画で、人が登場していませんでした。自分も家族も友達も絵の中には現れてこなくて、なんだか、他人事の絵のような気もして、ファシリテーターを務める松野下さんと相談。マヨヤオでは「君たちは将来どうなっていたいと思う?」という感じに聞いてみることにしました。
マヨヤオ村の子供たちの未来予想図_b0128901_11541033.jpg
 そうしたら、みな、考え込んじゃってぜんぜん絵を描きだせません。その理由をその夜、スタッフたちと話し合ったのですが、
1.自分を含める「人」の絵を今まで描いたことがない。
2.自分の将来像を思い描いたことがない。
3.思い描こうにも村からほとんど出たことがない子供がほとんどで、将来の自分の見本となるような、「こうなりたい」と思うような大人がいない。
4.町の情報を与えてくれるテレビをもっている家庭もほとんどなく、本や雑誌も読んだことがない(学校の図書館に本はまったくありませんでした)。
という意見が出ました。

 マヨヤオ村の子供たちの未来予想図_b0128901_11445847.jpg
 日本では、たいていの大人は職業をもっていて、せっせと忙しく働いているのが当たり前ですが、山の村でお給料をもらえる仕事を持っているのは「学校の先生」「役場の職員」「警察官や軍人」(ほかの地域出身の人が赴任していることが多いです)「郡会議員などの政治家」(でも次回の選挙で落選したら職がありません)「教会の神父や司祭、牧師」くらいのものです。あとは自営業で、村の中心で小さな商店をやっている人とか、集落の一角で「サリサリストア」と呼ばれる小さなよろず屋をやっている人、「トライシクル」というモーターバイクの三輪タクシーを持っている人くらいでしょうか。
 マヨヤオ村の子供たちの未来予想図_b0128901_11482748.jpg
 あとは農業に従事しているわけですが、農業というのは「仕事」ではなくて、自分たちの食べ物を作る日常の作業。私たち日本人が家庭でご飯を作ったり、洗濯したり、掃除したりするのと同じような「家事」みたいなものです。いわば、日本人が「お買い物」に行く代わりに「畑」や「田んぼ」に行くわけですね。だから「農業」が、お金を稼ぐための「仕事」という観念は、町との人的・物質的交流が盛んでないマヨヤオのような村にはありません。(もちろん家族が食べる以上の量が取れたら近所のサリサリストアなどで売ってもいますが、あくまでも余った場合です)。
 で、子供たちに「自分が将来どうなっていたいか」と聞いたら、困っちゃったんですよね。たくさんの子供が大きな家を描き、「何とかお金持ちになって家を建てることを望んでいるのだなあ」と思いました。でも、その家にいる自分や家族は誰一人きちんと描けません。家を建てるためにお金を稼がねばならないという現実があるのですが、そのための手段を想像できず、何かになっている(何か仕事を持っている)「自分」というのを思い描くことができないのだと思います。
 マヨヤオ村の子供たちの未来予想図_b0128901_11524110.jpg
 きっと学校の成績もいいような子は、今自分が学んでいる小学校と、学校の先生になっている自分を描いていました。男の子の何人かは、警察官になって銃を持った自分を描いていてちょっとびっくりしました。(右の絵もその1枚)
 画用紙やクレヨンの寄付をいただいている柏崎の「みんなの未来予想図」プロジェクトのSSさんから今朝届いたメールにはこんなアドバイスがありました。
「絵の方は、第一に沢山の子どもに「夢を持つ」ということをしてほしいと思っています。それも大切な事だと思っています。」
 子供たちに、夢を思い描く「力」を育てていくことをしなくてはいけないと思いました。
 
マヨヤオ村の子供たちの未来予想図_b0128901_11423458.jpg
 

 

by cordillera-green | 2008-09-19 12:05 | みんなの未来予想図


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