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「 北ルソン地方における台風被災者のための農業支援実施計画 」 引渡式

昨年12月のブログでご紹介しました、10月に北ルソンを襲った台風JUANの被災者のための農業支援事業。クリスマスと年末年始で、準備がたいへんでしたが、在フィリピン日本大使館の草の根・人間の安全保障無償資金協力で供与された農業資材、種、堆肥などの、引渡し式がベンゲット州トゥブライの町役場のジムにて行われました。メディアの方々もたくさん取材に来てくださり、ローカルベースで活動するNGOだからこそできる草の根の農業支援に大きな注目が集まりました。
コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)は、すでに引き渡し式の翌日より受益者のコミュニティにて配布を開始しています。

以下、日本大使館発行ののニュースレターの転載です。

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1月26日、清水信介在フィリピン大使館公使は、ベンゲット州トゥブライ町において、平成22年度草の根・人間の安全保障無償資金協力で供与された「北ルソン地方における台風被災者のための農業支援実施計画」の引渡式に出席しました。式典には、ベンゲット州のフォンワン州知事、トゥブライ町のパオアド町長、及び被供与団体である コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN: Cordillera Green Network, Inc. ) の 反町眞理子事務局長 らも出席しました。

本件事業の供与額は、105 , 270米ドル(約989万円)です。

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(案件概要)

2010年10月18日にフィリピンを襲った大型で強い台風13号(比国名フアン)は、北ルソン地方を直撃し、大雨と強風による家屋の倒壊や農作物への壊滅的な被害を与えました。北ルソン地方は、2009年10月にも台風17号(比国名ペペン)の襲来を受けており、道路や橋といったインフラの復旧や農業の復興支援が継続している中での新たな被災は、現地住民の生活状況を一層困難なものとしました。国連人道問題調整事務所によると、台風第13号による農業の被害総額は82億ペソに上りました。

本件事業では、台風第13号によって被害を受けた、ベンゲット州、カリンガ州、イサベラ州、カガヤン州の農家を対象に、野菜やコメ、トウモロコシの種子のほか、堆肥やビニールハウス・ネット等農業用資材を配布します。本件実施により、小規模農家1,574世帯の所得向上が期待され、農家の生活基盤の復興につながることが期待されます。  

(了)

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昨日発行の地元紙「Baguio Midland Courier」をはじめ、たくさんの新聞にも記事が掲載されました。

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   ↑バギオの超人気紙「Midland」の1面に写真入りで
    CGNの事業が登場するのは初めてです!
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by cordillera-green | 2011-01-31 09:30 | 緊急支援

幸せの白い鳥プロジェクト in イフガオ 「原始の森にホワイト・バードが戻ってきた日」

2010年12月の世界遺産の棚田でのコミュニティ・アート・プロジェクトでの予期せぬうれしい出来事は、飛び入り同然のスタジオKURIによる「幸せの白い鳥プロジェクト」の大成功!でした。
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      ↑Photo by 直井保彦

11月に帰国した際に、KURIの山梨・須玉の家を訪ね、KURIのMIHOちゃんのおとうさん、通称イギオヤジ(先日88歳になられたそう。おめでとうございます!)が、欲もなく淡々と廃品から作り続けている小さな白い鳥を手にした人から、「幸福をもたらした」と、お礼の手紙やお礼の品が次々と届いているという話を聞きました。
イギオヤジ自身は、MIHOちゃんによれば、「たぶんアーティストという言葉さえ知らないと思う」というわけで「ヒマほどつらいものはないのだよ。MIHO」と説明しながら、ただただ「時間つぶし」のために、廃品からさまざまなもの(チリトリ、ヤカン、ナイフなどなど)を作り続けていて、ほしいという人がいたら「どうぞ、どうぞ」と言って持っていってもらっているというのです。
「大昔には、JUNK ART作家なんて肩書きもあったんだよねえ」と照れながら話すKURIのKATSUさんは、イギオヤジの超天然アートの深~~い理解者。イギオヤジのこの無欲の才能と、そこから生まれる幸せウェーブをぜひぜひ皆さんに感じてもらいたい」と、今までにもキャンピカ明野ふれあいの里での山梨エコアート展、などで、イギオヤジの作品(っていうのかな)のインスタレーションを発表してきました。

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    ↑2009年山梨・キャンピカ明野でのイギオヤジ展(写真提供:KURI)

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     ↑白い鳥を作るイギオヤジ。「あたたかいから」ここで作っているのだそうです。
     (写真提供:KURI)
 
最近のイギオヤジは、この白い鳥作りにコリまくっていて、「かなりいろいろな人に配ったけど、多分、もう1000個は超えていると思う」と話すKURIの二人。「そんなにあるなら棚田の村でも展示して、イフガオの人にも白い鳥の幸せをわかちあおう!」と勢いで話は発展し、KURI宅を私たちが去ったあと、MIHOとKATSUの二人はせっせと白い鳥の数を数え、1008個の白い鳥をバカでかい袋に入れて、フィリピン入りしてくれました。「どこに飾る」「誰が飾る」「いつ飾る」「どうやって人々に説明する」などなど、な~~~んも決めずにすべては現場で!という行き当たりばったり覚悟の参加です。

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      ↑いつの間にか子供たちが集まってきてみんなで飾りつけ(写真提供:KURI)

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      ↑ボランティアの山下彩香ちゃんも楽しそうに飾りつけ。(Photo by 直井保彦)

なのに、素敵な展示場所がパフォーマンスの舞台のお隣の棚田に見つかり、でっかい袋を開けたとたんに「なんだなんだ」と子供たちが集まって頼みもしないのに、飾り付けをしてくれ、子供が大好きな尺八奏者の福本卓道さんが「ポッポッポーはとポッポー」と棚田に響く大きな声で歌を歌い出して子供たちがそれに習い、解説は「これに書いたら?」と、たった1枚残っていた稲わら手漉き紙を志村朝夫さんが提供してくださり、最後は参加したアーティストの人たちも平和への想いを込めて白い鳥を下げてくれ、みんなが参加した素敵なコミュニティ・アートとなりました。

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      ↑KATSUが薪のための木片でフレームを作りました(Photo by 直井保彦)

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     ↑バギオのリサイクル・アーティスト、ロメル君も参加(Photo by 直井保彦)

参加してくれた写真家の直井保彦君をはじめ、いろいろな人がこの白い鳥の写真をとってくれましたが、いや、1000羽そろうとすごい迫力で、プロ、アマチュアを問わず、驚くばかりの傑作写真の数々。下に直井さんの写真と、そのほか皆さんのブログから拝借してきた写真を紹介するので驚いてください!

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    (以上3点は直井保彦さんの写真です)

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        ↑以上2点KURIの写真。なんかすごい。。。

本当に、イフガオの棚田の空を1000羽の白い鳥が埋め尽くしたみたいで、まさにイベントのテーマ「原始の森にイーグルが戻ってくる日」が瞬時に実現したかのよう。偶然の生み出す力に恐れ入りました。
KURIは会場を提供してくれたバアアン村の小学校の生徒&先生と少し余分の数の白い鳥を寄付してくれました。きっと子供たちの家の軒先で、今日も白い鳥は平和への想いを込めて、小さな羽で羽ばたいていてくれると思います。

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        ↑これもすごい。Fara Manuelさんの写真です。

KURIとイギオヤジ情報は、KURIのブログでチェック!


また、KURIの二人が、地元・山梨でフィリピンでの体験と韓国のたびについての報告会を開催します。パヤタスのゴミの山に暮らす人々とのためのクリスマスパーティでのコンサートから、世界遺産の棚田での慰霊パフォーマンスでの即興演奏まで、多彩な体験をアーティストならではの感性で語ってくれます。直前に訪問した韓国での旅も含め、型破りのアジアとのアートを通した交流体験。お聞き逃しのないように!

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「KURI アジアの兄弟を訪ねて」~韓国、フィリピン編~スライドショー
日時:2011年3月3日(木)夜7時半~
場所:山梨県北杜市明野 カフェくじらぐも
    0551-25-4063
    http://ameblo.jp/yasurinpime/企画:オトタネプロジェクト


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今回のイベントでコーディネイターとしても手伝ってくれたRuel Binuyag君のイベント裏方たちを取った写真をPICASAアルバムにアップしています。
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by cordillera-green | 2011-01-30 13:32 | 環境イベント

アート・インスタレーション&パフォーマンス     「森のささやき・精霊の舞」

2010年12月のイフガオ州フンドアンでのイベントでは、前の2回ののブログでご報告した環境演劇の上演と環境教育アートワークショップと抱き合わせで、第二次大戦で犠牲となった日比両方の人々に対する慰霊と鎮魂、そして平和へ祈りをテーマとしたアート・インスタレーション&パフォーマンスを行いました(スンダランド・アートネット主催/国際交流基金/あいちモリコロ基金助成)。

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イフガオ州は、第二次世界大戦で日本軍が撤退し、最後、山下奉文(ともゆき)大将が捕らえられた地。大戦末期でが飢餓状態にあり、武器も弾薬もなかった日本軍兵士の多くが命を落とした地であるとともに、極限状態の中でイフガオ族のコミュニティでの略奪・殺戮などの残虐な行為もあったと記録されています。
戦後も日本から遺族の方々が慰霊に頻繁に訪れ、遺骨収集は現在も行われています。ご存知の方もいるかと思いますが、その遺骨収集の仕方をめぐって、昨年大きな問題が明らかになり、フィリピン国内や日本でも報道されています。
私も、在比年数の長い日本人として、日比両国の第二次大戦の傷跡を癒すためのお手伝いになるのならと、ご縁があれば、在比ならではの知識や人脈を利用して、遺族や元兵士の方の慰霊の旅のお手伝いなどもさせていただいてきました。今回の遺骨収集をめぐる問題は、戦後65年たって風化してしまったのか、本来なら遺骨収集作業の基本にあるべき亡くなった方たちに対する慰霊の気持ちがないがしろにされた悲しい出来事だと思っています。遺族の方や元兵士の方の中にも、抑えきれない怒りを表している方がいらっしゃいますが、何より、迷惑なのは、意図せずして暮らしの場を戦場とされ、今また勝手な日本人の遺骨収集問題に巻き添えになっているイフガオの人々、そして、この地で無念の中でお亡くなった日本兵の精霊たちなのではないでしょうか? 
65年たって、ようやく少しずつ癒えてきた傷を再びえぐられるようなこの出来事。日本と違って戦争の記憶がいまだ生々しいこの地で暮らしながら、何か日比の新しい関係のために出来ることはないかと、環境や平和のためにさまざまな活動をしてきた私には、残念でありませんでした。
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今回のイフガオ州におけるアート・インスタレーションとパフォーマンスにプロジェクトは、日本人、フィリピン人を問わず、戦争の犠牲となったすべての人のための鎮魂と慰霊、そして日比間、さらに世界の平和のための思いを、言葉ではなく、国境を越えて共有できるアートを通して表現したいという気持ちからでした。

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    ↑廣田緑さんと。バナウエの棚田で。

2007年のバギオ市とベンゲット州キブガンで行った「Where have all the monkeys gone?」という環境アート・プロジェクトを一緒にやった友人の造形美術家・廣田緑さんがまず参加を表明してくれました。廣田さんは、太平洋戦争の記憶をテーマとしたアート・プロジェクトを長年滞在していたインドネシア、フィリピン、日本で行ってきています。昨年の8月末から10月中旬にも徳島県の神山のアーティスト・イン・レジデンスプログラムで滞在し、88人のおじいちゃん、おばあちゃんと、廣田さんが制作のヒトをかたどった人形を交換し、記憶を収集し、「交換プロジェクトー神山八十八人巡り~」という展覧会を開催しています。アジアと日本で、たくさんの大戦の記憶と出会い、アート作品としてきた廣田さんは、多くを語らなくても今回の企画の意味と意図を深く理解し、作品に表してくれる最高のアーティストでした。また、このアートプロジェクトは廣田さんが代表を務める「スンダランド・アートネット」として主催することになりました。

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     ↑緑さんの制作風景。CGNフォレスターのレナートがアシストしてくれました。

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      ↑映像作家・キドラット・タヒミック氏も参加。
       緑さんには作品のビデオ撮影の方法についてのアドバイスも。

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     ↑JUNさんの衣装の絵も緑さん制作です

そして、大阪のAmanTO天然芸術研究所のJun Amanto氏。2009年1月のコーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)主催のエコサミットへのゲスト参加と9月のバギオ市制100周年にバギオで催された「日比平和演劇祭」の「亡霊の彷徨う町」で日本兵の亡霊役を演じて以来、たびたびコーディリエラ地方を訪れてワークショップや公演を行って下さり、大戦がこの地域ではいまだ過去となっていないことを実感していて、悲惨な大戦記憶が残る棚田の中での慰霊パフォーマンスを快諾してくださりました。
そして、Junさんの呼びかけで参加を表明してくれた素晴らしいミュージシャンの方たち。シタール奏者の南沢靖浩さん、尺八の福本卓道さん、サックスと笛の山本公成さん。
そして、CGNともっとも長くふか~~いお付き合いの音楽ユニット「KURI」のKatsuさんとMihoちゃんのお二人。
「心身ともにハードな場所なので覚悟してきてくださいねえ!」
と事前にお伝えしてはいましたが、たぶん、想像してくださった以上の厳しい環境で、参加してくださった方たちにとっても、いろいろな意味で印象に残る旅とパフォーマンスだったと思います。(参加者の皆さんがそれぞれ旅日記をブログで公開してくれています。それぞれの見方、関心が面白い!ぜひ、読んでみてください)。


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    ↑尺八の福本卓道さん。卓道さんのブログはこちら

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    ↑シタールの南澤靖浩さん。南澤さんのブログはこちら

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    ↑サックスやいろいろな笛奏者の山本公成さん。公成さんのHPとブログはこちら

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    ↑おじさんミュージシャンに囲まれ、紅一点で輝いていたKURIのMihoちゃん
     KURIのブログはこちら

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    ↑「幸せの白い鳥プロジェクト」でも参加してくれたKURIのKatsuさん

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    ↑コーディリエラ民族音楽ミュージシャン・ケント

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  ↑もう一人の民族音楽家・エドガー。

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  ↑ステージはこんな感じです

廣田緑さんは、ほかの皆様より一足先にマニラ到着後、舞台となるイフガオに直行して作品に対するイメージを膨らませ、いったんバギオに帰って材料などの下準備をして、再びイフガオ入り。手漉き紙作家・志村朝夫氏が棚田でとれた稲わらを使って漉いた紙と「ロノ」とこちらで呼ばれている細い竹のような植物を素材に慰霊のランタンを制作してくれました。3日間という限られた時間の中で、すごい集中力で、ご飯を食べる時間も惜しみながら丁寧に想いを込めて制作を行い、
「最後はパーーーッと焼いちゃって、土に返しちゃってくださいね」
と、パフォーマーのJunさんにいさぎのよいリクエストをしてくれました。

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     ↑パフォーマンスの最後にたいまつの火で、インスタレーションは燃え尽きました。

パフォーマーのJunさんとの3人のミュージシャンの方々は、コーディリエラ地方の主要河川の水源をいくつも擁するマウンテン州カダクランに植林と演奏ツアーに行ってから現地に到着。KURIはバギオのフィリピン大学バギオ校でのコンサートを終えてから現地入り。舞台となる棚田をチェックし、ミュージシャンの演奏ステージの位置を指定し、CGNスタッフは、大急ぎでセットアップに取り掛かりました。
ボランティア参加の東大大学院生・山下彩香も、いきなりJUNさんの衣装担当をおおせつかり、稲わらの手漉き紙10枚で夜を徹して衣装作りをしてくれました。
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     ↑イベントの最後にはすべてを土に戻そうといういうことから、
      衣装も志村さん作の棚田の米の稲わらから漉いた紙を使いました。
      コンニャクでコーティングしているので、丈夫で防水性もあります。

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     ↑ステージは棚田です。ハパオ出身のCGNボランティア、ルエル・ビムヤッグ君が
      棚田の持ち主との交渉など、
      コミュニティとの方々との橋渡し役で大活躍してくれました。

棚田を縁取る1000個の稲わら手漉き紙のランタンは、ワークショップで子供たちと作るはずが、子供たちが飽きてしまって1000個には遠く及ばず、ミュージシャンの皆さんが夜を徹して、なつかしのフォークソングなどなどを歌いながら、500個以上を作っていただきました。

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     ↑Photo by KURI

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     ↑棚田には100個の舟形のランタンを浮かべました。

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     ↑Anak di Kabilingan(山の子供たち)劇団のメンバーも
      セットアップに協力してくれました。

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棚田のど真ん中にある、宿泊先となったイフガオ族の伝統家屋のあるロッジでの、缶詰合宿のような(棚田のあぜ道を歩くのがたいへんで、お出かけできないだけ)2日間。初めて顔を合わせた人も多かった超個性的な日本からの参加者の方たちですが、いつの間にやら、心はひとつ。本番の棚田でのステージでは、息のあった素晴らしい演奏とパフォーマンスを披露していただきました。

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感性のするどい参加アーティストの方たちは、たった3日間の滞在でしたが、この地では戦争がまだ終わっていないということを、実感して下さったのではないでしょうか。KURIがブログの中で「演奏している間、とても混沌とした気持ちになった」と書いていましたが、大戦によって汚されてしまった大地の記憶は、65年たったいまも、まだ癒されて切っていないのでしょう。戦争というものが、人の心や自然や大地に遺す傷は、とてつもなく深いもので、どんな長い年月がたっても癒されることはないのかもしれません。
イフガオの人々にとって、あの戦争は日本とアメリカの戦争であり、ただただ、先住民族が深く愛してきた土地を戦場として使われてしまっただけであり、その恨みは、無意識のうちに引き継がれ、世代を超えても消えはしないものなのだと思います。今回も毎度のごとく私たちは(特に日本人の年配の参加者は)、「山下財宝探し」の御一行様と疑われ、酔っ払った地元の人に絡まれたりすることもありましたが、それも65年前の恨みのひとつの現れ方なのかもしれません。

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私たちがおこなった慰霊と平和のためのアート・プロジェクトは、ほんのほんの小さな償いの行いで、コミュニティにイフガオの人々の心や土地に大きな変化が起こるなんてことはまったく思い描いていません。アート・インスタレーションとパフォーマンスを見にくれた多くのイフガオの方たちは、北ルソン日本人会の小国さんがブログで書いてくれていたように「いったいなんだべ?」という驚きの反応がほとんどだったとのこと。
でも、あえて、私は言葉によって今回のプロジェクトの意図を説明したり、パフォーマンスの意味を解説したりしようととは思いませんでした。美しい棚田と自然の中で暮らしてきた素晴らしい感覚の持ち主であるコミュニティの人々には、あの灯されたキャンドルの静かな美しさと、そのほのかな灯りで照らされた廣田さんの作品に込められた祈り、素晴らしいミュージシャンの方々の即興演奏に伴われ、JUNさんが9日間の断食のあとに全身全霊を込めて、棚田の泥にまみれながら表現してくれたあの地と人々が感じてきた怒りと悲しみと絶望、そして平和の願いが、きっと心の深いところに届いたものと信じています。
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なによりも、雨続きだったのが、あの12月18日はパラリの雨も降らず、パフォーマンスの間、雲の中からまあるい月がそっとのぞいてくれたこと、突然の停電によって素晴らしいミュージシャンの方たちの音楽がマイクを通さずに、静かに深く大地にしみこんでいく時間をいただいたことで、神様には歓迎されたイベントだったのではないかとひそかに思っています。

今、昨年のイベントを振り返り、参加の方たちに対する深い感謝とともに
癒されきれない大地のために、
「だから、二度と戦争をしてはいけない。二度と過ちを繰り返してはいけない」
という想いを新たにしています。 

  
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        ↑参加アーティストとスタッフ。すべてを終えて晴れ晴れした笑顔です。


※写真は、日本から参加してくれた写真家の直井保彦さんの撮影です。
 素敵な写真をどうもありがとう。

CGNスタッフ・ブログでも、参加の松野下琴美が体験記をアップしています。そちらもぜひ。
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by cordillera-green | 2011-01-11 09:37 | 環境イベント

Anak di Kabilingan(山の子供たち)の再会と環境演劇上演

 2010年5月にベンゲット州レパントで行った環境教育ワークショップのアウトプットとして制作された環境演劇の上演(キープ協会主催/地球環境基金助成)を、イフガオ州フンドアンでの「環境と平和のためのコミュニティ・アート・プロジェクト」のトリとして行いました。
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5月のワークショップに参加した6州からの若者たち40人のうち35名が参加(参加者グループは、いつも間にやら、過去3回行ったコーディリエラ・ユース・エコサミットのテーマだった「Anak di Kabilingan-山の子供たち」劇団とよばれるようになっています)。半年振りの再会を喜び、忘れかけていたお芝居の練習を急ピッチで行い、会場となるハパオ小学校校庭のくさーーーいステージを徹底的にお掃除し、手漉きの紙や現地調達の枝やら葉っぱやらで飾りつけ、とても久しぶりの公演とは思えない堂々としたステージを見せてくれました。(たった3泊4日のうちにです!)
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5月のワークショップでファシリテイター務めてくれた吉田智久さんが参加できなかった分、もう一人の演劇ファシリテイター・ジェロ君が大活躍。5月に制作した「Golden Arrow」の主役の二人が参加できなかったために、急遽、新しい作品を作って上演してくれました。

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それにしてもさすがに若い! 参加した子供たちの集中力は素晴らしいものがありました。
半年振りに再会し、
「この時間が今しかない」「限られた機会だ!」
ということを、前回以上に実感しているのだと思います。一瞬一瞬を大切にしたいという、まっすぐなまなざしにこちらも心がピンとしました。
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 ゲストとしてパフォーマンスを披露してくれた日本のアーティストの方たちからも、言葉はわからなかったが素晴らしいステージだったとお褒めの言葉をいただきました。
ハパオ小学校に集ってくれたコミュニティの方たちにも、「コーディリエラ先住民族の伝統を見直し、環境保全につとめていこう!」という、出演者からのメッセージが届いてくれたものと確信しています。
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     ↑KURIはコーディリエラ山岳民族のミュージシャン・エドガーとケントと共演しました。

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      ↑Kabuku Mai ダンサーのJUNさんは、シタールの南澤さん、
       サックスと笛の山本公成さん、KURIの即興演奏とともに、
       素晴らしいゲストパフォーマンスを披露してくれました。

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       ↑今回もステージセットアップから演奏までまで大活躍のエドガーさん。
        ありがとう!

Anak di Kabilingan Thetar Group「山の子供たち劇団」、今年4月に国際交流プログラム参加のため、15人が日本を訪問することが決まりました。
彼らの目に日本はどんな風に映るでしょうか??
日本ではどんな笑顔を見せてくれるでしょうか?
何でも吸収できる若さいっぱいで、野性味十分、感じる力も全開の若者たちの、ジャパン・ツアーとっても楽しみです!
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        ↑4月!日本で会いましょう!!

※写真は日本から参加してくれた写真家・直井保彦さんの撮影です。
 素敵な写真をどうもありがとう!
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by cordillera-green | 2011-01-10 17:39 | 環境教育

イフガオ州フンドアンでの環境教育プログラム--    まずは環境アートワークショップのご報告!

遅ればせながら、あけましておめでとうございます!
年末年始を日本で過ごし、フィリピンに戻りました。
昨年の出来事は昨年のうちに! と思っておりましたが、予想通りあわただしい日々で、年が明けてからの報告になりました。

2010年12月、キープ協会の「フィリピン北部山岳地域における青少年育成のための環境教育推進事業」(独立行政法人 環境保全機構 地球環境基金助成)の一環として、環境演劇公演と環境教育アートワークショップを、イフガオ州の世界遺産の棚田の村、ハパオ村とバアン村で行いました(協力:スンダランド・アートネット/AmanTO天然芸術研究所)。
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    ↑Photo by Yasuhiko Naoi(直井保彦)

イフガオ州のバナウエ、キアガン、マヨヤオ、フンドアンの4つの郡は、ユネスコにより世界文化遺産に指定されています。しかし、森林破壊や棚田での働き手の不足から、耕作を放棄された棚田が増え、2001年には世界危機遺産に指定されてしまいました。イフガオ州の棚田の保全には、過去、日本からは、ユネスコが棚田と伝統文化保全のための活動をサポートしてきたほか、JICA-NGOの技術協力プロジェクトで森林保全やライブリフッド事業などが行われてきました。コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)も、「東芝150万本の森作り」のサポートを受け、2007-2009年にマヨヤオ郡バランバン村とフンドアン郡ハパオ村で、アグロフォレストリーと植林事業を行いました。

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         ↑Photo by Yasuhiko Naoi(直井保彦)

 さて、世界遺産の貴重な棚田の崩壊の原因のひとつが森林破壊です。イフガオ民族は生まれながら芸術センスを持ち合わせているといわれ、その木彫りの伝統の技は類を見ません。それゆえ、海外からの大型の木彫り像の注文などなどがあとを絶たず、古来の暮らしでは生活用品にのみ使っていた木彫りが、輸出用の置物や家具、棚田観光のお土産品などとして大量に作られることになりました。それに伴って、材料の木材が、イフガオ州の森林から次々と切り出され、森林は見るも無残な状況となっています。
 もともと、イフガオ族は世界8不思議の一つに数えられる、急峻な山肌に作られた膨大な数の棚田に水をいきわたらせるために、棚田の上のほうにある森林には手を入れず、水源地として先祖代々たいせつに守ってきました(そういった森林保全の伝統の方法は「ムヨン」とか「ピヌグ」と呼ばれています)。近年ではその風習さえも失われつつあり、昨年のエル・ニーニョによる水不足では、たくさんの棚田の水が枯れ、稲が育たないというかつてない事態まで発生しました。

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 そういった背景を踏まえ、今回のフンドアン郡ハパオ村での環境教育ワークショップのテーマは「稲わら」としました。世界遺産の棚田で収穫されている米の稲わらを使って紙を漉き、それを使ってランタンやカードなど作る指導をしようというものです。チープなお土産品を作るために何百年もかけて育ってきた木を切るかわりに、今まで不要とされていた自然素材を使っての新しい工芸品作りの可能性を紹介しようというもの。今回のワークショップの参加者は、ハパオ村とお隣のバアン村の小学生たちです。手漉き紙作りの講師は、ベンゲット州のカパンガン郡ポキン村に暮らす日本人の紙漉き職人・志村朝夫氏。「ウドン」と呼ばれる、稲わらの穂に近い部分が手漉き紙の材料としてたいへん優秀とのことで、志村氏は以前から試作を続け、ホワとよばれる潅木の樹皮との混合や、コンニャクによる加工で強度や防水性を増す方法を実験してきています。

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     ↑子供たちに楽しそうに紙漉き指導をしてくださった志村氏。
      こだわりの紙漉きのプロです。

 手漉き紙ワークショップに参加した子供たちは、暮らしの中で見慣れた「ウドン」が、黄色がかった素朴な紙に姿を変えていくのが面白くて仕方がなく、競い合って紙漉きを行いました。
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  ↑子供たちが漉いた紙はこんな風に乾燥させました。

子供たちが漉いた紙は、乾燥し、田んぼに浮かべるランタンとクリスマス・カードの素材に使われました。ランタン作りの指導は、大阪のAmanTo 天然芸術研究所からきてくださった純さん、育ちゃんのお二人。稲わら紙より少し丈夫なパイナップルを素材とした手漉き紙での凧作りの指導もしてくださいました。
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    ↑ワークショップは小学校の校舎で行いました。
     最初は教室の中でまじめにやっているんですが、そのうち先生も生徒もみんな外に。
     棚田の景色が目の前に広がる素晴らしい環境の学校です。
     生徒たちものびのび育っています。

木版画によるクリスマス・カード作りのほうは、フィリピン大学(UP)バギオ校のファラ教授と生徒の皆さんが指導してくれました。
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     ↑指導に来てくれたフィリピン大学バギオ校のみなさん。ありがとうございました!
      Photo by Fara Manuel

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      ↑凧には、棚田の村に森がよみがえり、鳥やワシが戻ってくる日を願って
      UPバギオの先生と生徒の指導でこんなカラフルな鳥の絵が描かれました。

最後には参加の子供たちみんなで、いつか村と森に鳥やワシが戻ってくる日を夢見て凧揚げ。元気に凧を上げて飛び回る子供たちの明るい声が、棚田に響き渡る素晴らしい時間でした。

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     ↑Photo by Yasuhiko Naoi(直井保彦)

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     ↑Photo by Yasuhiko Naoi(直井保彦)
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by cordillera-green | 2011-01-09 20:56 | 環境教育