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鉱山開発からの脱却・コーヒー栽培にかける人々~トゥブライのコーヒー栽培地レポート 


 コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)では、2010年からトゥブライ町アンバサダー村のコロス集落で神奈川県のNPOWE21ジャパン」とともに「コーヒーの森づくり」事業を行ってきました。2014年度にはキープ協会の協力を得てお隣のマムヨッド集落にもコーヒーの苗木9500本を植樹しました。アンバサダー村ではその他の集落でもコーヒー栽培が盛んと聞いて、マムヨッド集落から周辺集落に足を延ばしてみました。

 

 アンバサダー村は大変貧しく、人々は現金収入につながる手段を探しています。標高や気候はコーヒー栽培に適した地域なのですが、栽培技術の指導もいきわたっておらず、また、苗木も足りません。古いコーヒーの木もありまずがほとんどが伸び放題。きちんと手入れをし、収穫量を上げられれば現金収入にもつながります。また、収穫したコーヒーチェリーを生豆にするまでの適切な加工方法の指導がされ、加工に必要な機材の支給がされたら、かなりおいしいコーヒーができると思います。


 住民の方々の中には、「コーヒー栽培がお金儲けにいいらしい」とうわさで聞き、少しずつでも自力で苗木をつくり新たに植え始めている人も見られます。「栽培技術指導」「苗木支給」「加工技術指導」「加工資材支給」そして「マーケットにつながる組合などの設立と運営」など、せっかく自力で植え始めたコーヒーが暮らしの向上に役立たせるためにサポートできることは数限りなくあると感じました。

 

 今回の視察を通してわかったのは、この地域全体が抱えている問題が「水」であるということです。とくにアンバサダー村の中でも標高の高い地域の乾季における水不足は深刻です。料理や水浴び、洗濯にも水が足りないのに、とても苗木にあげる水がないというのが現状です。

 水源枯渇の原因は1970年代に稼働していたアンバサダー村のサント・ニーニョ鉱山にあるといわれています。露天掘りで掘り出した金の精錬のために大量の水がいるため、鉱山会社が2キロに及ぶ大きなトンネルを掘ったのです。それ以降、今までの水源が枯れ、水はすべて下方にあったサント・ニーニョに流れ出ることになったそうです。

 鉱山は1980年代前半に廃坑となりましたが、変わってしまった地下水脈は元には戻りません。今でも精錬所のあとには水があふれ、「もったいないから、スイミングプールにしよう」という話も持ち上がっています。以前は劇薬を使って精錬に使っていた貯水施設に水を貯めようというのです。世界一大きいスイミング―ルになること間違いなしです。なんという皮肉。


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 トゥブライ町役場の環境資源省事務所のアブナーさんははっきり言います。

「この町のもっとも深刻な環境問題は、標高の高い地域の深刻な水不足。そして標高の低い地域の水の薬品汚染」

 廃坑になって30年以上がたち、精錬に使われていた薬品の恐ろしさを忘れたのか、また、お金の必要な暮らしが蔓延してきたせいか、再び、小規模の個人採掘があちこちで見られます。中国系といわれる中規模の鉱山開発も始まり、今も集落内の土砂崩れ・地盤沈下に苦しむマムヨッド集落の人は村人全員の署名を集め「いかなる鉱山開発も認めない」という嘆願書を提出しました。


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 この地域でコーヒー事業を行うことには、「鉱山開発に代わる生計手段を提案する」という意義が大きいのです。近年、先住民の人々の暮らしは変わり、現金なしには生活できなくなっています。鉱山開発によって先祖代々の大地を傷つけ水を汚すという、苦渋の決断を先住民族自身がすることなく、生計を成り立たせていくための「最後の望みがコーヒー栽培なのです」(アブナーさん)。


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以下、今回訪問した集落のコーヒー栽培に関するレポートです。



マムヨッド集落Mamuyodとアンカワイ集落Ancaway

 マムヨッド集落はハルセマ・ハイウエイからコロスに入る道の1本先を右手に入って約30分の集落。78家屋98家族が暮らしています。200910月の台風ぺペンでコロス集落と同じく集落内に大きな土砂崩れが起き、環境資源省(DENR)のMGB事務所により、集落全体が居住には危険との調査結果が出て、コロス集落地近くのタバオ集落に移住を勧められました。政府(DSWD=社会福祉省)のサポートで資材代が各家屋に7万ペソ支給され、全住民が再定住地に家を建設中。しかし、畑がマムヨッド集落にあるため、だれ一人完全に移住はしていま

せん。集落内では地盤沈下があちこちで起きているほか、台風や大雨、長雨の旅に土砂崩れは拡大しているそうです。


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 トリニダードからのジプニーは11便。集落内にカソリックの一団体が14haを所有し、8年くらい前から有機野菜とコーヒー栽培のモデル農場を始めましたが、土壌浸食、土砂崩れが激しく、プロジェクトを中止し今は土地は売りに出ています。カソリックのシスターたちの協力を得て、コーヒーと有機農業で村おこしを!と張り切っていたマムヨッド集落の人にとって、2009年の台風による土砂崩れと土壌浸食・地盤沈下の進行は大きな痛手でした。

 キープ協会とCGNが行った植樹事業の現地パートナーである住民組織のCitio Mamuyod CommunityAssociation(CMCA)のプレジデントのジミーさん

「先祖代々の土地を守るため、できることはなんでもしたい」

「事業で配布された数の苗木では不十分。もっと苗木をサポートしてほしい」

 マムヨッド集落ではこの事業の前から多くの家で家庭用で飲むためのコーヒーの木を家の近くで栽培していました。また、数軒が販売にも回せる本数のコーヒー栽培をしています。もっとも多くのコーヒーの木を育てているのはダンシオさん(97歳)。高齢であるため、精神障害のある二人の息子が収穫や加工を行っているそうです。1962年に植え始めたそうで1000本近いコーヒーの木を育てていると思われますが、手入れはされておらず伸び放題。古い木は若返りなどの手入れが必要と見受けられました。木製の自家製の手動皮むき器(デパルパー)を使って収穫後の加工はしているそうです。


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 集落の問題は乾季の水不足。隣のアンカワイ集落にある水源林24ヘクタールをマニラの実業家が購入し、近年ほか地域からの移住者に貸しはじめ、森を切り開き野菜畑に転換し始めたそう。

CGNで水源の森を買い取って、コーヒーを植えてくれないか? 24ヘクタールが無理なら1ヘクタールでもいい。あの森が野菜畑になってしまったら、マムヨッドの水は完全に枯渇するだろう」

とジミーさん。

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 マムヨッドのお隣りはたった6家屋(11家族)だけの小さなアンカワイ集落。住民たちはサン・ラモン種のコーヒーを栽培しています。フィリピンのコーヒー会社「Figaro」が仲買人を通じて生豆を買付けに来ていたそうですが、最近は来たり来なかったりでマーケットが安定していないとのこと。


●ロソック集落Los-oc

 アンカワイ集落とナルセブ集落をつなぐ未舗装の道路沿いにある7家屋の小さな集落がロソック。集落の多くを松林に覆われていますが、近年、所有者が切り売りをはじめ、移住者(キブンガンやブギアスの野菜農家)によって野菜畑に転換されつつあります。ロソックの森はトゥブライの貴重な水源であるため、トゥブライ町の環境資源省も阻止に必死ですが、もともと先祖代々の土地を所有していた有力者が個人に販売して私有地となっているため、コントロールが難しいそうです。

 集落内の一等地はバギオの実業家が購入し 以前はバギオの財団「Shongtog Foundation」が有機モデル農場がとして使用していたそうです。しかし、今は稼働しておらず広大なサヨテ畑となっています。手入れがされてないせいか、サヨテにも病気が見られて、もったいないばかり。

 集落の住民は以前から家庭用にコーヒーを裏庭栽培していますが、多くが手入れがされておらず伸び放題でした。

 実はこの集落にはCGNスタッフのレナートの実家があり、そこでは約600本が手入れされて生育中です。レナートの父親は1990年からコーヒーの木を植え始め、少しずつ増やしていったそうです。

ここでも集落全体の問題は水不足。雨水をためて生活用水としているとのことでした。


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●サポアン集落Sapoanナルセブ集落Nalseb


 ハルセマ・ハイウエイからマムヨッドに行くのと同じ道を入り、三叉路を右手に入ってからしばらく行くとサポアン。その奥がナルセブです。サポアン、ナルセブとも世帯数は各約80軒。ナルセブは集落内の大きな面積をカトリックの修道院が保有しており、水源として森を保全しています。ナルセブのさらに奥にはラバイLabay集落があり、隣のボコッド町と接しています。

 ここでも多くの住民が裏庭で家庭用のコーヒーを育てているが手入れはされていません。バランガイ役員のモーセスさんの家には新旧約500本のコーヒーの木が栽培されています。昨年は20キロ程生豆を収穫できたそう。ほかにもナルセブ集落では数軒が同じくらいの本数を育てているとのこと。いままで、NGOや政府によるコーヒー関係のプロジェクトが行われたことはなく、住民もコーヒー栽培への関心は余り高くないとのこと。むしろトゥブライではちょっとしたブームになっているレモン栽培に関心を示しているようです。


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 「コーヒーは収穫後、生豆にするまでの作業がとてもたいへん。皮むき機などの機材もないし、あまり本数を増やしても、加工処理ができないかもしれません」とモーセスさん。


●アキキAkikiAquique)集落

 ナルセブへ行く道から支道を下ったところにある15軒ほどの集落です。CGNの元スタッフで現在双子を育てながら州庁舎で働くジョセリンの実家があります。標高が低いため、今回訪問した集落の中で唯一水不足問題がない集落でした。


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アキキ集落ではジョセリンのお母さんともう1軒が家庭用以上の量を収穫できるコーヒーの木を育てているそうです。それぞれ新旧の木を混ぜてそれぞれ500本ほどのコーヒーの木があるとのこと。

「毎年少しずつ苗木を植えているが、収穫後の杵と臼での作業が大変で、実ったチェリーをすべて収穫できないこともあります。皮むき器(デパルパー)がないのでトウモロコシの粉砕機を工夫して使っているが気を付けないと豆がつぶれてしまいます。いい機械がほしい。そうしたらもっとコーヒーの木を植えたいです」


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by cordillera-green | 2015-10-07 15:11 | コーヒー