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2020年 06月 27日

キブンガン郡でのアグロフォレストリーによる植林と生態系調査プロジェクト終了しました!

2019年度「ベンゲット州キブンガン郡における森林農法(アグロフォレストリー)によるコーヒー栽培を通じた野生生物保護事業」(イオン環境財団助成)は、無事終了しました。新型コロナウィルス流行の影響は、遠くこんな山の奥まで及び、事業地のキブンガン郡も3月半ばにロックダウン(封鎖)され、必要な農産物や食料の運搬以外は外部との行き来はできなくなりました。いまだ(2020年6月末)移動制限は継続していますが、村の暮らしはそれほど変わっていないようです。しかし、事業担当の森林専門官(フォレスター)も事業地に行くことが難しいため、昨年の雨季に植樹した苗木の生育状況の調査を、サグパット農業協同組合の人に依頼しました。
以下、この事業についての報告です。
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事業地のキブンガン郡のサグパット村は、CGNが一番最初にアグロフォレストリーによるコーヒー栽培を行った場所です。2005-2007年のCGNとしての初めての植林事業の事業地がキブンガン郡で、その最後のほうで実験的にサグパット村の松林のなかにアラビカコーヒーの苗木を植えました。そのころベンゲット州の州都ラ・トリニダード町にあるベンゲット州国立大学Benguet State University(BSU)の
Institute of Highland Farming Systems and Agroforestry (IHFSA)では、ベンゲット州の山岳地方に多く見られるベンゲット松と一緒に育つ換金作物について調査をしており、アラビカコーヒーが松の木とともに育つということで注目を集め始めたところでした。
実はサグパット村はそのIHFSAのディレクターであるマカネス教授のふるさと。大学のモデル農場でやってきたコーヒー栽培を実際にコミュニティで実践したいということで、CGNはサグパット村の農家の組織(今は改名してサグパット農民組合=Sagpat Agriculture Farmers Cooperative(SFAC))をパートナーとして、アラビカコーヒーのアグロフォレストリーによる栽培を始めたのです。
(マカネス教授は昨年、コーヒー栽培の調査とコミュニティでの指導の功績が認められ、Benguet Achievement Awardees 2019を受賞しました。記事(英語)はこちら➡http://www.bsu.edu.ph/article/macanes-benguet-achievement-awardee 
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あれから15年。CGNは山岳地方のさまざまなコミュニティでコーヒーのアグロフォレストリーによる栽培指導と苗木の配布を行ってきました。そしてコーヒーの収穫が始まったコミュニティでは、ポストハーベストの精製の技術指導や機材の配布、フェアトレードによるマーケティング・サポートを行ってきました。
サグパット村でも収穫が始まるのに合わせて、収穫後のチェリーの精製方法についての講習会、皮むき器の支給、パートナー団体SFACの代表アーノルドさんの東ティモールのコーヒー生産研修参加、フェアトレード認証取得のための組織化講習会などを実施してきました。その一方で、キブンガン郡の農家のおもな生産品であるサヨテ(はやとうり)の栽培はどんどんと拡大し、サヨテによる収益は住民たちの暮らしの基幹としての地位を不動のものにしてきました(「グリーンゴールド」と呼ばれています)。それに伴い、キブンガン郡での森林破壊は拡大し、土砂崩落など台風や大雨時の災害も増えています。近年、利益だけを求めてサヨテ栽培を拡大してきた農家の人たちにも、ちょっとした迷いが出てきたと見受けられました。

この事業はそのサグパット村での15年ぶりの植樹を含んだ事業です。ここ数年のフィリピン国内でのコーヒーブームで、国産コーヒーの値段が上がり、この15年間に地道にコーヒーを育ててきた人たちには、コーヒーは着実に収入に結び付いています。コーヒー栽培に疑心暗鬼だった人たちの中にも、コーヒー栽培に本腰を入れてみようという人も出てきました。

CGNとしては、このプロジェクトの目的は、過去に植えたアグロフォレストリーによるコーヒー栽培地の調査を行い、生態系保全の大切さを改めてコミュニティに伝え、さらにアグロフォレストリーによるアラビカ・コーヒーの栽培地を拡大しようというものでした。

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<活動内容>

事業期間:2019年4月ー2020年3月
イオン環境財団第28回イオン環境活動助成事業

以下の活動を実施しました。

●森林農法によるコーヒー栽培地の植物に関する調査

事業担当の森林官の指導で、ベンゲット州国立大学森林学部の学生とともに調査を実施しました。グループに分かれ、対象の農園で10-20mのエリアを2-3か所選び、そこに生えている植物を記録しました。

実施日時:2019年624-29

実施場所: コーヒーを森林農法によって栽培している12の農園(サグパッド村9、隣接するポブラシオン村3)のうち11の農園

参加者:ベンゲット州国立大学森林学部の大学生15名、当事業専門家の森林官、申請団体スタッフ

※調査結果の詳細はこちら(英語)➡

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●森林農法による植樹活動

SFACメンバー23名に計9465本の苗木が配布され、それぞれの個人の土地に植樹しました。苗木の内訳はアラビカ・コーヒー5,695本、トゥアイ2,370本、アルヌス1,400

実施日時:20196月~9

植樹場所:23名の住民の所有地

参加者:23名の受益者とその家族、当事業専門家の森林官、CGNスタッフ

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●コミュニティ共有林、水源地、2つの小学校敷地、コミュニティの新たな森林農法モデル農園への植樹活動

以下の日程で雨季の間に共有地への植樹を行いました。 植樹した苗木本数は3,295本。内訳はコーヒー1,415本、トゥアイ1,630本、マラ・ティビッグ150本、アルヌスの600。台風の襲来、モンスーンによる長期の雨などで、植樹作業は9月まで継続されました。


実施日程:2019年625日(フィリピンの植林の日) 

植樹場所:サグパット共有林&水源地

参加者:サグパット村役員、サグパッドの村人ち、小学校の生徒たち、ベンゲット国立大学学生ボランティア15名、SFACメンバー、森林官、申請団体スタッフとボランティア

樹種と本数: コーヒー250本、トゥアイ500

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②実施日程:2019年626

実施場所:ボケス小学校敷地内

参加者:ボケス小学校5年生&6年生生徒と教員、森林官、申請団体スタッフとボランティア

樹種と本数:コーヒー15本、トゥアイ350

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③実施日程:2019年727

実施場所:サグパット小学校敷地内

参加者:サグパット小学校5年生&6年生生徒と教員、バギオ市内の英語学校で学ぶ日本人学生ボランティア、森林官、申請団体スタッフとボランティア

樹種と本数:トゥアイ300本、コーヒー200

④実施日程:2019年8-9

実施場所:サグパット共有林&水源地

参加者:SFACメンバーの中で参加可能なもの、森林官、申請団体スタッフと公募によるボランティア(植林ツアー)

樹種と本数:コーヒー250本、トゥアイ480本、マラ・ティビッグ50

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⑤実施日程:8-9月

実施場所:森林農法の新たなモデル農園(ラボヤン農園)

参加者:SFACメンバーの中で参加可能なもの、森林官、申請団体スタッフとボランティア

樹種と本数:コーヒー700本、マラ・ティビッグ100本、アルヌス100

合計植樹本数は13,260本。内訳はコーヒー7,110本、トゥアイ4,000本、ティビッグ150本、アルヌス2,000

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アグロフォレストリー(森林農法)によるコーヒー栽培地における野鳥に関する講習会と調査

講習会:201912月12日 会場:KALAHI Multi-purposeBuilding  

調査:20191211日―14日 調査地:サグパット村の森林農法によるコーヒー栽培地

講習会参加者: SagpatFarmers Agriculture Cooperative(サグパット農家農業組合=SFAC) メンバー 14名 

講師 & リサーチャー:

神山和夫(日本バードリサーチ)、JennicaMasiganCenter for Conservation Innovation Philippines Inc.

講習会内容:二人の講師は以下のテーマについてプレゼンテーションを行いました。

1.自然界と集落における野鳥の役割 

2.フィリピンと日本を行き来する渡り鳥 

3.北ルソンで見られる野鳥 

4.コミュニティ・フォレストにおける野鳥の価値 

5.一般住民による野鳥観察の方法 

講習ののち、参加者とともに森林農法によるコーヒー栽培地で野鳥観察の実習ワークショップ開催しました。

調査内容:サグパット村内の条件の異なる4つの森林農法によるコーヒー栽培地の生態系と野鳥について調査しました。

※ワークショップの詳細はこちら(日本語)➡

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苗木場の設置

20201月に苗場のための資材がサグパット村に運搬され、苗場の造成作業がSFACのメンバーによって開始されました。苗木用ビニールポットへの土入れ、苗床への種まきなどの作業が行われました。ティビッグの種子の入手が難しくトゥアイの種を入手して苗床で種まきしたが、発芽が見られなかったため、ファルカタ(フィリピンではMoluccan sau)の種を再購入しました。2020年5月現在、苗場では5,000本のアラビカ・コーヒーの苗木と5,000本のファルカタの計10,000本を育苗中です。

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森林農法によるコーヒー栽培の環境へのインパクトに関する講習会と森林農法によるコーヒー栽培地の生態系調査

講習会:2020212日 調査:20202715

講師:甲野毅(大妻女子大学助教授)、リリー・ハミアス(フォレスター) 参加者:SFACメンバー15

講習内容:201912月に行われた講習会で学んだ観察方法によって、森林農法によるコーヒー栽培地で、どんな生物(哺乳類、野鳥、虫、両生類など)が観察されたかを参加者が発表しました。甲野氏は絶滅した日本オオカミなどを例にあげ、生態系のバランスを保つことの大切さ、あらゆる生き物が地球上で役割があることなどをわかりやすく説明しました。

調査内容:全13の森林農法によるコーヒー栽培地を訪問し、土壌調査、生態系調査を行いました。今後の理想的な森林農法のあり方を示唆するための基礎資料として利用することとなりました。

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植樹地の苗木の生育状態のモニタリング

事業で植樹した苗木の生育状況は事業を担当する森林専門官によって毎月モニタリングを行ってきました。1010日、117日、126日に植樹地を訪問し。131日に植樹後半年目の生育状況の調査で12か所の植樹地を訪問しました。2020年3月が本事業最後のモニタリング調査となる予定でしたが、新型コロナウィルス感染問題で事業地も封鎖となり延期されました。20206月に入っても事業地のある自治体へは厳しい入場制限があり、生育状況の調査を事業地のパートナー団体であるSFACに依頼しました。報告によると、アラビカ・コーヒーの生育率は85%。日陰樹として植樹したマラティビッグは順調に生育していますが、トゥアイとアルヌスの苗木の生育は、マラティビッグに比べると低いとのこと。根付いた苗木はすでに、新しい芽と葉が出ています。

コーヒーの生育状態は、土壌の肥沃さと日陰の状況に大きく影響されていることが見て取れたそうです。育たなかった苗木の一部は、苗場から移植地への運搬中に受けたダメージによるものと予想されています。

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プロジェクト担当の森林官(フォレスター)マイラ・セセットからの感想とコメント

このプロジェクトは大きく、森林再生のための植林活動と、コーヒーをベースとしたアグロフォレストリー農園における生物多様性を維持するための野生生物の観察と調査、という2つの要素によって構成されていました。

コミュニティやSFACのメンバーは、森林再生から得られる利益が大きいことから森林再生活動には関心を示し積極的に活動に参加しました。森林再生によるメリットを理解しているからと言えるでしょう。今回新たに加わった 新メンバーや SFAC の従来のメンバーの中には、将来的にコーヒーから副収入を得られることを期待して日陰樹やコーヒーを植えることに積極的だった人が多かったです。
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サグパット村の人たちは、コーヒーをベースにしたアグロフォレストリー農園の管理にすでに精通していると言えるでしょう。ただその知識を実行に移すかどうかにかかっていると言えます。コーヒーの植樹にとって考慮すべきは、日陰樹の存在と土壌の肥沃度と植樹予定の土壌に適した苗木の選択です。 輸送時のダメージを少なくし、移植後の苗木の活着率を上げるには、地域内にある植樹予定地と似た環境で育成されている苗木を調達しなくてはなりません。
また、植樹に参加する人それぞれが何を目的としてどういう樹を育てたいと考えているかを的確に把握しておくことが大切です。
生計向上のために植林に関心があるのか、環境保護や持続可能な森林保全のための植林なのか、目的を明確にし、植樹後にメンテナンスが必要であることを受益者に説明し理解してもらう必要があります。植えっぱなしでは苗木の生育は期待できません。

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生物多様性の減少を実感しているにもかかわらず、残念ながらコミュニティの人々の関心は野生生物の保護に対しては高くありません。
日常生活に必要とされているものを優先し、無意識のうちに環境への悪影響を無視しているというところもあると思います。
コーヒーを主な栽培樹種としたアグロフォレストリー農園における生態系保全に関するセミナーでは、木を植えることで、野生生物の生息地を作り、野生生物の保護、生物多様性の維持につながっていることを実感してもらえたと思います。このテーマは、受益者やコミュニティにとっては目新しいものであったため、受益者はまだその価値を見定めるために学んでいる最中と言えるでしょう。

野鳥観察を地域の環境保全の状況を知るための調査方法に取り入れることは、新たな試みでした。環境教育プログラムや環境自然資源省(DENR)による生物多様性の豊かさと保全のためのプロ―モーション戦略となりえると考えます。生物多様性保全のキャンペーンを継続することで、環境や森林保全につながるコミュニティの意識を高めることができるでしょう。
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この事業の受益者であったSFACのメンバーからは、次のようなコメントがありました。

- 野生動物を保護することの大切さを学んだが、状況によってはコントロールできないこともあります(サヨテの農園や野菜畑が森林破壊につながる)。お金のことばかり考えている人を説得するのは正直難しいと思います。
- このプロジェクトは良いと思います。私は、自分たちのために、環境のために、野生動物のために、木やコーヒーを植えています。CGNが果樹の苗木も提供してくれれば、アグロフォレストリー農園からはコーヒーだけでなくほかのものも採れるようになります。
- 単作ではなく、間作を行うことで生物多様性を保全することができますが、現在の農業スタイルでは、農家はより良い収入を得るために換金作物の単作を好んでいます。
-私たちはこのプロジェクトの対象となれて幸運でした。このプロジェクトで空き地に植樹をし、コーヒーの植え替えもできました。私たちが今しなければならないことは、それらの面倒を見て育てることです。
今後、コーヒー、レモン、サヨーテなどから作る加工品の製造方法や、質の高い商品や量の多い商品を生産するための技術を向上させることができるようなプロジェクトなど、農業に関連した生計向上事業を実施してくれたらうれしいです。

SFACのメンバーはすでにアグロフォレストリー農園を持っています。環境を守りながら質の高い商品を生産するための新しい技術や戦略、生産に関する知識を提供することで、より強いエンパワーメントを受け、モチベーションを高め、コミュニティ全体に影響を与えることができるかもしれません。
また、メンバーを管理する組織の能力を強化することも重要です。 協同組合のビジョン、使命、目標は組合員一人一人に浸透させなくてはなりません。各組合員の団結力、責任感、忍耐力によって組織の方向性は決まり、成果につながります。組合メンバーは協力し合うことが必要です。
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# by cordillera-green | 2020-06-27 17:12 | 植林/アグロフォレストリー
2020年 03月 30日

世界の人びとのためのJICA基金のサポートで、サグボ村に小さなコーヒー精製所ができました!

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2019年度、コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)は、京都のNGO「マナラボ 環境と平和の学びデザイン」の現地パートナー団体として、「世界の人びとのためのJICA基金」のサポートを受け、「小規模農家によるコーヒー生産のための加工・運営指導プロジェクト」を実施しました。

 「世界の人びとのためのJICA基金」は、JICAホームページによると、「国際協力にご関心のある市民の皆様、法人・団体の皆様から寄附金による基金で、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、本基金を活用した開発途上国・地域の人びとを支援する活動に対して事業計画案を募集」するものです。2019年度の申請案件の中から、通常枠ではマナラボを含め7件の活動が採択されました。 

 JICAというとODAなどの海外での大規模なインフラ整備プロジェクトなどを連想すると思いますが、この基金はJICAの「市民との連携」事業のなかでも国際協力の経験のない個人や市民団体でも応募ができるものです。事業期間は1年間で上限100万円までと、JICAのさまざまな枠組みの中では小さいものですが、はじめて国際協力にチャレンジしようという人には、格好のプログラムと言えるかもしれません。

  

 2020年度のJICA基金活用事業募集のチラシの「チャレンジ枠」の解説には、こうあります(すでに、2020年度の募集は締め切られています)。

 ポイント開発途上国・地域における貧困削減や人々の生活改善・向上に直接的に貢献 しうる活動であれば、分野の指定なく提案可能。 特に、社会課題解決のための新たなアイディア・アプローチを歓迎!

 ポイント国際協力活動実績が2年未満の団体・個人が募集対象なので、国際協力活 動の経験がないor浅くても申請OK

 ポイント国際協力活動の経験がないor浅くても、 専門家から事業計画策定・実施・振り返りのタイミングで アドバイスをもらえる機会が必ずある!

 国際協力活動をしたいけど、自前の資金では足りない。でも、助成金申請って難しそう、と尻込みをしている人が挑戦してみるのにはとてもいいと思います。助成金申請で最大の難関と思われる会計処理の仕方や報告書の作り方なども、フォーマットと手引きに従って順番にすすめていけば、経験がなくても自力で作成できる仕組みになっています(面倒ではありますが)。

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 今回のマナラボとのプロジェクトは、CGNがコーヒーのアグロフォレストリー栽培を指導している場所の一つ、カパンガン町サグボ村で実施しました。サグボ村はマナラボ代表の飯塚さんが事務局長を務めていた「NPO法人 環境平和もやいネット」が、2017年度に緑の募金公募事業でアグロフォレストリーによる植樹を行った場所です。CGN2012-2014年度にサグボ村のビレン地区などで、3万本以上のコーヒーの苗木を植えました(イオン間環境基金助成)。 

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 植樹したコーヒーノキがようやく本格的な収穫期を迎えているにもかかわらず、収穫後のコーヒーの実を精製する機器がないという窮状をマナラボに相談したところ、サグボ村をサポートしましょう! と、このプロジェクトを立ち上げてくれました。事業名は「小規模農家によるコーヒー生産のための加工・運営指導プロジェクト」。要は、小さな農家さんたちがグループで使える小さな精製所を提供して、おいしいコーヒーを作り、少しでも多くの収入をコーヒーから得られるようにお手伝いをしましょう!というものです。サポートするコーヒー栽培農家さんは、サグボ村のビレン集落周辺の農家が加盟しているダイヨコン農業組合の人たちとしました。

 

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 プロジェクトでは以下の3つの活動を行いました。


1. 小さな精製所づくりと精製機器の支給

 小さなマニュアルの果肉除去機(パルパー)を3台支給しました。収穫後のコーヒーのチェリーをウオッシュド(水洗式)という方法で精製するために必要な機器です。これがないと、皮むきの作業を杵と臼でやらねばならなく、大変な重労働です。水を使う作業ですので、同時に水のタンクも支給しました。

 コーヒーチェリーを水につけて浮いてくるものをのぞいたり、皮をむいたパーチメントを洗ったりするための容器(タライですね)、そのパーチメントに付着しているミューシレージとよばれるネタネタの粘質を取り除くために発酵させる蓋つきの容器(大きめの蓋つきポリバケツみたいなもの)も支給しました。

 さらに、発酵したミューシレージを洗い流した後のパーチメントを乾燥させる乾燥箱(トレイ)と、乾燥台に使うプラスチック製のシートなどの資材も支給しました。

 最後に、それぞれの農家さんたちが収穫したチェリーや精製したコーヒー豆を正確に測り記録をつけるための、計りとノートも寄付しました。計りとノートは、ダイヨコン農業組合のコーヒー豆を毎年継続して輸入してくれている京都のフェアトレード会社「シサム工房」さんからのフェアトレード・プレミアム(奨励金)で購入したものです。

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2.精製技術トレーニング

 機器支給と同時に、支給した機器を使って品質のよいコーヒーを作るためのトレーニングを開催しました。技術指導には、アジア各国のコーヒー新興国で農家目線できめ細かい栽培指導を行っている山本博文さんが、忙しい合間を縫って2度も足を運んでくれました。

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3.組合の組織強化セミナー

 支給された機器は、組合が共同で使用する必要があります。ダイヨコン農業組合は、コープストア(組合のショップ。日用品や食料品を販売しています)の経営が主な活動です。今回新たに加わるコーヒーの精製を組合として行うための組織強化プログラムを行いました。組織をどのように潤滑に運営していけばいいか、いま現在の組織のあり方には何が欠けているか、どうすれば組織がさらにサステナブルなものになるか、マーケットを広げるための国際フェアトレード認証申請のためには何が必要かなどについて講習会を開催しました。

 講師には、フィリピンの政府機関である組合開発機構(CDA)の百戦錬磨の専門家さん、そして・フェアトレード・ネットワーク・アジア太平洋地区Network of Asia & Pacific Producers (NAPP)の東南アジアの生産者認証担当で各国を飛び回っているエリカ・シアソン女史が来てくれました。

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 2019年度事業というものの、JICAとマナラボの間で契約書を交わすまでに思った以上に時間がかかり、実質的には事業は収穫期直前の10月下旬にスタートとなりました。そして20202月末にはできるだけすべてのプログラムを終了してほしいとのことで、正味3カ月という短期決戦事業。事業調整を行うコーディネイターとしてCGN新人スタッフのバージニアを配置しましたが、ほんとうに期間中に終了できるかひやひやの3カ月でした。

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 以下は、プロジェクト後半戦の内容の一部(前半のプログラム詳細についてはこちら)を紹介します。

 201911月の収穫開始時の山本さんによる精製技術トレーニングで、ダイヨコン農業組合のコーヒー農家さんたちは栽培地の分布の仕方によって4つのグループに分かれることが決まりました。

1.組合のコープストアがある地区(農家11人)

2.ロウワー・ビレン地区(農家10名)

3.アッパー・ビレン地区(農家8名)

4.ランディン地区(農家13名)

 それぞれのグループ別にリーダーを決め、毎日のように農家のメインの生産物であるサヨテ(はやとうり)収穫に忙しい中、グループごとに週に1回のコーヒー収穫日を決め、その日に精製作業を共同ですることを話し合いました。

 やはり4グループともサヨテの集荷がない週末から月曜にコーヒーを収穫して作業をする曜日と決めていました。プロジェクトの調整スタッフは毎週末のように事業地に赴き、トレーニングで教わった手順に従って精製がされているかをモニタリングしました。

 でも、結果から言うと、栽培農家それぞれが収穫したものをチェリーの状態でほかの農家の豆を混ぜて一緒に精製するのには抵抗があったようです。やはり自分の豆は自分の豆として最後まで別にしておきたいという気持ちが強かったよう。まだ生産量が少ない農家も多く、共同作業の必要性を一部の生産量の多い農家さん以外は実感していないのかもしれません。また、チェリーの状態で集めたときに計った記録が、最後に精製・乾燥させたあとまで、そのままのパーセンテージになるのだよ、という算数がピンとこなかったかな。生産量が多い人と少ない人がいるのに同じように作業をするのが、割が合わないと感じた人もいたかもしれません。あるいは、自分の農園のコーヒーを味わいたい!という気持ちが強かったということも考えられます。今後の事業計画の立て方の参考となりました。

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*

 20202月に再び山本博文さんに来比をお願いし、農家さんたちが精製と乾燥を終えた17種類のコーヒーを、カッピングというちょっと本格的な世界共通の評価方法で、農家さんたちと一緒にチェックしました。

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 いつもいつも、とても褒め上手の山本氏ですが、心から「おいしい!」を連発。

 農家のおばちゃんたちの中には、「砂糖を入れないコーヒーなんて苦くって飲めたもんじゃないわ」と、テイスティングに挑戦するものの、「苦い!」と顔を思いっきりしかめて笑いを誘っている人も多くいました。しかし、コーヒーの輸出先の国々では、こんな風にコーヒーの香味の評価がされるのだということを、栽培農家さんに知っていてもらうのはいいことだと思います。

 普段、農家さんたちがおいしく飲んでいるコーヒーは、焦げているんじゃない?というくらい深く鍋で焙煎し、たっぷりと砂糖を入れてヤカンで煮だしたもの。それがこの地域でのコーヒーの飲み方です。農作業で疲れたときには甘いコーヒーがいちばんなのです。

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 「先進国と呼ばれる国々の大都会のおしゃれなカフェで、ちょっともったいぶって、目の飛び出すような値段をつけられ、ありがたがって飲まれているコーヒーは、お砂糖入れずに浅めに焼いて煮だしていないコーヒーなんですよ~~」「そういう飲み方に適したコーヒーのほうが、高く売れるものなんですよ」と伝えることが、この農家さんたちへのカッピング・ワークショップの目的のひとつです。農家の皆さんに「浅い焙煎のお砂糖抜きのコーヒーをおいしいでしょう!」と押し付けるつもりはカケラもありません。

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 山本さんは、17種類を1杯ずつテイストし、一つずつについて栽培農家さんに、

「このコーヒーは柑橘系のきれいな酸味がありますねえ」

「こちらはナッツみたいですねエ」

「あれ、これはなんか草っぽいかな?」

と感想を伝え、もっとおいしい(買ってくれる国の人たちがね)コーヒーにするには、精製過程でどんなことに気をつけたらいいかをアドバイスしてくれました。

 

 別の日には、ベンゲット州のそのほかの生産地の栽培農家の人も招待し、その農家さんたちのコーヒー豆も交えてのカッピングをしました。ダイヨコン農業組合の代表の人たちは、ほかの生産者のコーヒー豆との香味の違い、精製方法の違いなどを、農家さん同士の交流を通して学びました。

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 こうして丁寧に作られた今年コーヒー豆ですが、事業のプログラムがなんとか滑り込みセーフで終わったのち、3月に入ってからCOVID-19(新型コロナウィルス)の感染拡大で、CGNの拠点のあるバギオ市もサグボ村もすべての動きが止まっており(町も村もほぼ封鎖状態です)、ダイヨコン農業組合の倉庫で出荷を待っている状態です。

 一刻も早く感染拡大が止まり、皆さんのお手もとにコーヒーが届きますように。

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Thank you for the photos ©SDS Multimedia


# by cordillera-green | 2020-03-30 17:52 | コーヒー
2019年 12月 30日

コーヒーの森で野鳥観察ワークショップ開催

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コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)では、2019年度イオン環境財団の助成を受けて「ベンゲット州キブンガン郡における森林農法によりコーヒー栽培を通じた野生生物保護事業」を実施中です。

事業地のキブンガン郡サグパット村は、2006年にCGNが初めてアグロフォレストリーによるアラビカ・コーヒー植林事業を始めた場所です。

その後、環境自然資源省(DENR)や各自治体(LGU)や農業省(DA)でもコーヒーの植林の後押しが始まり、あれよあれよという間に、サグパット村を含む山岳地方の様々なコミュニティでコーヒー栽培が広がりました。収穫されたコーヒー豆の加工とマーケットには、通商産業省(DTI)も全面サポート。コーヒーの品質も値段もぐんぐん上がっていて、コーディリエラ山岳地方はコーヒー栽培ブームに沸いています。


「コーヒーの苗木をこんなに植えちゃって、収穫できるようになった時にコーヒーが売れなかったらたいへんだ。責任重大だぞ」

と、CGNのコーヒー栽培事業地のコーヒーの販売をサポートするために、CGN関係者を中心に「カピタコ・ソーシャルエンタープライズ(KapiTako Social Enterprise」)を起業しましたが、売り先がないどころか生豆の獲得合戦になっているという予想外の展開になっています。

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↑アグロフォレストリーのコーヒー農園はこんな感じです


もともと、純粋な森林再生のための在来種の植樹では山岳地方の先住民の森林の畑への転換は止められないと、苦肉の策で始めたアフロフォレストリーでのコーヒー栽培です。目標は山岳地方の環境保全と環境への負荷の小さい方法での先住民の暮らし(生計ですね)の向上です。どこでどんな風に、だれが育てているコーヒーかということが大切なわけです。

ブームにのってコーヒービズネスに新規参入の人たちは、もう、そんなことどうでもいいです。

量の確保。それもなるべくおいしいコーヒー。。。というわけでコーヒー買い付け競争は過熱しています。


CGNとしては、ここで深呼吸。。。

当初のコーヒー事業の原点に戻ってみようということになりました。

そこで、ほんとうに私たちの事業地であるコーヒーのアグロフォレストリー農園には、野鳥や哺乳類や両生類やそのほかの植物や微生物などの生き物たちがちゃんと棲めるような環境があるのだろうか? という調査を、改めてしてみることになりました。

野生の哺乳類や両生類(野ネズミ、こうもり、りす、山猫、大とかげ、蛇、カエルなどがいるそうです)はなかなか目にすることが難しいということで、野鳥観察に焦点を絞ることになりました。野鳥観察するのはコーヒー農家の人たち。

まずは野鳥観察の意味や方法についてコーヒー農家の人たちに学んでもらおうと講習会を開きました。講師として、以前からCGNの環境教育プログラムでお世話になっている日本野鳥の会の下重喜代さんのご紹介で、NPO法人バードリサーチの神山和夫さんと、マニラのCenter for Conservation Innovation Incのジェニカ・マシガン(Jennica Masiganさん)に来ていただき、講習会とバードウォッチングの実習を行いました。

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↑講師のバードリサーチの神山和夫さん


講習会では、二人に以下のようなテーマでプレゼンテーションをしていただきました。

ー野鳥の自然界や人の暮らす村落での役割、

ールソン島で見られる野鳥の種類、

ーコーヒー農園における野鳥の働き、

ー日本からのフィリピンに来る渡り鳥の紹介、

ー環境保全に配慮したアグロフォレストリーによるコーヒー農園の価値、

ーバードフレンドリー・コーヒーの紹介

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Center for Conservation Innovation Incのジェニカ・マシガンさん


講習会の参加者たちは、CGNがサグパットでコーヒーを植え始めた2006年前後から、CGNだけでなく自治体や農業省、環境自然資源省などから支給されたコーヒーの苗木を栽培してきた農家の人たちです。サグパット村の主な栽培作物であるサヨテ(はやとうり)の栽培で忙しく、コーヒー栽培をあきらめてしまった農家もいる中、熱心にコーヒー栽培に取り組み、近年かなり収穫量を上げてきている農家に参加を促し、14名が参加しました。

また、日本から画家の高濱浩子さん、CGNインターンの松田雅代さんもゲスト参加してくれました。

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神山さんは講習の中で、コーヒー・ベリーボーラーやステム・ボーラーというコーヒー農家を悩ませている害虫が、野鳥が増えることによって数を減らしたというコスタリカでの事例を紹介し、生物多様性がコーヒー栽培に与える益についても学びました。


ジェニカさんは、フィリピンが世界有数の生態系の多様を持つ国であることを紹介。700種類以上の野鳥が生息していると話し、21種類のルソン島に生息している鳥の紹介をしました。


参加者は年配の人が多く、ジェニカさんの紹介する鳥の写真に

「子供のころはたくさんいたが、すっかり最近見なくなった」

という声が多く聞かれ、サグパット村の自然環境がこの数十年の間に大きく変化してしまったことがうかがえました。


さすが、山岳地方の村で生まれ育ってきた参加者たちです。写真で紹介された鳥の鳴き声や潜んでいる場所、目にすることのできる時期や時間などにとても詳しく、研究者も顔負けです。どんどん話を聞いていくと、子供のころに遊びで野鳥を捕まえた経験があって、罠の仕掛け方などにもめっぽう詳しく、それゆえの知識なのだと気がつきました。

村でよく見かける鳥たちには地域での呼び名があり、それらはほとんど、その鳴き声に由来しているとのことです。

神山さんが探していた日本からの渡り鳥ノゴマ(英語名はSiberian Rudy Throat)も、「キーリン」というローカル名で地元の人に愛されている鳥であることが判明しました(今回は残念ながら見つからず!)。



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さて、午後からは、実際に双眼鏡の使い方を学んで、参加者のうちの一人のコーヒー栽培地にバードウォッチングに出かけました。

実習のために訪問した農園は、もともとサヨテ畑だったところをコーヒーのアグロフォレストリー農園にかえたところで、コーヒーノキとアルノス(ハンノキ)のほぼ2種の木しか生えていません。神山さんによると農園の周辺にある、他の木が生えていたりやぶがあったりする多様な植生の中のほうが野鳥が見つかりやすいとのこと。また、農園は急な斜面にあり、アルノスが茂りすぎていて野鳥を見つけるのは素人には難しいということです。

実習目的ですので、農園近くの比較的見晴らしのいいなだらかな場所で観察を行いました。ベンゲット松の実がエサになるのか、ベンゲット松にかわいいきれいな鳥を見つけて参加者は興奮気味です(特に日本人ゲスト参加者)。


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それにしても、参加者の人たちの鳥探しのうまいこと。鳴き声で居どころにあたりをつけ、あっという間に探し当てます。まったくかないません。

散り散りになって夢中で鳥を探し、最後に再集合。どんな鳥を見つけたかの話を聞き、だいたい13種類の鳥がほんの2時間ほど間に確認できたことがわかりました。野鳥を観察する楽しみも十分体験できたと思います。

双眼鏡をそのまま持ちかえってもらい、1月の終わりまでそれぞれの農園で観察を継続し、その記録をノートにつけてもらうことになりました。どんな観察ノートが出来上がってくるか楽しみです。

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バードリサーチ神山氏とジェニカさんは、講習会の前後に、サグパット村の中の様々なスタイルのコーヒー栽培地を訪問して野鳥観察をしました。

詳細は神山さんのバードリサーチでのブログで。

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Photo by Rainel Lee, SDS Multimedia

 

今回のバードウォッチングの実習中に観察された鳥は以下です。

1.White-eared Brown-Dove (ローカル名:Ot-ot)テリアオバト

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2. Colasisi (Olis/Bolilising)シュバシサトウチョウ

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3. Pygmy Swiftlet (Pipingew) コビトアナツバメ
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4. Red-rumped Swallow コシアカツバメ
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5. Yellow-vented Bulbul (Piloklok) メグロヒヨドリ
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6.Elegant Tit (Kusili) シラボシガラ
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7.Velvet-fronted Nuthatch (Ak-kap) ビロウドゴジュウカラ
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8. Tawny Grassbird (Salaksak) ズアカオオセッカ
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9.Little pied Flycatcher (Kalinbabanga) ハジロマユヒタキ
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10.Blue-headed Fantail (Lebeg) ズアオオウギビタキ  *Leader of the birds
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11. Brown Shrike (Tala or Aladdas(male))アカモズ
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12.Luzon Bush-Warbler (Samote) ルソンウグイス
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13.Mountain White-eye (Kuyotan) ヤマメジロ

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# by cordillera-green | 2019-12-30 13:52
2019年 12月 20日

マナラボとの世界の人びとのためのJICA基金事業「小規模農家によるコーヒー生産のための加工・運営指導プロジェクト」

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コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)は、2019年度,「世界の人々のためのJICA基金」事業を受託した京都のNGO「マナラボ 環境と平和の学びデザイン」の現地パートナー団体として、「小規模農家によるコーヒー生産のための加工・運営指導プロジェクト」のお手伝いをしています。

事業地はベンゲット州カパンガン町サグボ村。

CGNは、20122013年度にこの村のビレン地域で水源保全と再生事業を実施し、1年目30,320本、2年目42,940本の植樹を行いました。住民たちの生計向上に貢献することで緑化事業を促進しようと、植樹樹種に1年目には12,500本、2年目には18,720本、計31,220本のアラビカ・コーヒーの苗木を植樹しました(イオン環境基金助成事業)。


20152017年度に日本のNPO法人「平和環境もやいネット」のパートナーとして実施した「フィリピン北部山岳地方におけるアラビカ・コーヒー品質向上のための基準作りと普及事業」(日本国際協力財団助成)では、2016年にサグボ村のコーヒー栽培農家の一人、ダニーロ・リガオさんが東ティモールへのコーヒー研修に参加しました。

さらに、2017年度には「マナラボ」と協力し、サグボ村のティモック=プスプソック地域で「森林農法の普及と森林再生事業」(緑の募金公募事業)を実施し、アラビカ・コーヒー7,200本を含む13,200本の苗木を植樹しました。また、同じ年に京都のNPO法人「フェアプラス」とフェアトレードショップ「シサム工房」の協力を得、「フィリピン・ルソン島北部における環境に配慮した持続可能なコーヒー生産とフェアトレードによるマーケティング能力向上事業」(地球環境基金助成)を行い、将来のフェアトレード認証取得に向けての具体的な準備として組織強化のためのセミナーを年間を通して実施しました。この事業でビレン集落を拠点とするダイヨコン農業者組織は、組合として国の組合開発機構(CDA)に登録ができました。

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 最初の植樹事業から6年がたった昨収穫期(2018年11月-20191月)、サグボ村ではコーヒーの収穫がようやく本格的になりました。何ごとも目の前に起こってからでないとなかなか重い腰を上げない慎重派の山岳民族の人たち。ようやく、「収穫したコーヒーの加工はなかなか大変だぞ」と本気で困った気配です。そこで「マナラボ」と協力し、コーヒーチェリーの加工をグループで協力して行うことで、生産の効率を高め、品質を上げ、確実に生産者の収入向上につなげるための事業を開始することにしたわけです。


2019年10月に開始された「小規模農家によるコーヒー生産のための加工・運営指導プロジェクト」では以下の内容で事業を進行中です。

1.品質を上げるのに最低限必要な資材の支給

2.それらの機材を使った品質のいい豆を作るための加工技術トレーニング

3.生産者のグループが共同して支給された機器を使用し管理することができるように、組織強化のためのトレーニング

 

収穫期が始まった2019年11月、収穫に間に合わせるために加工機器を支給すると同時に、日本からコーヒー栽培専門家の山本博文氏をお招きし、ベンゲット州トリニダード町在住のコーヒー専門家のリリー・ハミアス氏とともに、加工技術のトレーニングを行いました。

山本氏はCGNの事務所のあるバギオ市に到着後、事業地・サグボ村の事前視察、購入予定の資材のチェックを行い、講習会1日目にのぞみました。

以下、山本氏の講習会についてのレポートです。

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山本氏は収穫後のコーヒーチェリーの加工方法について、参加した農家さんにわかりやすくていねいに説明します。山本氏がコーヒー栽培の指導に訪れた経験のあるミャンマー、東ティモール、インドネシア、ラオスなど、そのほかのアジアの国々の例を引いて、大きな加工機械を使用せずにコミュニティ単位で品質の良いコーヒー豆を生産する方法について解説しました。

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加工の方法の概略は以下です。

収穫したコーヒーのチェリーは、まず1か所にまとめて、緑の未熟のもの、熟しすぎて発酵が進んでいるものを除きます。赤くきれいに熟したものだけを選んで、重さを計ります。もちろん、チェリーを持ってきてくれた農家ごとに、ちゃんと何キロ持ってきたかを記録します。そして、その豆を大きなタライのような容器に入れ水を加えます。浮いたチェリーは取り除きます。浮いたチェリーは、虫が入っていたり、中がスカスカだったりで、生豆にまで加工したあとに、結局選別で取り除くことになる欠点豆となります。この段階で取り除くことで、のちの作業が軽減されることになるのです。

赤い果皮を取り除いたのちコーヒー豆には、まだパーチメントという殻がついています。そしてその殻にはミューシレージ呼ばれるヌメヌメの粘液質のものがついています。「ウオッシュド」と呼ばれる加工手法では、このミューシレージを発酵させて取り除きます。

まず、果皮を取ったパーチメントをもう一度水につけて浮いてくる豆を取り除きます。そして水を捨て、そのまま蓋のある容器に入れて一晩(12-24時間)おきます。ミューシレージには糖分が多く、自然発酵して、ヌメヌメの部分が固まり始めます。発酵状態が適切かどうかは、何かの棒をつきさして抜いてみて、その棒の穴が崩れずそのまま穴の形が残ることで判断してほしいと、山本氏は農家には指導しました。

この発酵度合いがコーヒーの味に影響を及ぼすので、小規模な農家さんたちがそれぞれ作業する時に、同じような発酵度合いに揃えることが必要です。発酵時間を時間で指定すると、発酵槽が置かれている場所の温度、湿度などによって発酵度合いにばらつきが出てしまいます。そのため、身近な道具を使ってそれぞれが発酵度合いを判断できる方法を教えているのです。

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日本の人は時間にとても正確で、時計なしでは生きていけそうもありませんが、山の人たちは、あまり時計をあてにしません(どこもかしこも止まっている壁掛け時計だらけです)。明るくなったら起きて畑仕事に行く。日が暮れかかったから作業を切り上げる。いつもお日様と一緒に暮らしています。時計や温度計に頼らず、「加減」を見るのがとても上手だなあと思います(文字通りいい「加減」なときもありますが)。「○○時間!きちんと発酵!」なんて指定をすると、負担に感じてしまう人もいそうです。山本氏が村の人の暮らしにあった指導者方法ができるのは、2年余フィリピンに暮らし、コーヒー農家とともに栽培に携わってきからこそなのです。 

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  午後には、実際の加工方法について、実習が行われました。講習内容がちゃんと頭に入っているか、参加者の人たちに自主的にやってもらい、加工のステップごとに、その作業の意味について山本氏は参加者の説明に答えながら教えていきます。


「なぜ、熟したものだけを分離する必要があるのか?」

山本氏は「未熟な実と熟しすぎた実はコーヒーの味に影響する」と説明。


次に「なぜ日陰で発酵させなければならないか」

山本氏は、「微生物が適切に働くために、日陰で発酵させる必要がある」と説明します。さらに「空気が入り、24時間以上たったあとに発生する微生物が引き起こす悪い発酵を防ぐために、ふたをする必要がある」と説明しました。


発酵がいい具合に終了したことを確認する手段についても、実際にやってみて参加者の人たちはみな納得した表情です。棒をさして確認する以外の方法も教えてくれました。容器の中で発酵させているパーチメントの上に手を置く。もし多くの豆が手にくっついてきた場合は、発酵が終了しているのだそうです。

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 参加者はみなでわいわい、「あら、こうだったかしら?」「間違ってるよ。順番」と、午前中の講習内容を思い出しながら自分たちの手で作業をしてみます。山本氏は、間違いは正すものの、楽しそうにその過程を眺めています。自分たちの力でやってみることで、ちょっと複雑な加工作業の工程を体で覚えてほしいということですね。


発酵が終わった後の工程についても、山本氏からわかりやすい説明がなされました。ヌメヌメが固まった状態のパーチメントを洗い流し、その後、乾燥作業に入ります。プロジェクトで支給された乾燥箱に乾燥を開始した日付のタグをつけて管理します。アフリカン・ドライベッドといわれる乾燥棚を作り、風通しのいい場所で乾燥します。にわか雨に備えて、乾燥棚にはビニールシートを備え、いつでもカバーできるようにします。

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コーヒー豆の理想とされる水分率は10~12%です。山本氏は豆を均一に乾燥させるためには、1時間に1回程度かき混ぜてほしいと説明しました。乾燥の度合いを確かめるには、水分計がない場合は「歯で噛んでみて確かめてみましょう」。これも加減を図るのが上手な山岳民族の人々。噛んでみた感触で、今やだいたいの水分率がわかるようになっています。

乾燥がすんだら、重さを計ってから保管します。コーヒーパーチメントを保管する際は、空気を循環させないように、サグボの人々がサヨテ(はやとうり)の出荷に使っているビニール製の丈夫な透明袋に入れ密閉します。そして冷暗所に1か月程度寝かせてから出荷するのが理想だといいます(実際にはその間にバイヤーが現れたら売ってしまうことがほとんどです)。


山本氏は参加者からの質問に答え、加工方法のみならず苗床からコーヒーの木の成長まで、そしてコーヒーの木の手入れとメンテナンスまで、栽培方法について幅広く説明してくれました。とくに、ダイヨコン農業組合は組合としてコーヒーの苗木生産を始めたばかりで、丈夫で収穫量の多い品質の高いコーヒーの苗を生産する方法についての質問が飛び交いました。

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コーヒー栽培は種まきに始まります。種子は、日陰のある上げ床に植え、細かい土で覆う。そしてシダのような葉やサトウキビの葉、農場の近くにある他の利用可能なもので覆うことが必要だそうです。種から芽が出て、種が持ち上げられ「ホーステイル」(馬のしっぽのようなので)と呼ばれるステージに成長した時、ビニールポットへ移植します。種まきから移植までには12ヶ月かかります。

ポットに苗木を植えて68か月経過して成長した苗木は、いよいよ栽培予定地の山の斜面に移植できます。コーヒーの苗木の生育にはシェイドツリー(日陰樹)と呼ばれる日陰を作る木が必要になるので、それを確認することが必要です。シェイドツリー(日陰樹)がなく、1日中直射日光にさらされた苗木は枯れてしまいます。コーヒーに適したシェイドツリーは、アルヌス、カリエンドラの木など。この地域に多いベンゲット松の木は適していないそうです。松の木は、非常に高い酸性を持つため、コーヒーの木のシェイドツリーには適していません。植え替えの際にはコーヒーの苗の根をまっすぐに植えることも、コーヒーノキが健康に育つには欠かせない要素だそうです。植え替え時に掘る穴の直径と深さは最低60cmは必要だということです。

*****

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講習会2日目はサグボ村のティモック&プスプソック地域に赴き、収穫後のチェリーの加工技術の講習とトレーニングを行いました。この地域は、2017年にマナラボが「森林農法の普及と森林再生事業」を行った場所です。その事業で植えたコーヒーの苗木はまだ収穫期を迎えていませんが、来たるべき収穫に備え、加工技術についての講習を行いました。

この地域には、今年6月に新しくプスプソック消費者組合(Puspusok Consumers Cooperative)が、国の組合開発機構(CDA)に登録しました。組合として小さな店舗を共同で経営するための組合設立だそうですが、来たる収穫の本格化に備えて、加工についての知識を得たいという熱意がメンバーにはあります。山本氏による講習内容は、前日のダイヨコン組合と同様でしたが、積極的な質疑応答が行われました。

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講習会3日目は再びビレン集落のダイヨコン農業組合に会場を移します。

まずは、コーヒー加工資材の支給を行いました。

この事業で支給した資材は以下です。

―コーヒーチェリー皮むき器

―スチール製の水タンクとさび止めの塗料

―発酵などの加工に使う容器

―乾燥箱

―乾燥台のためのスクリーン、ネット、プレスチック・シート

―はかり(フェアトレードショップ、シサム工房から支払われた奨励金(プレミアム)で購入)

―タグをするためのマスキングテープ、データをそこに書き込むためのマジックペン

ー各加工所のリーダーが持ち込まれたチェリーなどの記録を取るためのノート

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サグボ村ベレン地域ではコーヒー栽培地が広い地域に分散しており、また、コーヒー栽培農家が運搬のための車両を持っていないということで、資材を設置する加工センターを集落内の4か所とすることが提案されていました。事前の事業地訪問で講師の山本氏、ハミアス氏とCGNスタッフはその4か所を訪問し、加工に必要な水、乾燥に必要な土地、そして施設や機器を管理することができる組合メンバーがいることを確認しました。


4つの地域は以下です。

1.ダイヨコン農業組合ホール:周辺の11人のコーヒー栽培農家

2.ビレン集落 ボビーさん:8人の栽培農家

3.ロウワービレン集落 アナさん:10人の栽培農家

4.ビレン集落ランディンlanding メイラさん:13人の栽培農家


加工技術のトレーニングもばっちり(たぶん)。加工に必要な資材も届き、その設置場所も決まり、それぞれのミニ加工センターを使うグループ分けもできました。

さて、いよいよここからが難関です。どのようにしてその施設を管理運営していくかです。グループのメンバーたちが協力し合い、公平に、品質のいい豆を作るための組織づくりになるわけです。山本氏はミャンマーで何もないところから3年をかけて小さなコミュニティでコーヒー生産者の組織を立ち上げた経験があり、そこでの経験を引用しながら指導をしてくれました。


加工作業は各グループ週1回集まって行うことになりました。グループに分かれて、リーダーを決めます。そして、それぞれのグループごとにメンバーたちがコーヒー収穫に時間をさける曜日を決めました。その日に集中してみなで集まって作業をするということです。収穫と加工の曜日は以下に決定。

1ダイヨコン:収穫は毎週金曜日の午後であり、翌日土曜日の朝に加工

2ビレン :収穫は土曜日で、プロセスも同日

3ロウワー・ビレン :収穫は、毎週土曜日で加工も同日

4ランディン:収穫と加工は、毎週月曜日


それぞれの地区のリーダーは品質管理責任者でもあり、各農家から持ち込まれたコーヒーチェリーの記録(日付、名前、重さ)を取ります。そして、コーヒーチェリーの加工のプロセスが、指導されたように適切に行われているかをモニタリングすることになりました。

各加工所で加工されたコーヒー豆は乾燥されたパーチメントの状態で、組合の拠点であるダイヨコン農業組合のホールに持ち込まれます。組合の現在の事業のメインは組合ストアの運営ですが、その運営とコーヒー豆のトレーディングは別会計にしたいとのこと。全体の品質管理責任者は、CGNの事業で東ティモールにコーヒー生産の研修にいったことのあるダニーロ・リガオさんに決定しました。

さっそく翌週から、決められたスケジュール通りに加工所を使ってみようということになりました。

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さて、収穫は最盛期を迎えています。コーヒー加工所はうまく機能しているでしょうか。事業担当のバージニアとリリー・ハミアス氏は毎週サグボ村に足を運んで、収穫と加工の現場でモニタリングと指導を継続しています。どんなおいしいコーヒーが生まれるか楽しみです。


なお、事業では、マーケティングに向けての組織強化の講習会を1月に開催予定です。

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講習会のそのほかの写真は以下のリンクにあります。


 



# by cordillera-green | 2019-12-20 15:17 | コーヒー
2019年 10月 08日

コーヒー育苗による森林保全事業 2018-2019報告③ 受益者と担当した森林官の感想

マンカヤン町バリリ村

マンカヤンには以前からコーヒーの木があったが、このプロジェクトは新しい取り組みだ。しかし、種まきから苗木ポットに移すまでの育苗は少々複雑だった。私たちは実生の苗から栽培することに慣れている。いままで私たち農家は何の手もかけず、ただコーヒーの苗木が自然に育つままにしてきた。プロジェクト受益者になってよかった点は、苗場での育苗が重要であることを知ったことだ。また、たい肥、有機肥料、化学肥料のいずれもが、苗木栽培を促すことを知ることができたことだ。

 わたしたちは苗木を大事に育てている。これらの苗が、新しい苗木づくりにつながるからだ。将来は、育てた苗木をコーヒー栽培に興味がある他のコミュニティに共有したいと思っている。バリリ村がマンカヤン町のコーヒーの苗木の供給源になることを目指したい。

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カヤン村

タジャン町は、昔、森林を守るバタンガンBatanganという 伝統システムがあったが、今それが町の条例として復活している。また、結婚するすべての夫婦は、植林をしなければならないという法律もある。カヤン西村では、毎年6月12日(注:フィリピンの独立記念日)に植林をしており、すべての家庭はカヤン村の共有林に植林をしなければならない。そのため、カヤン西村では、苗木を生産する苗場が必要なのだ。

CGNは、2年前に始まった事業で、共有林での植林だけでなく、私有地でコーヒー栽培をすることを住民に教え始めた。カヤン西村の行政も住民も私有地にも植樹をすることを推奨してきた。今回のプロジェクトで、そのための苗木を無料で手に入れることができるようになったのだ。

カヤンには以前はコーヒーの木があった。そしてコーヒー豆はお金の代わりとして砂糖との物々交換に使われた。しかし、いつのまにか誰もコーヒーを買わなくなり、コーヒーの木は手入れをされずに放られたままになっていた。しかし、住民たちはいま一度、違う品種のコーヒー栽培をし、コミュニティを豊かにしたいと思っている。コーヒーの木の面倒をちゃんとみてなるべく早く収穫を得る決意だ。

だが、コーヒーは他の植物と違い、入念な世話が必要な植物だ。夏の間の苗木は、水が不足し、ゆっくりとしか育たない。雨季の間は、コーヒーの木を食べる害虫が出るため、常に苗木の世話をする必要がある。それでもやはり、コミュニティにとって苗木生産は社会生活のサポートとなるであろう。育てだ苗木を環境資源省(DENR)が実施する他の植樹プロジェクトに販売することも可能だからだ。

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 アンバサダー村

(CGNが9年にわたって事業を行っているので)アンバサダー村コロス集落の住民は、アグロフォレストリーについてよく知っている。環境面、社会面においてアグロフォレストリーの重要さが分かっている。彼らは、環境保全のためにコーヒーを植林し、また一年の終わりの追加の収入源としてもコーヒーを栽培している。

ここの住民は苗場造りから収穫後の加工に至るまで、コーヒー生産に関する技術について知識がある。苗場造りも新しいことではなかった。しかし、それでも新しい品種の栽培には関心がある。その品種がたくさん実をつけ収穫量が多く、将来の暮らしの向上に役立つかもしれないからだ。

今回のプロジェクトを通し、苗木の質向上のためにも、まだまだ経験を積む必要があると感じた。過去にコミュニティを訪れてくれた山本博文氏、スマトラ島から訪ねてくれたガニ・サリバンGani Silaban氏もそうだが、今回講師を務めてくれたジャワのエコ・ポロムウィディEko Poromwidi氏から学ぶ機会をもてたことには、とても感謝している。コーヒーの品質の良しあしは苗木づくりが決定づける。いい苗木を植えることができたら、確実にその木はよく育つということを学んだ。

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森林官・リリー・ハミアスの感想

異なる地域、異なる標高、異なる文化の地域で活動することになったが、プロジェクトに対する誠意と意欲は共通しており、プロジェクト遂行は難しくはなかった。彼らのプロジェクトへの誠意を感じたので、苗場造成の困難を乗り切れると感じながらプロジェクトを担当してきた。彼らの文化は、彼らの仕事の仕方、そして育てている苗木にも影響していると感じた。

一方、コーヒーに関するある先入観やある程度の知識を持った農家と接するのは難しいと感じた。真によい品質の苗木を栽培したいと欲しているものは、きちんと細部まで気を使って仕事をする。ここでも文化は人の仕事の仕方に影響を及ぼすと実感した。

この苗場プロジェクトはコーディリエラ山岳地方で唯一無二のものである。この事業は、ほか地域のコーヒー農家、コーヒーに関する研究者に基礎的な情報を提供し、今後のコーディリエラ地方のコーヒーの品質向上に貢献することだろう。 

苗場における調査では、苗木が苗場でいかに生育するかを知ることができた。しかし、引き続き移植後の生育具合の観察を続けていくことに尽力したい。苗場における環境と、移植後の外の環境では異なっているからである。
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# by cordillera-green | 2019-10-08 01:06 | 植林/アグロフォレストリー
2019年 10月 07日

コーヒー育苗による森林保全事業 2018-2019報告② エコ氏とアビイ氏による持続可能なコーヒー栽培セミナー

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以下は持続可能なコーヒー栽培と苗木づくりの実際についてのセミナーについてのレポートである。苗場を造成した3か所とバギオ市においてセミナーが行われた。

インドネシアの「KlasikBeans Cooperative」のエコ・プロノモウィディEkoPurnomowidi氏とアビイAbytar氏によって持続可能なコーヒー栽培についての講習会は行われた。エコ氏は持続可能なコーヒー生産について実際に行動に移している素晴らしい講師だった。

エコ氏は木の大切さについてまず概要を述べた。コーヒーもアグロフォレストリー・システムの中では、ほかの森林樹種と同じく樹木の一つにすぎない。樹木は含有している炭素が人間が作り出した公害を吸収し、人間のために酸素を供給する。樹木はあらゆる生物が排出する毒を吸収する空気清浄機の役割を果たしている。樹木は多くを与えているにも関わらず、そのことは人間には無視されているといえる。

「あなたのことをサポートしているものについて忘れてしまったら、あなたに成功はないでしょう。いつも心を込めて小さな自分にできることをしましょう」。

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エコ氏はアグロフォレストリーについての考えも共有してくれた。

「アグロフォレストリーについては、計画をきちんと立てることが必要だ。注意深く計画を立てたら、私たち人間もそのシステムの一部となれる。しかし、そうしないとアグロフォレストリー・システムの中に入らない物たちが出てきてしまう。このシステムを実行するには、他者(人、植物、動物など)について考慮することが必要だ。そうしたら、環境のなかですばらしいシステムを実現できる。持続可能性を考えるときに避けられない10の要素が以下だ」

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1.社会性と環境

他の農家と相互に学ぶ事は非常に大切である。それぞれの異なる考えや長所を活かすことができるからである。しかし、それは他人の助けとなりたいという気持ちがなければできないことである。

 

2.生態系の保護

植林や苗木供給のための苗場づくりなどの環境保全活動は、一農家の利益だけではなくまた、野生動物の生息地、食糧や酸素などの供給源の確保のためにも必要である。地球は、生き物すべての住処であり、何か一つが欠けると、ほかの生き物たちに影響が及ぶのだ。

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 3.野生生物

野生生物は大きな動物だけでなく、昆虫や微生物、小さな哺乳類の動物、鳥類も含まれる。小さな昆虫にも生態系において非常に重要で大切な役割がある。野生動物の保護は、こうした小さな生き物を守ることから始まるのである。

 

4.水保全

水源涵養は、人間のみならず全ての生き物が生きていくために必要なことである。水源を維持するためにはさらなる植林が効果的だ。農業における農薬の使用は水を汚染し、人間の健康と環境にとって)有害である。水を大切にしよう。

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 5.平等な扱い

全ての農家と人間は平等な扱いを受ける必要がある。共に学ぶためには、尊敬の心と相手の意見に耳を傾けることが必要だ。平等な扱いは、すべての子どもたちに、物事がどのように機能しているかを学ぶ場を与える事も含まれる。子どもたちはこういった場で、目で見て学ぶ事ができるのだ。

 

6.健康と安全

すべての人の食は農家によって作られている。農家がコーヒー、米、野菜などを生産しているのだ。農家はすべての消費者のために安全な食を作らなくてはならない。

食の安全は農家から始まるべきである。食の安全は、人間と環境のために、オーガニック、もしくは環境にやさしい肥料を使用した農園から始まるべきである。

 

7.コミュニティ関係

あなたの見聞を共有することは、他の農家の助けとなる。

教えることで、教えられた側もまた学んだことを共有したくなる、その結果、きょう数された側もまたより良い「先生」になるのだ。

 

教えることで、教えられた側もまた学んだことを共有したくなる。その結果、共有された側も、より良い「先生」となる事ができる。つまり、知識は共有を受け入れたすべての人に行き渡り、知識の継承につながるのだ。

 

8.総合的作物管理技術(ICM

これは、同じ地域で農業と林業を組み合わせて栽培するアグロフォレストリーと似ている。作物の統合的作付け(注:多品種を混栽すること)はコーディリエラ地方の習慣であるが、商業農業の推進により、この習慣は消滅してしまった。コーヒーをほかの作物と一緒に統合的に栽培することは追加収入となる。どういう作物を統合して植えるか、

病気や害虫予防など目的による。様々な作物を統合的に栽培することは、よい農法)といえるだろう。

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 9.土壌管理

栄養分が作物に吸収され、水は灌漑施設によって川に流され、土壌もやせ続けている。土壌の質を保たなければ、コーヒー及びその他の植物に影響を及ぼす。土壌に使用するものは同時に、私たちが口にするものでもある。そのため、土壌を生き物として扱わなければならない。

 

10.廃棄物の管理

農家はゼロ・ウェイストを実践し、生分解性の廃棄物は土壌に戻す必要がある。可能であれば、廃棄物を再利用する。土壌の質はコーヒーのカッピング(※香味評価)にも影響を及ぼす。

 

以上の10の原則は、環境とコーヒー生産に関わる全ての人々の幸福の維持につながる。苗場造り、堆肥作り、土壌と水保全、人間の幸福などの保全はまた、コーヒーの品質に集約されると言えるのだ。

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# by cordillera-green | 2019-10-07 23:52 | 植林/アグロフォレストリー
2019年 10月 07日

コーヒー育苗による森林保全事業 2018-2019報告① 実験苗場と苗木づくり

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コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)では、京都のNGOマナラボ 環境と平和の学びデザイン」とともに、「フィリピンのコーヒー育苗による森林保全事業」を、2018年―2019年にかけて実施しました。今回の事業はタイトルの通り、コーヒーの苗木づくりに焦点を当てたものです。(国土緑化推進機構 緑の募金公募事業/WE21コーヒーの森連絡会サポート)

 

CGNがアラビカ・コーヒーの木の最初の試験的な森林農法による植林をキブンガン町でしたのは2006年です。そのころ、コーディリエラ山岳地方では市場経済が入り込みはじめ、野菜栽培を行うための森林破壊がすごい勢いで進んでいました。森林破壊を食い止めるにはどうしたらいいかと官民を挙げて試行錯誤を繰り返していました。

バギオ市のお隣のラ・トリニダード町にある国立ベンゲット州大学Benguet State UniversityBSU)の高地農法システムと森林農法研究所Instituteof Highland Farming Systems and Agroforestry (IHFSA)では、コーディリエラ地方、特にベンゲット州に多い松(ベンゲット・パイン)の木の下でも、アラビカ・コーヒーが成長するというリサーチ結果がありました。環境に大きな負荷を与えないで、先住民の生計を助ける作物がないかと切り札として「アラビカ・コーヒー」が着目され始めたのです。

https://philcoffeeboard.com/learning-from-seed-to-cup/

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CGNBSUのマカネス・ヴァレンティーノ教授の指導に従って、2006年、イオン環境財団の助成を受け、キブンガン町サグパッド村に6000本ほどのアラビカ・コーヒーの苗木をベンゲット松の木の下などに植え、その生育具合の観察を始めました。

そのころキブンガン町では、大量に栽培されているという違法な大麻に代わる作物として、自治体もアラビカ・コーヒーの苗木の支給を始めていました。環境保全を目的とした環境資源省(DENR)、換金作物の栽培を目的としている農業(DA)もコーヒー栽培を推奨し始め、かなり多くの苗木がキブンガン町のいたるところに植えられたと思います。

それから早くも13年がたちます。サグパット村であの時私たちが支給した6000本のうちのどのくらいが生育しているかはわかりませんが(他団体から支給された苗木と区別がつきませんから)、キブンガン町ではアラビカ・コーヒーは一つの大きな産業となっています。すべての農家がコーヒー栽培に熱心だったとは言えませんが、一部の農家ではかなりの量を収穫をできるまでになりました。


CGNでは、キブンガン町以外にもアラビカ・コーヒーの栽培事業を拡大し、ベンゲット州カバヤン町、トゥブライ町、カパンガン町、マウンテン州バーリグ町、タジャン町などでもアラビカ・コーヒーを中心としたアグロフォレストリー(森林農法)による栽培指導を行ってきました。イオン環境財団には現在に至るまで毎年助成をいただいてこの事業をサポートしてもらっているほか、神奈川県のNPO法人WE21ジャパンにも継続的にサポートをいただいています。もやいネットなど、日本のパートナーNGOを通して国土緑化推進機構・緑の募金からのサポートも何度かいただきました。


事業地で収穫が始まってからは、収穫したコーヒーの実の加工指導も事業内容に加え、品質のいいコーヒーを生産するための技術指導やコミュニティで共有できる小さな加工機材や乾燥資材の提供も行ってきました。たまたま2014年からBSUに森林農法とコーヒー栽培を学びに来ていた山本博文氏には、留学中の2年間、ほんとうに多くのことを教えていただき、彼の指導で山岳地方のコーヒー栽培は大きな進歩を遂げました。

日本のフェアトレード会社への生豆の輸出も始まり、2019年は良質な生豆5トンを輸出するまでになりました。

しかし、10年以上コーヒー栽培に携わっているスタッフにはジレンマもありました。当初予測していた生産量には遠く及ばないのです。いったい原因はなにか?

私たちはもう一度、BSUに指導され私たちが行ってきたアラビカ・コーヒーの栽培の仕方を見直してみようということになりました。


最初は疑心暗鬼に始めたコーヒー生産が収入に結び付くということが証明されはじめ、いまも多くの農家が新たにコーヒー栽培に乗り出しています。CGNをはじめ、地方自治体、農業省、環境資源省、そして加工に関わる通称産業省(DTI)も多くの山岳民族の農民へのサポートを継続しています。

いまからでも決して遅くありません。農家の人たちの努力が報われる地域にあったコーヒーづくりを目指しての仕切り直しです。同時にコーヒー栽培がブームになっている今、現在残っている原生林を破壊して、コーヒー栽培を始める人がいないよう、アグロフォレストリー(森林農法)についてもう一度見直し、環境保全型の栽培を指導していこうということになりました。


NGO「マナラボ 環境と平和の学びデザイン」(京都市)は、私たちの置かれている状況を理解して協力を申し出てくれました。マナラボとともに地域にあった品種を選び、地域の厳しい気象・地理条件でも生き延びることのできる丈夫なコーヒーの苗木の育成事業と、環境に負荷が少ないアグロフォレストリーによる栽培指導が始まりました。(国土緑化推進機構 緑の募金公募事業)


以下は事業を担当したフォレスター、リリーからの報告です。

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*****

 環境保全に取り組むNGOとして、本プロジェクトではコーヒーをアグロフォレストリー・システムで栽培し、土壌と水質の保全と保護を行うと同時に、コミュニティの生計を助けることを目的としている。ゆえに、当事業では品質の良い苗木と認証のあるアラビカ・コーヒーの実験的な生産を行った。

当事業ではそれぞれ気候条件の違う3つのコミュニティで実験苗場を作った。

 

●コミュニティの選考

 計画では、苗場の造成地は、標高が高いところ(1600メートル)、中くらい(1400メートル)、低いところ(1000-1100メートル)としていた。それに基づき、標高が高いところはベンゲット州マンカヤン町バリリ村、標高が中くらいのところはベンゲット州トゥブライ町アンバサダー村。標高が低いところはマウンテン州タジャン町のカヤン村とした。

 標高の一番高いマンカヤン町バリリ村は通常午前11時には雲が出て、午後にはよく雨が降る。温度は15-22度くらい。トゥブライ町アンバサダー村はバリリ村に比べると、湿気は少なく、雨季でも雨の多くはない。気温は15-26度くらい。タジャン町カヤン村は暖かいが、早朝は気温が下がる。とくに乾季は湿度は低い。

 

●苗場(現存している苗場)へのカティモールの実験的育苗

地域の気候に合っているのんではないかと山本氏の推薦があったカティモール(当地域ではモンドノーボと長い間呼ばれてきた)という品種の苗木の実験的栽培を行った。カヤン村とアンバサダー村の現在使われている苗場にスペースがあったため、そこを利用した。マンカヤン町バリリ村には苗場はなく、すべて新しく建設した。

 

カヤン村とアンバサダー村では直径3インチ×高さ10インチのビニールポットに苗を育成した。ポットの中には通常ベンゲット州国立大学の指導に基づき、堆肥50%と土壌50%を混ぜたものを使用した。苗場では黒ネットで日照を50%に調整した。   

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<観察結果> 

二つの苗場とも初期ステージでの発育がよく、堅牢に育っていた。 しかし、苗木生育の後期ステージでは生育スピードはおそくなり、アンバサダー村の苗場では葉枯れや病気が観察された。栄養分はすでに苗木に吸収されており、葉枯れと病気は苗木を弱らせている要因である。こういった事例には苗木の生育を助ける処置が必要になる。

カヤン村では、豚の尿を水で希釈して1週間に一度スプレイしていた。また、ミミズ堆肥の施肥も行った。これらは移植までにコーヒーの苗木が必要としている処置である。堆肥のみでは十分でないと考えられる。苗木への継続的な処置が、のちのコーヒーの順調な生育には欠かせない。

               

標高が高低によるカティモールの苗木の生育状況の比較も行った。二つの苗場とも苗木の移植前までの生き残り比率は高かった。 

標高の高いアンバサダー村の苗場の苗木のほうが、追加の処置をしなくても苗木の葉と新芽がつるつるとしていた。しかし、標高の低いカヤン村の苗場の苗木のほうが生育は早い。カヤン村の苗木は1-1.5フィートに生育していた時に、アンバサダー村の苗木は1フィート以下であった。

上記のような処置は苗木の生育のサポートになる。生育状況の比較をするために、苗木の根のシステムの処理はこの実験では行わなかった。カティモールは、病気に敏感であるが、日陰で元気に生育していることが観察された。移植後の生育状況をさらに観察することが求められる。

 (この観察は、20188月から20196月に行われたものである)

 

 ●実験苗場のための種の入手と苗床への種まき

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ラオスからの証明書のある種の入手は事情により20194月になってしまった。コーヒーの種は、ラオス・コーヒー・リサーチ・センターから入手した。

以下がコーヒーの名称である。

1. H373

2. F5

3. C166 

4.P88

5. P 86  

6. P90

7. ST113 

8. B02

9. F5

10. T8667

11. T5175  

12.LC1662

13. Y 

14. G1702

15.H377  

16.H528

 

上記の種は2019618-19日に、マンカヤン町バリリ村の標高1600メートルの苗場に、527日にマウンテン州タジャン町カヤン村の標高1100メートルに作られた苗場に、522日にトゥブライ町アンバサダー村の標高1400メートルの苗場に蒔かれた。

 それぞれ、発芽率は60%(バリリ村)、70%(カヤン村)、80%(アンバサダー村)である。苗場で種をまくときに、バリリ村とカヤン村では、コーヒーの品種別にタグをつけて種をまいたが、アンバサダー村では種まきを担当した現地の農家が観察実験の意味を解さず、品種を分けずに種まきを行ってしまった。

入手した種の品質が悪かったのは、保存の仕方にあると予測される。コーヒーの発芽は収穫後6か月がもっともいい時期とされているが、種まきまでの保存の時期が長すぎた。また、ビニール製袋に長い時間保存されていたため、一部の種は腐ってしまっていた。種もまた生き物である。慎重に取り扱われるべきであった。

              

カティモール種の種はベンゲット州国立大学で購入した。カティモール種の種は苗床にマンカヤンに2019315日、カヤンで201935日、コロスで524日に蒔かれた。 

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種まきの日と発芽の日

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  種まきの時期、気候の違い、そして種が含んでいた水分の違いが、発芽までの時間に影響を与えている。一般的にコーヒーの種は雨季で1か月くらいで発芽し、乾季では2か月前後で発芽する。

カティモール種は、発芽した種の観察を通して、三地域すべてで栽培に適しているということができる。発芽した苗木のポットの中に用意した培土の違いによる生育状況は以下である。培土の種類別に最低200個を栽培している。

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以下の培土で生育を観察した。標高の違いによる平均的成長の具合(㎝)

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20197月時点で、カティモール種の苗木は元気に健全に生育している。マンカヤン村、カヤン村、アンバサダー村で育成中の苗木の高さはだいたい3-4インチである。中には2インチのものもある。

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 強化剤と農薬をかけた苗木に成長は見られなかった。苗場に苗木があるうちは引き続き観察を続ける。移植が行われたのちも、継続して気候条件の違いによる生育助教の違いの観察を行っていく。

 

●苗木育成のための苗場の造成

 バリリ村では苗床で種まきを終えたのちに、苗木場の造成を行なった。バリリ女性組織、ブギアス地区刑務所勤務の兵士と警察が土地提供者とともに造成作業を行った。バリリ女性組織がポットへの土入れの作業を行った。2019612日は13人の刑務所の職員と6人のCGNのスタッフとボランティア、656日は10人のベンゲット州国立大学森林学部の学生とCGNスタッフ2名で作業を行った。ポットへの土入れ作業はその後も土地提供者とボランティアによって継続された。

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アンバサダー村では、種まきに先んじて新しい苗木場の造成が行われ、20196月に完成した。土入れ作業はアンバサダー村の農民組織MOAPAメンバーとベンゲット州国立大学の学生4名によって、2019656日に行われた。その後、苗床に蒔いた種が発芽し、ポットへの植え替え作業が行われた。

 

カヤン村の実験のための苗場は個人所有の苗場の中に造成された。ラオスから入手した種の発芽率は30%にとどまっているが、引き続き観察を行っている。大量の苗木を生産するための苗場はベンゲット州カパンガン町でダイユコン農民組合を受益者とした。

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 2019年7月現在、バリリ村では1万本のカティモールの苗木が育成されている。ラオスから入手した種は苗床で発芽したところで、まだポットに植え替えられておらず、本数はわからない。

アンバサダー村でも1万本の苗木が生育中。ラオスで入手した種は発芽したばかりでまだ植え替えられていない。カヤン村では2000本のカティモールを育苗中。ラオスから入手した種は現在ポットに植え替え中である。


BPI(植物産業局)への苗場登録申請は延期となった。最低25,000本の苗木ポットがなくてはならず、最低1年間運営が行われていたという経歴が登録の条件であり、それを満たせていないためである。現在育成している苗木の数は各苗場とも約1万本であり、まだ1年が経過していない。今後、条件が満たされ、苗場の管理組織が望んだ場合、登録手続きを自主的に行うことになる。

 

●苗木づくりに関する講習会開催

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 この講習会は本事業を担当するリリー・ハミアスによって、2018712日(カヤン)、727日(コロス)、2019215日(マンカヤン)において開催した。主な講習内容は以下である。

<プラスチック製のポット> 

アラビカ・コーヒーの苗木づくりに適したポットの大きさは、3×3×10インチである。このサイズは森林樹種の苗木づくりに使うものより大きなものである。コーヒーはポットに植えた後、約6か月(クラシック・ビーンズ)から1年(BSU)で植樹地に移植可能になる。ポットの中で生育しすぎるとコーヒーの苗木の根はカールしてしまい、移植時に根の剪定が必要となる。茎と根の長さの比率を観察することが必要だ。

 <ポットの中の培土>

インドネシアのコーヒー専門家が強調しているように、コーヒー生育の基礎となる根はたいへん重要だ。

ポットに入れる培土はふるいにかけて使う(石や大きな土の塊、茎などを取り除くため)。そうすることで根はまっすぐに伸びる。ポットの中の培土は堆肥とまぜ、水をかけたときに土が固まらないようにすることが必要だ。

 <日陰を必要とするコーヒーの苗木> 

苗場は、苗木の葉が焼けるのを防ぐために、日陰を必要とする(黒ネットや木の葉によって)。日陰によって、葉枯れを防ぎ、苗木を弱らせないようにし、病気になることを避けさせることができる。コーヒーの木は生育に50%の日陰が必要だ。

 <種まき>

コーヒーの種は平らなほうを下向きにおいて蒔くことが必要だ(胚の部分が土に触れるように)。そして線上の溝を作って、まっすぐに穴をあけて種をまく。蒔く種にダメージがあってはいけない。病気のない種を選ぶ。ピーベリーも種には適していない。シェル豆(空洞になっている豆)も種には使ってはいけない。以上もエコ氏の講習会で説明された。

               

●コーヒーの古木の更新剪定(リジョビネーション)について

 コーヒーの古木の更新剪定は、トゥブライ町アンバサダー村のフェリー・ダミーロ氏のコーヒー農園で、試験的に2018723日―25日と201961112日に行われた。2018年には約30本、2019年には約40本の、20年以上たっているコーヒーの古い木を更新剪定をした。

20187月は、農園の持ち主、コロス集落の農民組織MOAPAのメンバーと4人のボランティアの学生によって作業が行われた。20196月は、農園主とMOAPA代表のエドウィン・ビサヤ氏と3人の学生ボランティアによって行われた。2回ともボランティアの学生はベンゲット州国立大学農学部の学生で、農園主の指示で更新剪定を行った。現在までに、更新剪定をしたコーヒーの木のうち100%が生存し、新たな芽が出てきて、フェリー・ダミーロ氏が管理をしている。ダミーロ氏の農園が更新剪定をした木としていない木を比較するための格好のサイトとなっている。

 

●植樹活動

 植樹活動はCGNの活動のコアをなすものであり、毎年可能な限りコミュニティにおいてパートナー団体やボランティアとともに植樹を行っている。植樹活動は苗場を造成した3つのコミュニティで実施した。カヤン村での植樹は201881819日に実施され、12人の日本人学生がカヤン村の住民の植樹をサポートした。学生たちはサミュエル・サヨグ氏の土地で植樹を行った。アンバサダー村では、2018811日に日本人ボランティア学生と組織メンバー6人で植樹を行った。2019622日にも5人の日本人ボランティアと4人の組織メンバー、CGN3人のスタッフで植樹を行った。バリリ村では、15人の警察官がCGNが寄付した苗木の植樹をおこなった。

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# by cordillera-green | 2019-10-07 22:02 | 植林/アグロフォレストリー
2019年 07月 29日

演劇ワークショップでアジアの農村をつなぐ⑧ バナウエ国立高校

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バナウエ国立高校なんていうから、バナウエの真ん中にある高校かと思ったら、マヨヤオに向かう道のマヨヤオに入る手前すぐのところ、ドゥクリガンDucliganというところにあるのが、この高校です。マヨヤオ代表トゥラエド高校とは目と鼻の先。でも、行政区域はバナウエ町とマヨヤオ町と分かれています。スネークリバーの愛称で蛇のように蛇行する川の景観とその川沿いの棚田で知られているのがドゥクリガンです。その川の蛇行具合がとてもよく背景幕に描かれていました。
高校は、これでもかというくらい石段を下りて行ったところにあって、帰るのが憂鬱になります。でも、この道を生徒たちは毎朝晩、元気に通っているのだあなあとおもったら弱音を吐いてはいられません。
携帯電話も電波が通じないという、今の世の中では「天国」みたいなところで、ゆえに連絡はうまくつかない苦労もプロジェクト中にはありました。
それゆえにか、モノローグ原稿の提出もなく、残念ながらこのブログでモノローグを記録として残せませんでした。
担当だったヒルダ先生は、ドゥクリガンの出身。このあたりのことは何でも知っている重鎮です。学校ではフィリピン語の先生で、演劇担当の先生は別にいたのだそうですが、たまたまラガウェの教育省に行ったときにこのプロジェクトの話を聞いて「私を参加させて!」とむりやりリストに入れてもらったそうです。さすがに文系の先生。文章を書くのはお得意いでさらりとこなし、課題も誰よりも完璧なのを先に出してくれました。
たぶん地域につながる民話や物語もたくさん知っているはず(人柱の話怖かったあ)。そんなお話もいつか聞いてみたいです。
(ああでもモノローグが。。。)

というわけで、ビデオ映像と写真での報告となります。





# by cordillera-green | 2019-07-29 19:09 | 環境教育
2019年 07月 29日

演劇ワークショップでアジアの農村をつなぐ モノローグ⑦(ラガウェ国立高校エクステンション)

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イフガオ州でこのプロジェクトを始めようとしたときに、イフガオ州の教育省との打ち合わせをし、協力を得ることがまず第一ステップでした。イフガオ州の州都ラガウェ町には立派な教育省の建物があるのですが、なんと休日なしで、だれでも入れるオープンなスペースになっています。朝10時と午後3時には、軽快な音楽がスピーカーから流れ、職員たちはそれに合わせておしりを振ってダンスをすることになっているそうです。

ああ、なんて明るい教育省! 働いている人のほとんどが女性で、イフガオの手織り布で仕立てた鮮やかな制服を誇らしげに身に着け、意気揚々と働いていました。


その敷地の一角に、先住民族教育センターというのがあって、イフガオ独自の伝統文化を取り入れた教育教材の制作とモジュールづくりをしています。

なんと教科書の対象は幼稚園向けから小学校6年生までで、学年ごとにレベルに合わせて作られています。別冊で楽譜付きのイフガオの伝統の歌の本まであります。

制作スタッフは、すでに退職したイフガオ州の元教員たち。骨身を惜しまず、この小さな先住民族センターに集まっては、教科書のドラフトに相談を繰り返しながら赤字を入れていました。さすが、多様性の国、フィリピンです。先住民族や民族語教育を教育に取り入れようという動きは以前からありましたが、州の教育省を上げてここまでやっているのはきっとイフガオだけではないでしょうか?


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私たちのこの演劇プロジェクトのテーマは「楽しい農業」なのです、と話したら、それはもうイフガオ州教育省が推し進めている先住民教育とぴったり合致するということで、イフガオ州教育省は強力なるサポートを約束してくれました。で、当初の予定は一つか二つか多くても3つの学校を対象にしようと思っていたのですが、イフガオ教育省は、もっと対象校を増やしてくれと言います。


イフガオの棚田といえば、まずはバナウエをだれもが思い浮かべます。ユネスコの世界遺産として有名ですから。でも世界遺産の棚田があるのは実はバナウェだけではないのです。キアンガン、マヨヤオ、そしてフンドアン。この4つの町の一部の棚田が世界遺産になっています。一方、このプロジェクトは農業に焦点を絞った「世界農業遺産」の指定地を対象にしています。国連の食糧農業機関(Agriculture Organization of the United Nations (FAO)) が指定する世界農業遺産では、イフガオ州全域の棚田がその対象です。


教育省の熱心なおばさま方は言います

「なんで、なにもかもユネスコ世界遺産の地域だけなの? 不公平でしょう? ここラガウエにだって棚田はあるのよ! 農家の苦労はおんなじよ!」

おっしゃる通りです。そして、教育はだれにでも公平に行き渡るべきです!

というわけで、プロジェクト対象の高校は、普段はあまり脚光を浴びていない(棚田狙いのお客さんが訪れない、ユネスコの棚田景観を守るための事業地でない)、山の中の交通の便の悪い学校、分校、新設校などになったわけです。


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このラガウェ国立高校も、バナウエに向かうクドックCudogという地域に新しくできた高校です。

今回の参加校の中ではいちばん町に近い学校といえるでしょう。

先生もいまのところ寄せ集め的な感じもしなくもない。この学校からは3人も個性的な先生が参加してくれましたが、3人3様でした。ジョナリン先生はヌエバビスカヤ州出身でイフガオの人と結婚して引っ越してきましたが、伝統文化にはまだあまり詳しくありません。イフガオの言葉もわからない。デニス先生はアシプロというキアンガンのお隣にあるカラングーヤ語を話す地域の出身で民族芸能の継承にも熱心。一番若い新米先生のケニーも育ったのはマニラで、あまりイフガオの文化に関心がないみたい。


そんな3人のでこぼこ教員チームは、きっと明らかに生徒たちのパワーに気圧されながら演劇制作をしたのだと思います。

古い農業サイクルの話は聞き書き取材はしたものの、なにひとつ見たことないのがラガウエの町の生徒たちです。

ラガウエの生徒にとっては、ほかの地域に鉱山開発で出稼ぎに行ったり、マニラや海外に働きに行ったりというのがとても身近かなところにあるのだろうなと感じました。また、たぶん山奥ではいまだタブーである「土地を手放す(売る)」という選択が、この辺りでは当たり前になってきているのを感じました。稲作に関しても、商業米の品種が広がり、機械化もかなり進んでいます。若者たちの農業離れも著しいことでしょう。

これからのイフガオの若者たちが解決していかなくてはいけない問題が、ラガウエの生徒達の演劇にはいろいろ盛り込まれていて、もっと深く掘り下げる機会を持ちたいと思いました。どっぷりイフガオではないこの3人の連係プレーだからできた演劇制作だったと思います。





ベン・バリノン

Ben Balinon

私はベン、92歳です。5人兄弟の家族でした。私の父は、伝統にならって家の土地を長男に受け渡しました。生きていくことがとても困難だったため、私は新しい職と土地見つけるために別の場所に移り住みました。下の兄弟たちを支えるために、鉱夫として働きました。その後、故郷に帰ることとし、妻と出会い、家族を持つことにしました。私たちは8人の子どもを授かりましたが、残念なことに、神様はそのうちの2人をお連れになりました。


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アニータ・カプヨ

Anita Capuyo

 私は80歳のアニータ・カプヨです。ジョージという夫がいます。私は四番目の子供です。私たちは小さな田んぼを持っていましたが、父が2番目の子供に譲り、彼は土地を売ってしまいました。田んぼでの作業に、私はすでに多くの問題を感じていました。水不足、鳥やミミズ、そしてネズミによる被害などです。なので、 私は農薬、殺虫剤、除草剤を利用していました。


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ジュリアン・マグリブ

Julian Manglib

私は72歳のジュリアンです。教師を定年退職しました。私の妻はエミリア・マングリブといいます。私たちの年代のものが、田んぼ仕事をしていた時代にはこんなプロセスを踏んで農作業は行われていたものです。

 

1.カヒリムンKahi-Limun
収穫後2ヶ月以上たち、あるいは田んぼの稲わらが枯れ腐っきたら、男性はボロ(なた)、ガウドゥと呼ばれる鋤、デュロンを使用して代かきをする。

 

2.カヒホプナクKahihopnak
農民たちは田んぼの一角を整備し、泥で囲み、泥を平らに整えます。これをホプナカンといいます。

 

3.カヒロバ/カヒルポンKahiloba/kahilupong

女性たちのグループ「ムンーウブmun-uubu」が、こちらの田んぼ、あちらの田んぼと回り、あぜ道(バノンbanong)を整えます。使う道具は、バランヤbalangya’, “オタックotak” そして “ダハグdahagの3つです。ほかの者たちは「ロバloba」よ呼ばれる棚田の壁を手直しし、その傍ら、雑草や薬草、、その他の田んぼに入れて堆肥になるような柔らかい植物を刈ります。

 

4.カヒバノンKahibanong

ヒノンナクhinopnakと呼ばれる苗がが育つの待つ間、農家は田んぼの泥を繰り返し鋤で掘り起こし土を柔らかく,もっとどろどろにします。さらに、それを田んぼの崩れているところに置き修復します。

5.カヒボジェKahiboge
このシーズンになると、優しくヒノンナクhinopnakについた泥を洗い流し、それを束ねてそれぞれが田植えをする田んぼに運んぶのです。

6.カヒカゴトKahikagoko
田んぼ仕事に行くのはまたも女性たちです。注意深く田に入り、水草を抜き、足でそれらを泥に埋め、それらを腐れせ堆肥として稲の生育を助けるように仕向けます。

 

7.カヒトゥルオKahitul-o

収穫期のことを言います。

 

注)今の農家は以下を使っています

A. ガムランに代わって稲刈り鎌

B. 耕す土を細かくし柔らかくするためのロータ

C.籾を茎からはずすための脱穀機

D. 杵臼に代わる精米機


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ペドロ・マアワ

Pedro Maawa

私は72歳のペドロ・マアワです。私たちには息子2人と娘2人の4人の子供がいます。私が子供のころ両親が田んぼ仕事をしていた時のことを思い出しますと

子どもたちは一生懸命両親を手伝おうとしていました。田んぼでは、ミミズ、ゴールデンコホール(外来種のタニシ)、水不足、鳥などの被害がとても厄介でした。先祖たちはこれらを解決するためにチャントや“バキbaki”を唱えたものでした。


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アグネス・ガドイコン

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私は58歳のアグネス・ガドイコンです。8人兄弟の最初の子供です。

最初の子供ということで、伝統風習に従い、父は私にすべての土地をくれました。夫ローレンス・ガドイコンとの間には、4人の子どもがいます。フクボン村で教鞭をとっている子を除いた3人は、すでに結婚しました。農家の生活はたいへん厳しいです。生産量を上げるのには、勤勉であることのみです。田んぼでは、ゴールデンコホール(外来種のタニシ)、キウィットkiwit、生育の悪いコメ、稲を腐らせる“taliktik”という問題がありました。


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*****

  

Ben Balinon

I’m Ben Balinon , I am 92 years of age. Weare five siblings in the family. My father gave our filed to my eldest sibling that is how it supposedly since it was a tradition. Because of hardship of life, I decided to move to another place to look for a work that I can handle.I worked as a miner to help my younger siblings. I planned to go back to the place where I belong and I saw my wife then planned to settle, together with my family. We have eight children, unfortunately, God get back the two of them.



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Anita Capuyo

I’m Anita Capuyo, 80 years old. I have a husband named George Capuyo. I am the fourth child in our family. We have small field that my father gave the second child then he sold it. Within the span of time working in the field, I already witnessed lot of problems in the rice fields. Namely: water shortage, birds, earthworms, and rats.

With all these problems encountered I made use of pesticides, insecticides and weeding.


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Julian Manglib

I’m Julian Manglib, 72 years of age and aretired teacher. I have my wife named Emilia Manglib. During my generation, the following are the chronological processes or working season on the field that I witnessed in working in the fields.

  

1.Kahi-Limun- done during two or more months after harvest time, or when the stalks are withering and rotting. The men used bolos, “gaud” or spade and “dulong”
2.Kahihopnak- The farmers prepare the pun “hopnakan”, a part of the rice field cleaned very well, encircled with mud and levelled.
3.Kahiloba/kahilupong- groups of women “mun-uubu” go from one rice field to another cleaning the “banong” rice paddies. Tools can be use: ‘balangya’, “otak”and “dahag”. Others cleaned on the “loba’ hill wall of the rice field wherein they chop grasses, herbs and other soft plant to be placed on the rice filed toadd as natural fertilizer。

4.Kahibanong-While farmers are waiting for the hinopnak to grow, famers repeatedly step on the mud by pushing it with their spades to make it bit soft and sticky. Then the put them on the damaged or eroded part of the rice field.
5.Kahiboge-This season, farmers gently pull the hinopnak and wash the mud. Then they bundled and carried to their field to plant.

6. Kahikagoko-the women go to work again, carefully going to the rice plant and pulling water weeds and stepping on them into the mud to be rotten and helpfertilize the growing plants.
7. Kahitul-o This is the harvesting time.

 

Note) Farmers now use:

A. sickle(gapas) in place of gumulang

B. Rotor to pulverize and soften plowed soil

C. Portable Thresher to separate the rice grain from the rice stem

D. We have now rice mills in place of mortar and pestle



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Pedro Maawa

I’m Pedro Maawa, 72 years old. We have four children, two boys and two girls. What I observed during our time when our parents are working in the field, their children are trying their best to help their parents. The problems that we encountered were worms, golden “cohol”,shortage of water and birds. Forefathers before tried to perform chant or “baki”to eliminate these problems in the field.


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Agnes Gad-icon

I’m Agnes Gad-icon 58 years old, I am the eldest among the eight children of my parents. Since I am the eldest, my father gave me the family field as accordance to the culture. We have four children in my own family with my husband Lawrence Gad-icon. All of our children got married except one who is teaching in Jucbong. A life of a farmer is too hard.All you need is to be diligent to become productive. In farming, there are problems like: golden “cohol”, “kiwit”, plants that don’t grow, “taliktik” that rotten the rice plants.


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# by cordillera-green | 2019-07-29 17:09 | 環境教育
2019年 07月 25日

演劇ワークショップでアジアの農村をつなぐ モノローグ⑥(ハピッド国立高校-ラムット)

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ハピッド国立高校のあるラムットは、低地の穀倉地ヌエバ・ビスカヤ州からラムット川を渡ってイフガオ州に入って最初の町です。山は少なく、険しい山と棚田のイメージのイフガオの中では異質な地理条件です。農家の人たちの生計手段は、トウモロコシ栽培、家畜の放牧、ティラピアの養殖などで、稲作は少ないようです。


ハピッド国立高校でこのプロジェクトを担当したベネリンは、美しい棚田の町マヨヤオのバランバン村の出身です。CGNが2009-2010年くらいにバランバン村の中学校で演劇のワークショップをやった時に、ベネリンの弟のヘイゾンが参加し、最年少ながら素晴らしい体の動きでファシリテイターとスタッフを魅了しました。2011年にCGNがさまざまな先住民族の高校生たちの混成チームで日本に演劇公演と環境教育ワークショップのために行ったときに、最年少で選抜されて参加したのがヘイゾンでした。

兄弟が多く貧しい農家の家庭の出身だったため、CGNは大学に行きたいというヘイゾンに奨学金サポートを始めました。姉のベネリンも優秀で向学心にあふれている教員志望ということで、CGNは姉のベネリンの大学の授業料のサポートもしました。ベネリンは無事教員試験をパスし、本当は故郷のマヨヤオで教員になりたかったそうですが、空きがあったラムットのハピッド高校で夢の高校教員生活を始めています。


イフガオ州教育省にこの演劇プロジェクト受益者となる高校を上げてもらったときに、実はハピッド高校は入っていませんでした。同じイフガオといっても大きく3つの言語があり、とくにアヤガン語を英語に訳してファシリテイターに伝えてくれる人がワークショップでは必要と思い、CGN奨学生だったベネリンに通訳できてもらったのですが、ワークショップ会場でベネリンはあっという間に通訳より演ずるほうに夢中になり、いつの間にか参加者の中心になっていました。

2018年10月の上田市の街中演劇祭の参加メンバーにも選ばれて、弟に次いで日本訪問も果たしました。夢に向かってベストを尽くし、確実に一歩ずつ歩んでいく誠実な姿勢は、イフガオでのワークショップから上田の公演での演技まで、すべてのステップで彼女の個性として輝いていました。










ジェリー・ブワイ

Jerry Buway

私はジェリー・ブワイです。農家であると同時に、牧草地で牛を飼育しています。牛が逃げていないことを確認するために、日に3回フェンスを確認しなければなりません。

私たち経験した問題は、牛が牧草地から脱走し、他の人の作物を荒らしたことです。そうなったら、私たちは牛が荒らしたものを弁償しなくてはならないのです、ほかの牧草地では牛がいなくなってしまい、どこにも見つからなかったということもありました。



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ロシータ・ブラユンガン

Rosita Blayungan

 私はロシータ・ブラユンガンです。いま59歳ですが29歳の頃より「バンカグ」と呼ばれるトウモロコシ栽培をしています。幼少期の頃から親にくっついて畑仕事をしていました。結婚してからもずっと農業で生計を立てています。

 私たちが実践している伝統的な文化に“ウブフUbfu”というものがあります。ウブフとは、人々がお互いに植え付けや収穫といった畑仕事をお金という報酬なしで助け合うというものです。誰かが手伝ってくれたらそのお返しにまた手伝うという伝統的な文化です。

 トウモロコシ栽培は、リスクのあるギャンブルのような仕事です。儲かるか損をするかわかりません。長い間の農業経験から、植え付け、収穫、マーケティングそれぞれの分野で問題を経験してきました。

 問題の一つは、何週間も雨が降らないこと、そしてネズミが作物を食べてしまうことで、収穫が減ることです。収穫が少量だと利益が減り、植え付けのために買い入れた借金返済が滞ります。台風が来た時は、収穫前のトウモロコシが破壊されました。このような出来事があっても私たちの家族は何とか生き延び、子どもを学校に送ることができています。どんなにたいへんでも私たちにはトウモロコシ栽培が生計手段なので、植え続けていくしかないのです。

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ベン・ブウェイ

Ben Buway

私はベン・ブウェイです。現在は45歳で30年間、稲作と「カイギン」や「マンウマ」と呼ばれる焼き畑に従事してきました。

私の長女は豆や白菜などの野菜栽培をしています。

稲作はたいへんが、実際のところは私たちの主食供給してくれています。

一般的な問題の一つはティカグと呼ばれる干ばつの被害に遭うことです。雨が降るのをただ待つしかないのです。

なぜなら、水を供給するための灌漑施設がないからです。

そんなわけで、収穫は少ししかありませんでした。

時々雨が降らない時は、稲ではなくバナナを植えたり、日常生活に必要なものを得るために、焼き畑をします。

もう1つの問題は私たちの稲に被害を及ぼす「ファヒクリ」というタニシやキウィット、その他の昆虫などです。

以前は有機肥料を使っていましたが、今では「アボノ=化学肥料」と農薬を使うようになっています。

焼き畑をしている私たちのもとに、村の代表と農業省、環境資源省のスタッフがやってきて、「アボノ=化学肥料」や農具、苗木を支給してくれたことがありました。収穫が終わった後には、植樹をするようにということでした。


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Jerry Buway

I am Jerry Buway, a farmer and at the sametime, I am raising cattle or cow in our pasture. I have to visit and check the fences three times in a day to make sure that our cattle did not escape.

The problems we had experienced was when our cattle went out the pasture; and destroyed the plants of other people. Sowe are responsible to change anything that was destroyed by our cattle. In some pasture area, cattles just disappear and nowhere to be found.


Rosita Blayungan

I AM Rosita Bulayungan, 59 years old and I’ve been farming “bankag” or planting corn for 29 years, since childhood, I used to go with my parents in the farm working until now that I’m married we still do farming as our source of income.

One tradition that we practice is the “ubfu”where in people will come to help in the farm to plant and harvest without wage. In return, we will also go and help them when they will perform “ubfu”.

Planting corn is like gambling that you have to take risk. It’s either you gain or you lose. With the years of experience in farming there were common issues and problems we encountered during the planting, harvesting and selling.

One problem was drought weeks without rain will wither the plant and mice eat the plants and the result is little harvest.In little harvest means a few to sell and not enough money to pay debt that was borrowed as capital in planting. When there were typhoons, it destroys the corns which are not yet ready for harvesting. With all these incidents, my family was able to survive and able to send our children to school and no matter how difficult, we will still plant corn for it is the source of our livelihood.


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Ben Buway

I am Ben Buway, 45 years old and almost 30 years in doing rice farming including “kaingin” or called “man uma”.

My eldest daughter is into gardening like planting beans, petchay and others.

Planting rice is hard but it actually sustains our basic needs.

One common problem I encountered is drought or what we call “tikag”, because I’ll just wait for the rain.

Moreover, there is no irrigation to supply us water.

Therefore, we have a few harvests.

Sometimes when there is no rain, I will not plant rice but banana or we go for kaingin to sustain our daily needs.

Another problem is the snails “fahikur”, “kiwit”and other insects which destroy our rice plants.

We had been using organic fertilizer before but at present we are using “abono”and chemical spray.

There was a time when our “barabgay” Chairman and staff from DOA and DENR came to distribute “abono”, tools used in farming and even seedlings for us who do kaingin to plant after the harvest or what we called “tree planting”.


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# by cordillera-green | 2019-07-25 23:13 | 環境教育