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2021年 03月 01日

フィリピン・ベンゲット州における鉱山開発地域の森林再生事業〈中間報告〉

フィリピン・ベンゲット州における鉱山開発地域の森林再生事業
「土地保全のためのシステム:トゥバ郡キャンプ3村における
持続可能なコーヒーをベースとしたアグロフォレストリーの推進」
中間報告(2021年1月)

このプロジェクトは京都の環境NGO「マナラボー環境と平和の学びデザイン」が、パートナーである私たちフィリピンの環境NGO「Cordillera Green Network」から、鉱山開発の影響で荒廃している地域の状況とそこで植樹によって環境再生を図りたいと行動を開始している住民の話を聞いて共感し企画してくれたものです。国土緑化推進機構「緑の募金」の助成を受けて、2020年7月から開始し現在(2021年1月)も実施中です。
当初、マナラボのスタッフは、こちら植樹事業地に赴き、植樹活動、土地利用や環境状況を調査する予定でした。しかし、3月にコロナ感染拡大で移動制限が敷かれたまま、2021年に入っても渡航制限は解かれていません。
事業地であるここフィリピンの移動制限は日本より厳しく、マナラボのパートナー団体である私たちも昨年8月までは植樹地への訪問がかなり厳しい状況で、苗木の運搬も当初の予定より遅らせざるを得ませんでした。しかし、植樹地の住民たちのモチベーションはたいへん高く、苦労して移動許可をとって現地を訪れた森林官の指導により、配布された苗木の植樹作業を問題なく終了させてくれました。本プロジェクトで植樹予定の残りの苗木に関しては、植樹に適する雨季をまって(5月)再開する予定です。

以下、当事業を担当している森林官のマイラ・セセットからの報告です。

*****

持続可能なアグロフォレストリーは、森林被覆を維持し、さまざまな森林土地の転換による森林の劣化を防ぐためのツールであることが証明されています。コーヒーをベースとしたアグロフォレストリー・システムを取り入れることで、農業と環境分野に大きな利益をもたらすと同時に、コミュニティに経済的な利益をもたらすことができます。
本プロジェクトの事業地であるベンゲット州トゥバ郡のキャンプ3とキャンプ1では、3種類の土地利用があります。林地、鉱物採掘場、農地であり、地域社会と地方自治体は資源の過度な搾取をしないようにバランスのとれた管理をしなければなりません。

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トゥバを拠点とするマスター・オブ・オーガニック熟練農業者協会 (Master of Organic Skilled Farmers Association Inc. =MOSFAI)は、環境に優しい有機農業を推進するために、トゥバで稼働しているフェリックス鉱山採掘会社によって組織された組織です。この組織の目的は、化学肥料や農薬を使わずに、自然の恵みと資源を利用した持続可能な有機農業を行うことです。MOSFAIのメンバーは、有機農業を実践し、一部のメンバーはコーヒー栽培を始めすでに始めています。また、国家緑化プロジェクト(National Regreening Project)(環境自然資源省)の森林再生活動をサポートして、植林活動も行ってきました。環境自然資源省からは国家緑化プロジェクトが終了したのちも、森林保全を継続するように指導されています。地域住民は森林再生と同時に持続可能な栽培方法でコーヒー農園を持ちたいという関心があり、MOSFAIの役員たちによって、コーヒーをベースとしたアグロフォレストリープロジェクトが バギオ市をベースとする環境NGO「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)」に提案されました。CGNと京都の環境NGO「マナラボー環境と平和の学びデザイン」は協力し合い、緑の募金一般公募事業として助成を受け、2020年7月にスタートしました。

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〈事業成果〉
 コロナ(COVID-19)感染拡大を防ぐコミュニティのセキュリティ対策で、植樹予定地であるトゥバ町では2020年3月半ばから外出制限が実施され、このプロジェクトの活動は大きく影響を受けました。CGNの森林官チームの調整により、トゥバ町自治体農政課、ベンゲット州トゥバ郡キャンプ3バランガイ、キャンプ1バランガイ、そしてMOSFI メンバーの協力で、2021年1月までに実施できたプロジェクトの活動は以下です。

1.コンサルテーション&オリエンテーション
 2020 年 7 月 8 日、移動制限下でのプロジェクト実施についての意見交換のために、CGNの プロジェクトコーディネーターである森林官マイラ・セセットと MOSFAI 代表オスムンド・サベロ氏による打ち合わせが行われました。プロジェクトの目的、活動内容、1年間のプロジェクトのスキーム、各チームの責任などについて協議しました。実施計画・内容を見て検討した結果、サベロ氏は、感染拡大で移動制限、集会の禁止などがあり困難を伴うことを理解したうえで、プロジェクトを推進したいと表明しました。
 そして、2020年8月19日、CGNの担当森林官セセット氏はMOSFAIメンバー3名(植樹予定地の二つの集落それぞれの代表者)を対象に、本プロジェクトについてのオリエンテーションを再実施し、両集落とともにコミュニティのコロナ感染対策を考慮したプロジェクトの実施方法を計画しました。

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2.植樹予定地のアセスメント
 2020年8月19日・22日に、植林・再植林地として提案されている植樹予定地において、コーヒーと森林樹種の苗木の適性と本数を確定するための調査を実施しました。

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3.苗木の調達・運搬
植樹のために調達した苗木は、アラビカ・コーヒー4,183本、カリアンドラ2,000本、アルヌス1,000本です。 コーヒーの苗木は、トゥブライ郡コロス集落の苗場から2,183本(2020年8月14日・22日)、トゥバ郡キャンプ3バランガイ、トレ集落の苗場から2,000本を調達しました。森林樹種の苗木については、カリエンドラはMOSFAIの苗場で調達し、アルヌスはトゥバ郡キャンプ1,リガイ Ligay, バスティアンBastianにあるデングワテンDengwaten氏のプライベートの苗場で購入しました。

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4.植樹活動
 CGNの担当森林官が現地に行くのが困難な中で、オリエンテーションで合意された通り、MOSFAI代表とディンワタン氏は、苗木の配布と植樹活動について、たいへんよくメンバーに指導し助言をしてくれました。
 植樹活動は、MOSFAIのメンバーとコミュニティ内のいくつかのグループによって、2020年8月から10月にかけて実施されました。アラビカ・コーヒーとアルヌスの苗木については、受益者の私有地に、カリエンドラの苗木については、コミュニティ内のアラバンと呼ばれる荒廃した地域に、共有林再生を目的として植樹しました。コミュニティのプロトコルを遵守するために、代表はスケジュールを立て、1日あたり植樹をする人を8人に限定したグループを作りました。彼らは15日連続で植樹をし、2000本の苗木を植えることができました。

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受益者ごとの植樹を終えた苗木の数

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 受益者であるMOFSAIメンバーの持続可能なコーヒーをベースとしたアグロフォレストリー農園作りに対する協力と関心により、今回の植樹シーズンには7,183本の苗木を植樹することができ、メンバーは今後も予定された本数を達成するために植樹を続けていくという強い意欲があります。


5.植栽されたコーヒーと森林樹種のモニタリング

 2020年12月23日と2021年1月11日に、苗木が適切な場所にきちんと植えられ、順調に生育しているか確認するため、CGNの担当森林官がMOSFAIの代表と受益者と一緒に、ベンゲット州トゥバ郡キャンプ1バランガイのバスティアン/リゲイ集落と、キャンプ3バランガイのトーレ集落に新設・拡張されたコーヒー農園のモニタリングを行いました。

モニタリングの結果は、植えられた苗木のほとんどがすでにその環境に定着しており、新葉や新梢が発達し、逞しく成長していることが確認されました。植樹地には、コーヒーの生育を助ける十分な日陰の木(シェイドツリー)があります。アルヌス(ハンノキ属)、ハウイリ(Ficus septica=フィカス オオバイヌビワ)、マラ・ティビグ(Ficus congesta イチジク属)、トゥアイ(Bischofia javanica=赤木)などの在来の木が豊富に生育しており、環境と土壌に十分な水分を与え、乾季の間の苗木の成長を助けることができています。その他の植林地のモニタリングは、CGNの森林官チームによって今後も継続的に行われます。


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〈今後の活動予定〉


●植樹活動

1.当事業で植樹を予定している 残りの苗木(コーヒー3,817本、樹木2,033本)の運搬・配布は、2021年5月~6月第1週に行います。

2. 雨季入り(2021年5月中旬~6月)に合わせて植樹活動を継続します。農家は植樹予定地の準備に十分な時間がもてます。


●講習会開催

コロナ感染状況とそれによる規制によりますが、講習会は、バランガイ(村)、地方自治体との調整のもと、2021年3月~4月に決行する予定です。

もし、感染拡大によりセミナーの実施の許可が出なかった場合は、講習会のの講師のよるテーマについてのレクチャーをビデオ収録し、受益者に配布する予定です。













# by cordillera-green | 2021-03-01 20:40 | 植林/アグロフォレストリー
2021年 02月 28日

イフガオ州ハパオ村ナガワ集落の堤防修復プロジェクト〈中間報告〉


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コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)は、2020年11月に北ルソンを襲った台風22号(フィリピン名ユリシス)の被災地サポートのために、バギオ市のエコショップ「エコマート」とともに被災地支援の寄付の募集を行いました。この台風の被害は、ルソン北部の低地であるカガヤン州やイサベラ州で大きく、ダムの放流による洪水で大規模な洪水が起き、多くの人が家や家財道具を失いました。
CGNの活動地域であるコーディリエラ山岳地方の6州では、イフガオ州で多くの土砂崩落があり、死者も出ているという情報がありました。CGNが2018年に、世界遺産の棚田で行った演劇を活用した環境教育プロジェクト「演劇ワークショップでアジアの農村をつなぐ」でお世話になったイフガオの人たちのことが心配でした。
イフガオでのプロジェクトでコーディネイターを務めてくれているキアンガン在住のフェイスにメッセージを送ったら、土砂崩れで彼女のおじさんを含む12名が、バナウエ町で生き埋めになって行方不明、捜査が続いていると言います。こういった災害の場合、山奥に行けば行くほど、被害が大きく、知れにもかかわらず被害状況の報道がされなかったり、SNSで情報が流れたりしない傾向があります。山奥の村の状況がますます気がかりになりました。

ここ数年、イフガオに頻繁に行く機会に恵まれていました。演劇ワークショップ・プロジェクトの流れで、イフガオ州の高校の先生など6人と長野県上田市で演劇公演をしたり、大分県安心院高校の先生と生徒さんをイフガオにご案内して、棚田で収穫体験をしたり高校でプレゼンテーションをしたりもしました。2019年には、NHKの第二次世界大戦中の在フィリピンの日本人民間人とテーマとしたドキュメンタリーのリサーチや撮影コーディネイトで、イフガオのずいぶん山奥まで足を延ばしました。愛知県立大学のサークル「RUFF」の学生さんたちとも、スタディツアーでイフガオの棚田を歩いたり、学校で交流プログラムを企画したりもしました。
どこに行っても、だれといっても、いつでもイフガオの人たちに温かく迎え入れられ、心づくしの歓待を受けました。



↑ジョセフさんから送られてきた洪水のビデオ

山奥の人たちもこのコロナでの移動制限で前にもまして頻繁に使っているフェイスブックのメッセンジャーで、安否を確認するメッセージを送ってみました。みんな、土砂崩れや、土砂崩れで亡くなった人(!)などの写真をメッセンジャーで続々と送ってきてくれました。ツアーガイドのジョセフさんがフンドゥアン町のハパオ村から送ってくれたのは、すごい勢いで氾濫するハパオ川の写真とビデオでした。川の堤防の壊れていた部分が台風による大雨でさらに拡大し、浸水してきたといいます。
「でも大丈夫!私たちは生きてます!」。
同時に「いつくるかもわからない次の台風が心配」とも話してくれました。ネットで探したという洪水で棚田が流されている、治水堤防ができる前の古い白黒写真も送られてきました。

そんな話を、マニラで不動産業や飲食業等を営むほのぼのグループの代表・屋良朝彦氏(沖縄出身)に話したところ、修復のサポートしたいというお言葉をいただきました。
「コロナ禍で経済が停滞しているフィリピン、そしてマニラですが、こんな時こそ、新しいビジネスにチャレンジしたいと思っているのです。お金もかかるときだけれども、自分のビジネスのためだけに猛進するのでなく、同時にこの国と人のためになる何かをしたい」とのこと。
誰もが心の余裕を失っているときだというのに、この申し出には驚きました。イフガオやハパオに行ったこともなければ、そこの人に会ったこともないのにです。
さっそくジョセフさんに、そのことを伝えると、私以上に驚いていました。それはそうですよね。

善は急げ!

ジョセフさんは、集落の人、バランガイの役員、フンドゥアン町長などに会いに行き、町長の理解とアドバイスで、貴重な思いのこもった個人からのご寄付が、できるだけコミュニティの人のために直接使われるように、いろいろな手続き(資材の入札など)や手数料などがかからないように、ジョセフさんの責任でナガワ集落の人とCGNの間で工事契約を結び、できるだけ早くに工事を開始することになりました。あっという間の展開です。年明けから工事は開始され、2月半ばで折り返し地点に来ています。
私のほうも、マニラの屋良氏からのご寄付をサポートする形で、日本の知り合いに寄付の呼びかけを始めました。ハパオでのワークショップに関わってくれた方や、イフガオの文化を調査している研究者の方、お父さんを第二次世界大戦中にフィリピンで亡くされた遺族の方などから、心温まる寄付をいただきました。
どうもありがとうございました。

プロジェクトの進捗状況はフェイスブックページで随時情報を更新しています。

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↑2018年ツアーガイド中のジョセフさん

以下にジョセフさんから送られてきた中間報告の翻訳を紹介します。
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●ナガワ集落の成り立ちについて

昔、ナプラワン山から流れる川がありました。この川は二つに分岐しました。その一つが現在のハパオ・バランガイに流れています。そしてもう片方の川は干上がってしまいました。私の祖先はその乾燥した地域に田んぼを作りました。作った田んぼは二つの川の間にあったことから、中央に位置することを意味する「ナガワ」と名付けられました。
その田んぼを開拓するのに、私の祖父ヨグヨグが関わりました。田んぼを作っている最中に第二次世界大戦が始まりました。私たちの祖父母は生き残るために家族と一緒に山に避難しました。私の祖父は日本兵に殺害されて亡くなりました。彼の遺体は現在も見つかっていません。戦後、祖母のマリンネは子供たちとヨグヨグが作った田んぼを引継ぎ、生活を送っています。
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↑ナガワ集落の昔の様子

1996年に私の両親は、その田んぼの近くに小さな家を建てました。私の家族はこの地域に移り住んだ二番目の家族でした。それから、次々に人々がこの地域を訪れ、家を建てました。私は2001年に結婚したとき、家族と住む家を建てるために両親から土地をもらいました。2004年、日本政府は、イフガオ州フンドゥアン町ハパオ・バランガイでの洪水を防ぐために、フンドゥアン町の自治体に700万ペソを寄付しました。
それまではたびたび洪水が起こっては、田んぼに被害を及ぼしていました。この川の治水工事により、洪水や川の濁流の被害がなくなり、地域の安心・安全を確保しました。しかし、大雨、台風、地震などの自然災害により、建設された川の堤防が劣化し、役に立たなくなりつつありました。
昨年、2020年11月14日、「ユリシース」と名付けられた台風(22号)により土石流の被害が起き、堤防が破壊されました。それは、私たちのコミュニティを守ってくれていた堤防でした。この20年近く、唯一私たちを自然災害から守ってくれていた堤防が破壊され、コミュニティに水が流れてきたことにより、いくつかの家や、これまで育てていた農作物や養魚池なども流されました。子育てをしながら生活をしている私たちの間には恐怖が広がっていました。

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↑ナガワ集落のプロジェクトサイト

台風の後、さらなる台風が再び来るのではないかと恐れながら、また立ち上がろうとしました。 2020年11月29日、ツアーガイドの仕事で知り合った反町さんから、「大丈夫でしょうか」とメールがきました。その言葉を彼女がかけてくれて、私は勇気づけられました。私は、地域の写真と、川の堤防の崩壊による村の被害の写真、今後被害を受けそうな場所の写真を何枚か送りました。彼女は私に、破壊された堤防の再建に資金を提供する寄付者を探してくれるというメッセージを送ってくれました。コロナ禍と自然災害の影響により、今後の復興の確信が持てない暮らしの中に温かい日差しが差し込んだような気持ちになりました。
私は神様が私たちを守ってくださるという感謝の気持ちは保ち続けていました。
私たちの祈りは2020年12月20日に報われました。反町さんから、マニラにいる彼女の友人が堤防修復に資金を提供してくれるというメッセージが届きました。その時の感謝の気持ちは言葉で言い表せないほどで、胸がいっぱいになりました。私はそのメッセージを何度も何度も読み返しました。私たちの事をこんなに心配してくれた人達がいたという事実に、涙が止まりませんでした。私は村の皆に話しました。コロナ禍と台風による被害の影響で、それまで悲しみに包まれていた皆の顔に喜びと笑顔が戻りました。
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↑堤防修復工事中の様子

ハパオ・バランガイのナガワ集落は、被害を受けた川の堤防の再建築ための資金を調達してくださった反町さんに心から感謝しています。
寄付者の皆様には、個人的には存じ上げていませんが、この堤防の再建に向けた資金提供を通じて、無私無欲に祝福を分かち合ってくださった寛大さに、こころより感謝します。私たちは村を想ってくださるあなた方の心に感謝しています。いつの日か堤防が再建築されたら、ぜひお会いし、平和な村を一緒に歩くことを夢見ております。

コーディリェラ・グリーン・ネットワーク(CGN)には、このプロジェクトの架け橋になって下さり、感謝します。
地方自治体、寄付者、そしてCGNと今後の継続的な関係を楽しみにしています。皆様が私たちと共にわかちあった祝福と、そしてこの御恩を一生忘れません。

コミュニティ・リーダー
ジョセフ・マディウォ



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プロジェクト中間報告書
2021年2月11日現在

2020年12月23日、私は非常に協力的なカサン・ドゥムラグ町長に会いに行き、プロジェクトについて話し合いました。町長は、ナガワ集落のために、このプロジェクトの遂行のために必要とされるすべての文書に署名してくれるということで合意ししてくれました。町長は地方自治体のエンジニアに建設予定地の現場検証と、作業計画の作成を指示しました。反町眞理子さんのリーダーシップのもと、コーディリエラ・グリーン・ネットワークからの財政支援の確約があったとき、私はコミュニティに暮らす家族全員の首長を集め、活動の計画を立てました。
そこで私は、コミュニティのメンバーと合意した内容に沿って作業計画をまとめ、反町さんに送りました。次のステップは、プロジェクトがスムーズに実施されるように、各活動の責任者を決めました。具体的には、資材の購入、運搬、積み込み、荷降ろしの担当者、道路からプロジェクト現場までのセメントの人力運搬、洗砂、砂利、石材の製造、作業員の食事の準備、写真撮影、会計処理、その他の不明な活動の担当者などです。
私は、プロジェクト・コーディネーターとして、フンドゥアン地方自治体政府、バランガイ政府と密接に連携し、日々の活動内容のモニタリングを行い、プロジェクト現場での作業、成果報告の作成、プロジェクトの進捗状況の確認を行っています。いつでも必要な資料がを提供できるように準備しています。 記録は(文書と写真)は、プロジェクトサイトの訪問やモニタリングのたびにも作成されます。また、プロジェクトの進捗状況が計画されたプログラムや活動に沿っているかどうかの確認も行っています。

プロジェクトがスタートしたのは2021年1月4日です。2021年1月11日までプロジェクトの基礎の迂回・深堀・掘削を行いました。また、熟練工による作業計画に沿って、巨石、砂、砂利、セメントなどの骨材を混合して基礎工事を開始しました。

プロジェクト分担責任者 一覧表

仕入れと積み込み/積み下ろし: ジョセフ・マディヲ
セメントの運搬: ロレンツォ・ダマオンとジャスパー・クリエント・マディウォ
石の集積: ロミオ・エスティマ
砂の採石: ナポレオン・エスティマ
食事の準備:ジョネミとハンナ・マディウォ
写真資料作成:ジョセフ・マディヲ

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↑2021年2月ハパオの田植えの様子です

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(以下は原文です)

NARRATIVE REPORT
Construction of Nagawwa River Control Project

HISTORICAL BACKGROUND OF SITIO NAGAWWA

A long time ago there was a river coming from Mt. Napulawan. This river was sub-divided into two, one of which is now known as barangay Hapao today. As years passed by the river continued to flow through one area while the other side was left dried and exhausted. Our ancestors decided to take advantage of this and constructed rice fields in the dried areas. This place was later called by our ancestors Nagawwa which means "located in the middle/center". It is based on the historical background of the place that was located at the center of the two sub-divided rivers.
My grandfather named "Yogyog" helped build this rice field. They were in the middle of rice field construction when the second world war began. So, our grandparents together with their families evacuated to the mountains to survive. Unfortunately, my grandfather, Yogyog was killed by the Japanese soldiers and was buried elsewhere, so his remains are still missing to this day. After the war, my grandmother "Maligne" took her children and returned to the land they once left and continued to cultivate the rice field that was constructed by my grandfather "Yogyog". Since then, the rice terraces have been the source of our living to this day.
Sitio Nagawwa at Present where the project is locatedSo, On October 1996 my parents built a small house near our rice field for easy access and near to work on. My parents were the second family who stayed in this place during that time. As years go by, the relatives and families of So, In October 1996 my parents built a small house near our rice field to have easier access to the terraces where they worked every day. My parents were the second family who decided to migrate to this area during that time. As years went by, the relatives and family members of those who constructed the rice fields in this area decided to move here as well until it grew into a small village. When I got married in the year 2001 my parents gave me a small space to build a house and start a family. Last 2004, the Japanese government donated an amount of more than 7 million pesos to our local organization (MLGU) for the construction of a river flood control station here in Hapao, Hungduan, Ifugao. During that time the river started devastating the rice fields. Because of the construction of the river flood control station, we felt safe from floods being drawn by the river. However, as time passed by, we encountered lots of strong typhoons, heavy rainfall we encountered earthquakes as well. Natural disasters such as typhoon Ondoy, Yolanda, and Lawin slowly destroyed the constructed river flood control station.
Last year; on November 14, 2020, typhoon Ullysis brought strong rain and drew big stones. The big volume of sand destroyed the river flood control station here in Hapao, Hungduan. It was the river control station protecting our village. The river control collapsed and destroyed some of the houses, fish ponds, and even flooded our crops. The only river control station which we considered our refuge and shield from calamities for more than two decades collapsed causing a huge flood in our villages. We live in fear constantly worrying when the next flood will hit us especially for the children and the elderly.

Captured during typhoon Ullysis
After typhoon Ulysses, we made an effort to get back on our feet and started rebuilding our village. We were in constant fear of a flood or the next natural disaster that would hit our village. Our village was in a very vulnerable state. On Nov 29, 2020, Miss Mariko Sorimachi a very good friend of mine whom I met during my guide work sent me a message asking us how we were and about our current situation. I felt relieved when she asked me what she could do to help us. So I sent some pictures of our village and sent her a message on what possible damages the river flood control could cause if not reconstructed. She then left me a message saying that she will try to find some good-hearted donors to finance the reconstruction of the destroyed river control station.
Even without assurance, I felt happy. Life during these times is hard due to the pandemic. I continued to keep my faith in God, I believe he will protect us and will not allow us to perish. Our prayer was answered on Dec. 20, 2020 Ms. Mariko Sorimachi sent me a message that her friend in manila was willing to finance the flood control. I could not express my gratitude enough. I read the message again and again. There are people who see our need, I tried to fight back my tears but they kept falling like the rain of typhoon Ulysses. I shared the good news with my community, everyone was overjoyed, despite the pandemic and the flood, we were blessed and protected by God the good news brought by the message spread the spirit of Christmas throughout the whole village.
Ongoing Project Construction
We, the community member of sitio Nagawwa, Hapao greatly express our heartfelt gratitude to Ms. Mariko Sorimachi for her initiative and concern by sourcing out funds for the rehabilitation of the damaged river flood control. May your sacrifices, help, and love be rewarded with uncounted blessings. You are part of our history and we are grateful for having you.
To the donor, we may not know you personally but we want you to know that we are very proud of you for your generosity in unselfishly sharing the blessings through the provision of funds for the realization of this river flood control reconstruction project. We are grateful for having you as one of the kindhearted donors in improving our place. We acknowledge all these things and we owe this to you. Longing to see you someday, sharing the successes of this project.
To Cordillera Green Network, as a channel for this blessing that you have shared in this community.
We look forward to a fruitful and continuous partnership between the MLGU, the donor, and the Cordillera Green network headed by Ms. Mariko Sorimachi. No words can repay all the blessings that you've shared with us.
Thank you very much.

JOSEPH A. MADIWO
Community Leader


PROJECT ACCOMPLISHMENT REPORT
Construction of Nagawwa Riverflood Control
As of February 11, 2021

December 23,2020 I coordinated with Hon. Casan Dumulag, the very supportive Mayor and talked about the project. We agreed to sign any possible documents for the said project for the benefit of the stakeholders in Nagawwa. The mayor instructed his engineers to validate the site and prepare the program of work. When there was an assurance of financial support from the Cordillera Green Network through the leadership of Ms. Mariko Sorimachi, I gathered all the heads of the family in the community and planned for the activities to be undertaken. So I consolidated and prepared the work plan according to what we agreed with the community members and send it to Ms. Mariko Sorimachi. The next step was tasking, I assigned a person responsible for each activity to ensure that there is a smooth implementation of the project. The activities include purchasing of materials, the person in charge of ferrying, loading, and unloading, manual hauling of cement from the road to the project site, production of washed sand, gravel, and stone, assigned one in preparing food for the workers, and in charge of photo documentation, financial disbursements/matters and other unidentified activities.
As project coordinator, I closely coordinate with the MLGU, BLGU and monitor the daily activities, work on the project site, prepare accomplishments and progress of the project. Ensures that the materials needed are readily available at all times. Documentation (Written and photo) is also made every project site visit and monitoring. I also check if the progress of the project is aligned with the planned program and activities.
January 4, 2021, that was the start of the project. Detouring, deep digging/ excavation of the foundation of the project was made until January 11, 2021. We also started building the foundation utilizing big stones, sand, gravel, and cement, mixture the aggregates following the program of work by the skilled workers.


LIST OF ASSIGNED PROJECT INCHARGE PER ACTIVITY

Purchasing & loading/unloading: Joseph Madiwo
Hauling of Cement: Lorenzo Dama-on and Jhasper Klient Madiwo
Gathering of Stones: Romeo Estima
Quarrying of Sand: Napoleon Estima
Food Preparation:Jonemi and Hannah Madiwo
Photo Documentation: Joseph Madiwo










# by cordillera-green | 2021-02-28 18:52 | 世界遺産の棚田
2020年 06月 27日

キブンガン郡でのアグロフォレストリーによる植林と生態系調査プロジェクト終了しました!

2019年度「ベンゲット州キブンガン郡における森林農法(アグロフォレストリー)によるコーヒー栽培を通じた野生生物保護事業」(イオン環境財団助成)は、無事終了しました。新型コロナウィルス流行の影響は、遠くこんな山の奥まで及び、事業地のキブンガン郡も3月半ばにロックダウン(封鎖)され、必要な農産物や食料の運搬以外は外部との行き来はできなくなりました。いまだ(2020年6月末)移動制限は継続していますが、村の暮らしはそれほど変わっていないようです。しかし、事業担当の森林専門官(フォレスター)も事業地に行くことが難しいため、昨年の雨季に植樹した苗木の生育状況の調査を、サグパット農業協同組合の人に依頼しました。
以下、この事業についての報告です。
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事業地のキブンガン郡のサグパット村は、CGNが一番最初にアグロフォレストリーによるコーヒー栽培を行った場所です。2005-2007年のCGNとしての初めての植林事業の事業地がキブンガン郡で、その最後のほうで実験的にサグパット村の松林のなかにアラビカコーヒーの苗木を植えました。そのころベンゲット州の州都ラ・トリニダード町にあるベンゲット州国立大学Benguet State University(BSU)の
Institute of Highland Farming Systems and Agroforestry (IHFSA)では、ベンゲット州の山岳地方に多く見られるベンゲット松と一緒に育つ換金作物について調査をしており、アラビカコーヒーが松の木とともに育つということで注目を集め始めたところでした。
実はサグパット村はそのIHFSAのディレクターであるマカネス教授のふるさと。大学のモデル農場でやってきたコーヒー栽培を実際にコミュニティで実践したいということで、CGNはサグパット村の農家の組織(今は改名してサグパット農民組合=Sagpat Agriculture Farmers Cooperative(SFAC))をパートナーとして、アラビカコーヒーのアグロフォレストリーによる栽培を始めたのです。
(マカネス教授は昨年、コーヒー栽培の調査とコミュニティでの指導の功績が認められ、Benguet Achievement Awardees 2019を受賞しました。記事(英語)はこちら➡http://www.bsu.edu.ph/article/macanes-benguet-achievement-awardee 
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あれから15年。CGNは山岳地方のさまざまなコミュニティでコーヒーのアグロフォレストリーによる栽培指導と苗木の配布を行ってきました。そしてコーヒーの収穫が始まったコミュニティでは、ポストハーベストの精製の技術指導や機材の配布、フェアトレードによるマーケティング・サポートを行ってきました。
サグパット村でも収穫が始まるのに合わせて、収穫後のチェリーの精製方法についての講習会、皮むき器の支給、パートナー団体SFACの代表アーノルドさんの東ティモールのコーヒー生産研修参加、フェアトレード認証取得のための組織化講習会などを実施してきました。その一方で、キブンガン郡の農家のおもな生産品であるサヨテ(はやとうり)の栽培はどんどんと拡大し、サヨテによる収益は住民たちの暮らしの基幹としての地位を不動のものにしてきました(「グリーンゴールド」と呼ばれています)。それに伴い、キブンガン郡での森林破壊は拡大し、土砂崩落など台風や大雨時の災害も増えています。近年、利益だけを求めてサヨテ栽培を拡大してきた農家の人たちにも、ちょっとした迷いが出てきたと見受けられました。

この事業はそのサグパット村での15年ぶりの植樹を含んだ事業です。ここ数年のフィリピン国内でのコーヒーブームで、国産コーヒーの値段が上がり、この15年間に地道にコーヒーを育ててきた人たちには、コーヒーは着実に収入に結び付いています。コーヒー栽培に疑心暗鬼だった人たちの中にも、コーヒー栽培に本腰を入れてみようという人も出てきました。

CGNとしては、このプロジェクトの目的は、過去に植えたアグロフォレストリーによるコーヒー栽培地の調査を行い、生態系保全の大切さを改めてコミュニティに伝え、さらにアグロフォレストリーによるアラビカ・コーヒーの栽培地を拡大しようというものでした。

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<活動内容>

事業期間:2019年4月ー2020年3月
イオン環境財団第28回イオン環境活動助成事業

以下の活動を実施しました。

●森林農法によるコーヒー栽培地の植物に関する調査

事業担当の森林官の指導で、ベンゲット州国立大学森林学部の学生とともに調査を実施しました。グループに分かれ、対象の農園で10-20mのエリアを2-3か所選び、そこに生えている植物を記録しました。

実施日時:2019年624-29

実施場所: コーヒーを森林農法によって栽培している12の農園(サグパッド村9、隣接するポブラシオン村3)のうち11の農園

参加者:ベンゲット州国立大学森林学部の大学生15名、当事業専門家の森林官、申請団体スタッフ

※調査結果の詳細はこちら(英語)➡

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●森林農法による植樹活動

SFACメンバー23名に計9465本の苗木が配布され、それぞれの個人の土地に植樹しました。苗木の内訳はアラビカ・コーヒー5,695本、トゥアイ2,370本、アルヌス1,400

実施日時:20196月~9

植樹場所:23名の住民の所有地

参加者:23名の受益者とその家族、当事業専門家の森林官、CGNスタッフ

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●コミュニティ共有林、水源地、2つの小学校敷地、コミュニティの新たな森林農法モデル農園への植樹活動

以下の日程で雨季の間に共有地への植樹を行いました。 植樹した苗木本数は3,295本。内訳はコーヒー1,415本、トゥアイ1,630本、マラ・ティビッグ150本、アルヌスの600。台風の襲来、モンスーンによる長期の雨などで、植樹作業は9月まで継続されました。


実施日程:2019年625日(フィリピンの植林の日) 

植樹場所:サグパット共有林&水源地

参加者:サグパット村役員、サグパッドの村人ち、小学校の生徒たち、ベンゲット国立大学学生ボランティア15名、SFACメンバー、森林官、申請団体スタッフとボランティア

樹種と本数: コーヒー250本、トゥアイ500

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②実施日程:2019年626

実施場所:ボケス小学校敷地内

参加者:ボケス小学校5年生&6年生生徒と教員、森林官、申請団体スタッフとボランティア

樹種と本数:コーヒー15本、トゥアイ350

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③実施日程:2019年727

実施場所:サグパット小学校敷地内

参加者:サグパット小学校5年生&6年生生徒と教員、バギオ市内の英語学校で学ぶ日本人学生ボランティア、森林官、申請団体スタッフとボランティア

樹種と本数:トゥアイ300本、コーヒー200

④実施日程:2019年8-9

実施場所:サグパット共有林&水源地

参加者:SFACメンバーの中で参加可能なもの、森林官、申請団体スタッフと公募によるボランティア(植林ツアー)

樹種と本数:コーヒー250本、トゥアイ480本、マラ・ティビッグ50

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⑤実施日程:8-9月

実施場所:森林農法の新たなモデル農園(ラボヤン農園)

参加者:SFACメンバーの中で参加可能なもの、森林官、申請団体スタッフとボランティア

樹種と本数:コーヒー700本、マラ・ティビッグ100本、アルヌス100

合計植樹本数は13,260本。内訳はコーヒー7,110本、トゥアイ4,000本、ティビッグ150本、アルヌス2,000

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アグロフォレストリー(森林農法)によるコーヒー栽培地における野鳥に関する講習会と調査

講習会:201912月12日 会場:KALAHI Multi-purposeBuilding  

調査:20191211日―14日 調査地:サグパット村の森林農法によるコーヒー栽培地

講習会参加者: SagpatFarmers Agriculture Cooperative(サグパット農家農業組合=SFAC) メンバー 14名 

講師 & リサーチャー:

神山和夫(日本バードリサーチ)、JennicaMasiganCenter for Conservation Innovation Philippines Inc.

講習会内容:二人の講師は以下のテーマについてプレゼンテーションを行いました。

1.自然界と集落における野鳥の役割 

2.フィリピンと日本を行き来する渡り鳥 

3.北ルソンで見られる野鳥 

4.コミュニティ・フォレストにおける野鳥の価値 

5.一般住民による野鳥観察の方法 

講習ののち、参加者とともに森林農法によるコーヒー栽培地で野鳥観察の実習ワークショップ開催しました。

調査内容:サグパット村内の条件の異なる4つの森林農法によるコーヒー栽培地の生態系と野鳥について調査しました。

※ワークショップの詳細はこちら(日本語)➡

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苗木場の設置

20201月に苗場のための資材がサグパット村に運搬され、苗場の造成作業がSFACのメンバーによって開始されました。苗木用ビニールポットへの土入れ、苗床への種まきなどの作業が行われました。ティビッグの種子の入手が難しくトゥアイの種を入手して苗床で種まきしたが、発芽が見られなかったため、ファルカタ(フィリピンではMoluccan sau)の種を再購入しました。2020年5月現在、苗場では5,000本のアラビカ・コーヒーの苗木と5,000本のファルカタの計10,000本を育苗中です。

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森林農法によるコーヒー栽培の環境へのインパクトに関する講習会と森林農法によるコーヒー栽培地の生態系調査

講習会:2020212日 調査:20202715

講師:甲野毅(大妻女子大学助教授)、リリー・ハミアス(フォレスター) 参加者:SFACメンバー15

講習内容:201912月に行われた講習会で学んだ観察方法によって、森林農法によるコーヒー栽培地で、どんな生物(哺乳類、野鳥、虫、両生類など)が観察されたかを参加者が発表しました。甲野氏は絶滅した日本オオカミなどを例にあげ、生態系のバランスを保つことの大切さ、あらゆる生き物が地球上で役割があることなどをわかりやすく説明しました。

調査内容:全13の森林農法によるコーヒー栽培地を訪問し、土壌調査、生態系調査を行いました。今後の理想的な森林農法のあり方を示唆するための基礎資料として利用することとなりました。

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植樹地の苗木の生育状態のモニタリング

事業で植樹した苗木の生育状況は事業を担当する森林専門官によって毎月モニタリングを行ってきました。1010日、117日、126日に植樹地を訪問し。131日に植樹後半年目の生育状況の調査で12か所の植樹地を訪問しました。2020年3月が本事業最後のモニタリング調査となる予定でしたが、新型コロナウィルス感染問題で事業地も封鎖となり延期されました。20206月に入っても事業地のある自治体へは厳しい入場制限があり、生育状況の調査を事業地のパートナー団体であるSFACに依頼しました。報告によると、アラビカ・コーヒーの生育率は85%。日陰樹として植樹したマラティビッグは順調に生育していますが、トゥアイとアルヌスの苗木の生育は、マラティビッグに比べると低いとのこと。根付いた苗木はすでに、新しい芽と葉が出ています。

コーヒーの生育状態は、土壌の肥沃さと日陰の状況に大きく影響されていることが見て取れたそうです。育たなかった苗木の一部は、苗場から移植地への運搬中に受けたダメージによるものと予想されています。

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プロジェクト担当の森林官(フォレスター)マイラ・セセットからの感想とコメント

このプロジェクトは大きく、森林再生のための植林活動と、コーヒーをベースとしたアグロフォレストリー農園における生物多様性を維持するための野生生物の観察と調査、という2つの要素によって構成されていました。

コミュニティやSFACのメンバーは、森林再生から得られる利益が大きいことから森林再生活動には関心を示し積極的に活動に参加しました。森林再生によるメリットを理解しているからと言えるでしょう。今回新たに加わった 新メンバーや SFAC の従来のメンバーの中には、将来的にコーヒーから副収入を得られることを期待して日陰樹やコーヒーを植えることに積極的だった人が多かったです。
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サグパット村の人たちは、コーヒーをベースにしたアグロフォレストリー農園の管理にすでに精通していると言えるでしょう。ただその知識を実行に移すかどうかにかかっていると言えます。コーヒーの植樹にとって考慮すべきは、日陰樹の存在と土壌の肥沃度と植樹予定の土壌に適した苗木の選択です。 輸送時のダメージを少なくし、移植後の苗木の活着率を上げるには、地域内にある植樹予定地と似た環境で育成されている苗木を調達しなくてはなりません。
また、植樹に参加する人それぞれが何を目的としてどういう樹を育てたいと考えているかを的確に把握しておくことが大切です。
生計向上のために植林に関心があるのか、環境保護や持続可能な森林保全のための植林なのか、目的を明確にし、植樹後にメンテナンスが必要であることを受益者に説明し理解してもらう必要があります。植えっぱなしでは苗木の生育は期待できません。

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生物多様性の減少を実感しているにもかかわらず、残念ながらコミュニティの人々の関心は野生生物の保護に対しては高くありません。
日常生活に必要とされているものを優先し、無意識のうちに環境への悪影響を無視しているというところもあると思います。
コーヒーを主な栽培樹種としたアグロフォレストリー農園における生態系保全に関するセミナーでは、木を植えることで、野生生物の生息地を作り、野生生物の保護、生物多様性の維持につながっていることを実感してもらえたと思います。このテーマは、受益者やコミュニティにとっては目新しいものであったため、受益者はまだその価値を見定めるために学んでいる最中と言えるでしょう。

野鳥観察を地域の環境保全の状況を知るための調査方法に取り入れることは、新たな試みでした。環境教育プログラムや環境自然資源省(DENR)による生物多様性の豊かさと保全のためのプロ―モーション戦略となりえると考えます。生物多様性保全のキャンペーンを継続することで、環境や森林保全につながるコミュニティの意識を高めることができるでしょう。
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この事業の受益者であったSFACのメンバーからは、次のようなコメントがありました。

- 野生動物を保護することの大切さを学んだが、状況によってはコントロールできないこともあります(サヨテの農園や野菜畑が森林破壊につながる)。お金のことばかり考えている人を説得するのは正直難しいと思います。
- このプロジェクトは良いと思います。私は、自分たちのために、環境のために、野生動物のために、木やコーヒーを植えています。CGNが果樹の苗木も提供してくれれば、アグロフォレストリー農園からはコーヒーだけでなくほかのものも採れるようになります。
- 単作ではなく、間作を行うことで生物多様性を保全することができますが、現在の農業スタイルでは、農家はより良い収入を得るために換金作物の単作を好んでいます。
-私たちはこのプロジェクトの対象となれて幸運でした。このプロジェクトで空き地に植樹をし、コーヒーの植え替えもできました。私たちが今しなければならないことは、それらの面倒を見て育てることです。
今後、コーヒー、レモン、サヨーテなどから作る加工品の製造方法や、質の高い商品や量の多い商品を生産するための技術を向上させることができるようなプロジェクトなど、農業に関連した生計向上事業を実施してくれたらうれしいです。

SFACのメンバーはすでにアグロフォレストリー農園を持っています。環境を守りながら質の高い商品を生産するための新しい技術や戦略、生産に関する知識を提供することで、より強いエンパワーメントを受け、モチベーションを高め、コミュニティ全体に影響を与えることができるかもしれません。
また、メンバーを管理する組織の能力を強化することも重要です。 協同組合のビジョン、使命、目標は組合員一人一人に浸透させなくてはなりません。各組合員の団結力、責任感、忍耐力によって組織の方向性は決まり、成果につながります。組合メンバーは協力し合うことが必要です。
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# by cordillera-green | 2020-06-27 17:12 | 植林/アグロフォレストリー
2020年 03月 30日

世界の人びとのためのJICA基金のサポートで、サグボ村に小さなコーヒー精製所ができました!

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2019年度、コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)は、京都のNGO「マナラボ 環境と平和の学びデザイン」の現地パートナー団体として、「世界の人びとのためのJICA基金」のサポートを受け、「小規模農家によるコーヒー生産のための加工・運営指導プロジェクト」を実施しました。

 「世界の人びとのためのJICA基金」は、JICAホームページによると、「国際協力にご関心のある市民の皆様、法人・団体の皆様から寄附金による基金で、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、本基金を活用した開発途上国・地域の人びとを支援する活動に対して事業計画案を募集」するものです。2019年度の申請案件の中から、通常枠ではマナラボを含め7件の活動が採択されました。 

 JICAというとODAなどの海外での大規模なインフラ整備プロジェクトなどを連想すると思いますが、この基金はJICAの「市民との連携」事業のなかでも国際協力の経験のない個人や市民団体でも応募ができるものです。事業期間は1年間で上限100万円までと、JICAのさまざまな枠組みの中では小さいものですが、はじめて国際協力にチャレンジしようという人には、格好のプログラムと言えるかもしれません。

  

 2020年度のJICA基金活用事業募集のチラシの「チャレンジ枠」の解説には、こうあります(すでに、2020年度の募集は締め切られています)。

 ポイント開発途上国・地域における貧困削減や人々の生活改善・向上に直接的に貢献 しうる活動であれば、分野の指定なく提案可能。 特に、社会課題解決のための新たなアイディア・アプローチを歓迎!

 ポイント国際協力活動実績が2年未満の団体・個人が募集対象なので、国際協力活 動の経験がないor浅くても申請OK

 ポイント国際協力活動の経験がないor浅くても、 専門家から事業計画策定・実施・振り返りのタイミングで アドバイスをもらえる機会が必ずある!

 国際協力活動をしたいけど、自前の資金では足りない。でも、助成金申請って難しそう、と尻込みをしている人が挑戦してみるのにはとてもいいと思います。助成金申請で最大の難関と思われる会計処理の仕方や報告書の作り方なども、フォーマットと手引きに従って順番にすすめていけば、経験がなくても自力で作成できる仕組みになっています(面倒ではありますが)。

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 今回のマナラボとのプロジェクトは、CGNがコーヒーのアグロフォレストリー栽培を指導している場所の一つ、カパンガン町サグボ村で実施しました。サグボ村はマナラボ代表の飯塚さんが事務局長を務めていた「NPO法人 環境平和もやいネット」が、2017年度に緑の募金公募事業でアグロフォレストリーによる植樹を行った場所です。CGN2012-2014年度にサグボ村のビレン地区などで、3万本以上のコーヒーの苗木を植えました(イオン間環境基金助成)。 

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 植樹したコーヒーノキがようやく本格的な収穫期を迎えているにもかかわらず、収穫後のコーヒーの実を精製する機器がないという窮状をマナラボに相談したところ、サグボ村をサポートしましょう! と、このプロジェクトを立ち上げてくれました。事業名は「小規模農家によるコーヒー生産のための加工・運営指導プロジェクト」。要は、小さな農家さんたちがグループで使える小さな精製所を提供して、おいしいコーヒーを作り、少しでも多くの収入をコーヒーから得られるようにお手伝いをしましょう!というものです。サポートするコーヒー栽培農家さんは、サグボ村のビレン集落周辺の農家が加盟しているダイヨコン農業組合の人たちとしました。

 

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 プロジェクトでは以下の3つの活動を行いました。


1. 小さな精製所づくりと精製機器の支給

 小さなマニュアルの果肉除去機(パルパー)を3台支給しました。収穫後のコーヒーのチェリーをウオッシュド(水洗式)という方法で精製するために必要な機器です。これがないと、皮むきの作業を杵と臼でやらねばならなく、大変な重労働です。水を使う作業ですので、同時に水のタンクも支給しました。

 コーヒーチェリーを水につけて浮いてくるものをのぞいたり、皮をむいたパーチメントを洗ったりするための容器(タライですね)、そのパーチメントに付着しているミューシレージとよばれるネタネタの粘質を取り除くために発酵させる蓋つきの容器(大きめの蓋つきポリバケツみたいなもの)も支給しました。

 さらに、発酵したミューシレージを洗い流した後のパーチメントを乾燥させる乾燥箱(トレイ)と、乾燥台に使うプラスチック製のシートなどの資材も支給しました。

 最後に、それぞれの農家さんたちが収穫したチェリーや精製したコーヒー豆を正確に測り記録をつけるための、計りとノートも寄付しました。計りとノートは、ダイヨコン農業組合のコーヒー豆を毎年継続して輸入してくれている京都のフェアトレード会社「シサム工房」さんからのフェアトレード・プレミアム(奨励金)で購入したものです。

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2.精製技術トレーニング

 機器支給と同時に、支給した機器を使って品質のよいコーヒーを作るためのトレーニングを開催しました。技術指導には、アジア各国のコーヒー新興国で農家目線できめ細かい栽培指導を行っている山本博文さんが、忙しい合間を縫って2度も足を運んでくれました。

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3.組合の組織強化セミナー

 支給された機器は、組合が共同で使用する必要があります。ダイヨコン農業組合は、コープストア(組合のショップ。日用品や食料品を販売しています)の経営が主な活動です。今回新たに加わるコーヒーの精製を組合として行うための組織強化プログラムを行いました。組織をどのように潤滑に運営していけばいいか、いま現在の組織のあり方には何が欠けているか、どうすれば組織がさらにサステナブルなものになるか、マーケットを広げるための国際フェアトレード認証申請のためには何が必要かなどについて講習会を開催しました。

 講師には、フィリピンの政府機関である組合開発機構(CDA)の百戦錬磨の専門家さん、そして・フェアトレード・ネットワーク・アジア太平洋地区Network of Asia & Pacific Producers (NAPP)の東南アジアの生産者認証担当で各国を飛び回っているエリカ・シアソン女史が来てくれました。

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 2019年度事業というものの、JICAとマナラボの間で契約書を交わすまでに思った以上に時間がかかり、実質的には事業は収穫期直前の10月下旬にスタートとなりました。そして20202月末にはできるだけすべてのプログラムを終了してほしいとのことで、正味3カ月という短期決戦事業。事業調整を行うコーディネイターとしてCGN新人スタッフのバージニアを配置しましたが、ほんとうに期間中に終了できるかひやひやの3カ月でした。

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 以下は、プロジェクト後半戦の内容の一部(前半のプログラム詳細についてはこちら)を紹介します。

 201911月の収穫開始時の山本さんによる精製技術トレーニングで、ダイヨコン農業組合のコーヒー農家さんたちは栽培地の分布の仕方によって4つのグループに分かれることが決まりました。

1.組合のコープストアがある地区(農家11人)

2.ロウワー・ビレン地区(農家10名)

3.アッパー・ビレン地区(農家8名)

4.ランディン地区(農家13名)

 それぞれのグループ別にリーダーを決め、毎日のように農家のメインの生産物であるサヨテ(はやとうり)収穫に忙しい中、グループごとに週に1回のコーヒー収穫日を決め、その日に精製作業を共同ですることを話し合いました。

 やはり4グループともサヨテの集荷がない週末から月曜にコーヒーを収穫して作業をする曜日と決めていました。プロジェクトの調整スタッフは毎週末のように事業地に赴き、トレーニングで教わった手順に従って精製がされているかをモニタリングしました。

 でも、結果から言うと、栽培農家それぞれが収穫したものをチェリーの状態でほかの農家の豆を混ぜて一緒に精製するのには抵抗があったようです。やはり自分の豆は自分の豆として最後まで別にしておきたいという気持ちが強かったよう。まだ生産量が少ない農家も多く、共同作業の必要性を一部の生産量の多い農家さん以外は実感していないのかもしれません。また、チェリーの状態で集めたときに計った記録が、最後に精製・乾燥させたあとまで、そのままのパーセンテージになるのだよ、という算数がピンとこなかったかな。生産量が多い人と少ない人がいるのに同じように作業をするのが、割が合わないと感じた人もいたかもしれません。あるいは、自分の農園のコーヒーを味わいたい!という気持ちが強かったということも考えられます。今後の事業計画の立て方の参考となりました。

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*

 20202月に再び山本博文さんに来比をお願いし、農家さんたちが精製と乾燥を終えた17種類のコーヒーを、カッピングというちょっと本格的な世界共通の評価方法で、農家さんたちと一緒にチェックしました。

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 いつもいつも、とても褒め上手の山本氏ですが、心から「おいしい!」を連発。

 農家のおばちゃんたちの中には、「砂糖を入れないコーヒーなんて苦くって飲めたもんじゃないわ」と、テイスティングに挑戦するものの、「苦い!」と顔を思いっきりしかめて笑いを誘っている人も多くいました。しかし、コーヒーの輸出先の国々では、こんな風にコーヒーの香味の評価がされるのだということを、栽培農家さんに知っていてもらうのはいいことだと思います。

 普段、農家さんたちがおいしく飲んでいるコーヒーは、焦げているんじゃない?というくらい深く鍋で焙煎し、たっぷりと砂糖を入れてヤカンで煮だしたもの。それがこの地域でのコーヒーの飲み方です。農作業で疲れたときには甘いコーヒーがいちばんなのです。

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 「先進国と呼ばれる国々の大都会のおしゃれなカフェで、ちょっともったいぶって、目の飛び出すような値段をつけられ、ありがたがって飲まれているコーヒーは、お砂糖入れずに浅めに焼いて煮だしていないコーヒーなんですよ~~」「そういう飲み方に適したコーヒーのほうが、高く売れるものなんですよ」と伝えることが、この農家さんたちへのカッピング・ワークショップの目的のひとつです。農家の皆さんに「浅い焙煎のお砂糖抜きのコーヒーをおいしいでしょう!」と押し付けるつもりはカケラもありません。

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 山本さんは、17種類を1杯ずつテイストし、一つずつについて栽培農家さんに、

「このコーヒーは柑橘系のきれいな酸味がありますねえ」

「こちらはナッツみたいですねエ」

「あれ、これはなんか草っぽいかな?」

と感想を伝え、もっとおいしい(買ってくれる国の人たちがね)コーヒーにするには、精製過程でどんなことに気をつけたらいいかをアドバイスしてくれました。

 

 別の日には、ベンゲット州のそのほかの生産地の栽培農家の人も招待し、その農家さんたちのコーヒー豆も交えてのカッピングをしました。ダイヨコン農業組合の代表の人たちは、ほかの生産者のコーヒー豆との香味の違い、精製方法の違いなどを、農家さん同士の交流を通して学びました。

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 こうして丁寧に作られた今年コーヒー豆ですが、事業のプログラムがなんとか滑り込みセーフで終わったのち、3月に入ってからCOVID-19(新型コロナウィルス)の感染拡大で、CGNの拠点のあるバギオ市もサグボ村もすべての動きが止まっており(町も村もほぼ封鎖状態です)、ダイヨコン農業組合の倉庫で出荷を待っている状態です。

 一刻も早く感染拡大が止まり、皆さんのお手もとにコーヒーが届きますように。

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Thank you for the photos ©SDS Multimedia


# by cordillera-green | 2020-03-30 17:52 | コーヒー
2019年 12月 30日

コーヒーの森で野鳥観察ワークショップ開催

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コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)では、2019年度イオン環境財団の助成を受けて「ベンゲット州キブンガン郡における森林農法によりコーヒー栽培を通じた野生生物保護事業」を実施中です。

事業地のキブンガン郡サグパット村は、2006年にCGNが初めてアグロフォレストリーによるアラビカ・コーヒー植林事業を始めた場所です。

その後、環境自然資源省(DENR)や各自治体(LGU)や農業省(DA)でもコーヒーの植林の後押しが始まり、あれよあれよという間に、サグパット村を含む山岳地方の様々なコミュニティでコーヒー栽培が広がりました。収穫されたコーヒー豆の加工とマーケットには、通商産業省(DTI)も全面サポート。コーヒーの品質も値段もぐんぐん上がっていて、コーディリエラ山岳地方はコーヒー栽培ブームに沸いています。


「コーヒーの苗木をこんなに植えちゃって、収穫できるようになった時にコーヒーが売れなかったらたいへんだ。責任重大だぞ」

と、CGNのコーヒー栽培事業地のコーヒーの販売をサポートするために、CGN関係者を中心に「カピタコ・ソーシャルエンタープライズ(KapiTako Social Enterprise」)を起業しましたが、売り先がないどころか生豆の獲得合戦になっているという予想外の展開になっています。

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↑アグロフォレストリーのコーヒー農園はこんな感じです


もともと、純粋な森林再生のための在来種の植樹では山岳地方の先住民の森林の畑への転換は止められないと、苦肉の策で始めたアフロフォレストリーでのコーヒー栽培です。目標は山岳地方の環境保全と環境への負荷の小さい方法での先住民の暮らし(生計ですね)の向上です。どこでどんな風に、だれが育てているコーヒーかということが大切なわけです。

ブームにのってコーヒービズネスに新規参入の人たちは、もう、そんなことどうでもいいです。

量の確保。それもなるべくおいしいコーヒー。。。というわけでコーヒー買い付け競争は過熱しています。


CGNとしては、ここで深呼吸。。。

当初のコーヒー事業の原点に戻ってみようということになりました。

そこで、ほんとうに私たちの事業地であるコーヒーのアグロフォレストリー農園には、野鳥や哺乳類や両生類やそのほかの植物や微生物などの生き物たちがちゃんと棲めるような環境があるのだろうか? という調査を、改めてしてみることになりました。

野生の哺乳類や両生類(野ネズミ、こうもり、りす、山猫、大とかげ、蛇、カエルなどがいるそうです)はなかなか目にすることが難しいということで、野鳥観察に焦点を絞ることになりました。野鳥観察するのはコーヒー農家の人たち。

まずは野鳥観察の意味や方法についてコーヒー農家の人たちに学んでもらおうと講習会を開きました。講師として、以前からCGNの環境教育プログラムでお世話になっている日本野鳥の会の下重喜代さんのご紹介で、NPO法人バードリサーチの神山和夫さんと、マニラのCenter for Conservation Innovation Incのジェニカ・マシガン(Jennica Masiganさん)に来ていただき、講習会とバードウォッチングの実習を行いました。

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↑講師のバードリサーチの神山和夫さん


講習会では、二人に以下のようなテーマでプレゼンテーションをしていただきました。

ー野鳥の自然界や人の暮らす村落での役割、

ールソン島で見られる野鳥の種類、

ーコーヒー農園における野鳥の働き、

ー日本からのフィリピンに来る渡り鳥の紹介、

ー環境保全に配慮したアグロフォレストリーによるコーヒー農園の価値、

ーバードフレンドリー・コーヒーの紹介

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Center for Conservation Innovation Incのジェニカ・マシガンさん


講習会の参加者たちは、CGNがサグパットでコーヒーを植え始めた2006年前後から、CGNだけでなく自治体や農業省、環境自然資源省などから支給されたコーヒーの苗木を栽培してきた農家の人たちです。サグパット村の主な栽培作物であるサヨテ(はやとうり)の栽培で忙しく、コーヒー栽培をあきらめてしまった農家もいる中、熱心にコーヒー栽培に取り組み、近年かなり収穫量を上げてきている農家に参加を促し、14名が参加しました。

また、日本から画家の高濱浩子さん、CGNインターンの松田雅代さんもゲスト参加してくれました。

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神山さんは講習の中で、コーヒー・ベリーボーラーやステム・ボーラーというコーヒー農家を悩ませている害虫が、野鳥が増えることによって数を減らしたというコスタリカでの事例を紹介し、生物多様性がコーヒー栽培に与える益についても学びました。


ジェニカさんは、フィリピンが世界有数の生態系の多様を持つ国であることを紹介。700種類以上の野鳥が生息していると話し、21種類のルソン島に生息している鳥の紹介をしました。


参加者は年配の人が多く、ジェニカさんの紹介する鳥の写真に

「子供のころはたくさんいたが、すっかり最近見なくなった」

という声が多く聞かれ、サグパット村の自然環境がこの数十年の間に大きく変化してしまったことがうかがえました。


さすが、山岳地方の村で生まれ育ってきた参加者たちです。写真で紹介された鳥の鳴き声や潜んでいる場所、目にすることのできる時期や時間などにとても詳しく、研究者も顔負けです。どんどん話を聞いていくと、子供のころに遊びで野鳥を捕まえた経験があって、罠の仕掛け方などにもめっぽう詳しく、それゆえの知識なのだと気がつきました。

村でよく見かける鳥たちには地域での呼び名があり、それらはほとんど、その鳴き声に由来しているとのことです。

神山さんが探していた日本からの渡り鳥ノゴマ(英語名はSiberian Rudy Throat)も、「キーリン」というローカル名で地元の人に愛されている鳥であることが判明しました(今回は残念ながら見つからず!)。



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さて、午後からは、実際に双眼鏡の使い方を学んで、参加者のうちの一人のコーヒー栽培地にバードウォッチングに出かけました。

実習のために訪問した農園は、もともとサヨテ畑だったところをコーヒーのアグロフォレストリー農園にかえたところで、コーヒーノキとアルノス(ハンノキ)のほぼ2種の木しか生えていません。神山さんによると農園の周辺にある、他の木が生えていたりやぶがあったりする多様な植生の中のほうが野鳥が見つかりやすいとのこと。また、農園は急な斜面にあり、アルノスが茂りすぎていて野鳥を見つけるのは素人には難しいということです。

実習目的ですので、農園近くの比較的見晴らしのいいなだらかな場所で観察を行いました。ベンゲット松の実がエサになるのか、ベンゲット松にかわいいきれいな鳥を見つけて参加者は興奮気味です(特に日本人ゲスト参加者)。


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それにしても、参加者の人たちの鳥探しのうまいこと。鳴き声で居どころにあたりをつけ、あっという間に探し当てます。まったくかないません。

散り散りになって夢中で鳥を探し、最後に再集合。どんな鳥を見つけたかの話を聞き、だいたい13種類の鳥がほんの2時間ほど間に確認できたことがわかりました。野鳥を観察する楽しみも十分体験できたと思います。

双眼鏡をそのまま持ちかえってもらい、1月の終わりまでそれぞれの農園で観察を継続し、その記録をノートにつけてもらうことになりました。どんな観察ノートが出来上がってくるか楽しみです。

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バードリサーチ神山氏とジェニカさんは、講習会の前後に、サグパット村の中の様々なスタイルのコーヒー栽培地を訪問して野鳥観察をしました。

詳細は神山さんのバードリサーチでのブログで。

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Photo by Rainel Lee, SDS Multimedia

 

今回のバードウォッチングの実習中に観察された鳥は以下です。

1.White-eared Brown-Dove (ローカル名:Ot-ot)テリアオバト

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2. Colasisi (Olis/Bolilising)シュバシサトウチョウ

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3. Pygmy Swiftlet (Pipingew) コビトアナツバメ
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4. Red-rumped Swallow コシアカツバメ
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5. Yellow-vented Bulbul (Piloklok) メグロヒヨドリ
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6.Elegant Tit (Kusili) シラボシガラ
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7.Velvet-fronted Nuthatch (Ak-kap) ビロウドゴジュウカラ
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8. Tawny Grassbird (Salaksak) ズアカオオセッカ
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9.Little pied Flycatcher (Kalinbabanga) ハジロマユヒタキ
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10.Blue-headed Fantail (Lebeg) ズアオオウギビタキ  *Leader of the birds
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11. Brown Shrike (Tala or Aladdas(male))アカモズ
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12.Luzon Bush-Warbler (Samote) ルソンウグイス
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13.Mountain White-eye (Kuyotan) ヤマメジロ

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# by cordillera-green | 2019-12-30 13:52