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2009年 10月 21日

変わり果てたハルセマ・ロードの姿

マウンテン州タジャンへ救援物資を持っていくには、ハルセマ・ロードを通っていきました。

ハルセマ・ロードは、バギオ市の隣町、ベンゲット州の州都ラ・トリニダード町から、マウンテン州のボントクをつなぐ幹線道路です。バギオから山岳部に入る唯一の道で、ボントクからはイフガオ州バナウエ、カリンガ州ルブアガン、その先はタブックにも道がつながっていて、いわば、バギオと山岳部の村々をつなぐ生命線です。険しい山の中を切り開いて作られたジグザグ道は、数年前まではかなりデコボコで、いつになったら全部が舗装されるやらと思っていましたが、ここ数年、とくにベンゲット州側は目覚しい整備具合で、四駆や車体の高いジプニー、バス以外の、一般のワゴン車も通れるようになり、旅の時間もずいぶん短縮されてきていました。

トリニダードを出てから、マウンテン州の境までには、ツブライ、アトック、ブギアスの3つの町を通っていきますが、このあたりがいわば「バギオ野菜」の一大産地、道の両側の山の斜面は見事に段々畑に姿を変え、ジャガイモやニンジン、白菜、セロリ、キャベツに大根といった日本でもおなじみの野菜を作っています。野菜はトリニダードの卸し市場を経由して、おもにマニラに出荷されていて、ハルセマ・ロード沿いの野菜農家は山岳民族の中では群を抜いて経済的に潤っています。同時に、農薬と化学肥料の使用過多で、農民の健康に被害が出たり、土壌が疲弊して作物に病気が出たりと、健康&環境問題が常に問題になっているところ。CGNもこれ以上、農薬と化学肥料にに頼った農業を拡張しないようにと、アグロフォレストリー事業や有機農業の指導を行ってきました。

今回の台風でもっとも大きな被害が起きたのは、このハルセマ・ロード沿いでした。ツブライ、アトック、ブギアスとそのお隣の金鉱山の町・マンカヤン町の境で、大規模な土砂崩れが起こってたくさんの人命が失われました。

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バギオに暮らして13年、山岳民の村に行くために何度となくハルセマ・ロードを通ってきました。台風や大雨のたびに土砂崩れで道が閉鎖されるのにも、多少慣れっこになっていました。しかし、今回ハルセマ沿いで見た風景は今までにないものでした。土砂崩れで、あちこちの山肌が削り取られ、森の木が倒れ、茶色い土が露呈しています。何千年もその姿を保ってきたであろう山の形はすっかり変わり、緑豊かな山岳地方に向かう雲の上のハイウエイは、赤茶色の泥土のあやうい壁に覆われたデス・ロードに姿を変えていました。

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1週間以上、ハルセマ・ロードが閉鎖されていたため、野菜農家は台風の直接の被害を免れた野菜を市場にもって行き、少しでも収入を得ようと必死です。まだ道が危険なので、小型車両のみ通行許可と聞いていたのに、数日間、晴天が続いていたこともあって、この日を逃したらもうチャンスはないとばかりに、野菜満載の大型トラックがすごい勢いで走っていきます。土砂で崩れた道の代わりに即席で作られた道路はあくまでも臨時のもので、一歩、間違えれば、谷の底です。

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     ↑小型車量だけと聞いていたのに、山からはバスもどんどん来ます。
      大きな土砂崩れの手前で乗客は降ろされ、
      土砂崩れの向こう側まで歩きます。

アトックの一方通行の箇所(バギオから30キロくらい)で、危険なので臨時道路の拡張工事をすると、両側からの車両を止めて、ブルドーザーが動き始めました。なんとそのまま5時間待ち。5時間後に車の通行許可が出たときには、山の村からバギオに向かう車両が優先ということで、反対車線のバギオ側からの車両は3時間も野菜のトラックが一台ずつゆっくり通るのを待つことに。計8時間待って、ようやく再出発です。

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客観的にはこれはまだ道路を開通するべき状態とはいえないと思います。土砂崩れにあった道の状態は危険すぎるし、雨が降ったらすぐにも二次災害が起こるでしょう。しかし、野菜の栽培に生活がかかっている農家にとっては死活問題。すでに新たな台風が北ルソンをうかがっているとの情報も入っていて、数日晴天が続いたこの日を逃したら、野菜を腐らせ、山岳民族の村々が経済難に直面するかもしれないという可能性を考えて、DPWH(Department of Public Works and Highway)も許可を出したのだと思います。

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       ↑ サヨテ畑も土砂で崩れています


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       ↑ 野菜が大きな被害を受け値段は急騰。
         サヨテは1キロ60ペソとかつてない高値。  
         土砂崩れの道を運んでくれるトラックを気長に待つ農民。

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       ↑運搬手段がなくて捨て去られた大根。
    

新たな台風は木曜か金曜には上陸との予測です。
まだバギオでは雨も風もなく、穏やかな夜です。
嵐の前の静けさではないといいのですが。。。

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ちなみに、私はまさか車が8時間も立ち往生するなんて思いもせず、「先に歩いているわん」なんて言ってスタッフのエイプリラとハルセマを歩き始めました。お昼くらいに。しかし、待てども待てども、車は来ず! ほんの30分くらいで車がおいついてくるだろうと思っていたのでジャケットも持たずに歩き始めたため、寒くて寒くて、歩みを止めるわけにも行かず、結局真っ暗になるまでこんな道を歩き続けました。

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停電で真っ暗、いたるところに土砂、霧雨の中の凍えるような寒さ、捨て去られている野菜たち。。。。。
はからずも山の村の人たちの暮らしの厳しさを身をもって体験しました。
運よく、拾ってくれる車が見つかって、次の町・サヤガンまでヒッチハイクし、温かいコーヒーをいただいて、生きていることのありがたさを実感しました。神様、ありがとう。

しかし、こんな姿に変わってしまったハルセマ・ロードが完全にもとの状態に戻るには、いったいどのくらいかかるのでしょうか。

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ハルセマ・ロードか開通する前に、ハルセマが交通止めになった地点から、ツブライのLebeyという村まで大きな大きなリュックを背負って徒歩で!!!救援物資を届けにいったガッツあるCGNボランティア、ジェイソン君の写真レポートもぜひご覧ください。http://ameblo.jp/cordillera/

CGNでは、台風ペペンの山岳地方の被災者に対する義援金を募集しています。
詳しくはこのページをご覧ください。

by cordillera-green | 2009-10-21 23:05 | 緊急支援


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