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2011年 01月 11日

アート・インスタレーション&パフォーマンス     「森のささやき・精霊の舞」

2010年12月のイフガオ州フンドアンでのイベントでは、前の2回ののブログでご報告した環境演劇の上演と環境教育アートワークショップと抱き合わせで、第二次大戦で犠牲となった日比両方の人々に対する慰霊と鎮魂、そして平和へ祈りをテーマとしたアート・インスタレーション&パフォーマンスを行いました(スンダランド・アートネット主催/国際交流基金/あいちモリコロ基金助成)。

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イフガオ州は、第二次世界大戦で日本軍が撤退し、最後、山下奉文(ともゆき)大将が捕らえられた地。大戦末期でが飢餓状態にあり、武器も弾薬もなかった日本軍兵士の多くが命を落とした地であるとともに、極限状態の中でイフガオ族のコミュニティでの略奪・殺戮などの残虐な行為もあったと記録されています。
戦後も日本から遺族の方々が慰霊に頻繁に訪れ、遺骨収集は現在も行われています。ご存知の方もいるかと思いますが、その遺骨収集の仕方をめぐって、昨年大きな問題が明らかになり、フィリピン国内や日本でも報道されています。
私も、在比年数の長い日本人として、日比両国の第二次大戦の傷跡を癒すためのお手伝いになるのならと、ご縁があれば、在比ならではの知識や人脈を利用して、遺族や元兵士の方の慰霊の旅のお手伝いなどもさせていただいてきました。今回の遺骨収集をめぐる問題は、戦後65年たって風化してしまったのか、本来なら遺骨収集作業の基本にあるべき亡くなった方たちに対する慰霊の気持ちがないがしろにされた悲しい出来事だと思っています。遺族の方や元兵士の方の中にも、抑えきれない怒りを表している方がいらっしゃいますが、何より、迷惑なのは、意図せずして暮らしの場を戦場とされ、今また勝手な日本人の遺骨収集問題に巻き添えになっているイフガオの人々、そして、この地で無念の中でお亡くなった日本兵の精霊たちなのではないでしょうか? 
65年たって、ようやく少しずつ癒えてきた傷を再びえぐられるようなこの出来事。日本と違って戦争の記憶がいまだ生々しいこの地で暮らしながら、何か日比の新しい関係のために出来ることはないかと、環境や平和のためにさまざまな活動をしてきた私には、残念でありませんでした。
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今回のイフガオ州におけるアート・インスタレーションとパフォーマンスにプロジェクトは、日本人、フィリピン人を問わず、戦争の犠牲となったすべての人のための鎮魂と慰霊、そして日比間、さらに世界の平和のための思いを、言葉ではなく、国境を越えて共有できるアートを通して表現したいという気持ちからでした。

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    ↑廣田緑さんと。バナウエの棚田で。

2007年のバギオ市とベンゲット州キブガンで行った「Where have all the monkeys gone?」という環境アート・プロジェクトを一緒にやった友人の造形美術家・廣田緑さんがまず参加を表明してくれました。廣田さんは、太平洋戦争の記憶をテーマとしたアート・プロジェクトを長年滞在していたインドネシア、フィリピン、日本で行ってきています。昨年の8月末から10月中旬にも徳島県の神山のアーティスト・イン・レジデンスプログラムで滞在し、88人のおじいちゃん、おばあちゃんと、廣田さんが制作のヒトをかたどった人形を交換し、記憶を収集し、「交換プロジェクトー神山八十八人巡り~」という展覧会を開催しています。アジアと日本で、たくさんの大戦の記憶と出会い、アート作品としてきた廣田さんは、多くを語らなくても今回の企画の意味と意図を深く理解し、作品に表してくれる最高のアーティストでした。また、このアートプロジェクトは廣田さんが代表を務める「スンダランド・アートネット」として主催することになりました。

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     ↑緑さんの制作風景。CGNフォレスターのレナートがアシストしてくれました。

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      ↑映像作家・キドラット・タヒミック氏も参加。
       緑さんには作品のビデオ撮影の方法についてのアドバイスも。

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     ↑JUNさんの衣装の絵も緑さん制作です

そして、大阪のAmanTO天然芸術研究所のJun Amanto氏。2009年1月のコーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)主催のエコサミットへのゲスト参加と9月のバギオ市制100周年にバギオで催された「日比平和演劇祭」の「亡霊の彷徨う町」で日本兵の亡霊役を演じて以来、たびたびコーディリエラ地方を訪れてワークショップや公演を行って下さり、大戦がこの地域ではいまだ過去となっていないことを実感していて、悲惨な大戦記憶が残る棚田の中での慰霊パフォーマンスを快諾してくださりました。
そして、Junさんの呼びかけで参加を表明してくれた素晴らしいミュージシャンの方たち。シタール奏者の南沢靖浩さん、尺八の福本卓道さん、サックスと笛の山本公成さん。
そして、CGNともっとも長くふか~~いお付き合いの音楽ユニット「KURI」のKatsuさんとMihoちゃんのお二人。
「心身ともにハードな場所なので覚悟してきてくださいねえ!」
と事前にお伝えしてはいましたが、たぶん、想像してくださった以上の厳しい環境で、参加してくださった方たちにとっても、いろいろな意味で印象に残る旅とパフォーマンスだったと思います。(参加者の皆さんがそれぞれ旅日記をブログで公開してくれています。それぞれの見方、関心が面白い!ぜひ、読んでみてください)。


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    ↑尺八の福本卓道さん。卓道さんのブログはこちら

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    ↑シタールの南澤靖浩さん。南澤さんのブログはこちら

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    ↑サックスやいろいろな笛奏者の山本公成さん。公成さんのHPとブログはこちら

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    ↑おじさんミュージシャンに囲まれ、紅一点で輝いていたKURIのMihoちゃん
     KURIのブログはこちら

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    ↑「幸せの白い鳥プロジェクト」でも参加してくれたKURIのKatsuさん

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    ↑コーディリエラ民族音楽ミュージシャン・ケント

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  ↑もう一人の民族音楽家・エドガー。

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  ↑ステージはこんな感じです

廣田緑さんは、ほかの皆様より一足先にマニラ到着後、舞台となるイフガオに直行して作品に対するイメージを膨らませ、いったんバギオに帰って材料などの下準備をして、再びイフガオ入り。手漉き紙作家・志村朝夫氏が棚田でとれた稲わらを使って漉いた紙と「ロノ」とこちらで呼ばれている細い竹のような植物を素材に慰霊のランタンを制作してくれました。3日間という限られた時間の中で、すごい集中力で、ご飯を食べる時間も惜しみながら丁寧に想いを込めて制作を行い、
「最後はパーーーッと焼いちゃって、土に返しちゃってくださいね」
と、パフォーマーのJunさんにいさぎのよいリクエストをしてくれました。

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     ↑パフォーマンスの最後にたいまつの火で、インスタレーションは燃え尽きました。

パフォーマーのJunさんとの3人のミュージシャンの方々は、コーディリエラ地方の主要河川の水源をいくつも擁するマウンテン州カダクランに植林と演奏ツアーに行ってから現地に到着。KURIはバギオのフィリピン大学バギオ校でのコンサートを終えてから現地入り。舞台となる棚田をチェックし、ミュージシャンの演奏ステージの位置を指定し、CGNスタッフは、大急ぎでセットアップに取り掛かりました。
ボランティア参加の東大大学院生・山下彩香も、いきなりJUNさんの衣装担当をおおせつかり、稲わらの手漉き紙10枚で夜を徹して衣装作りをしてくれました。
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     ↑イベントの最後にはすべてを土に戻そうといういうことから、
      衣装も志村さん作の棚田の米の稲わらから漉いた紙を使いました。
      コンニャクでコーティングしているので、丈夫で防水性もあります。

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     ↑ステージは棚田です。ハパオ出身のCGNボランティア、ルエル・ビムヤッグ君が
      棚田の持ち主との交渉など、
      コミュニティとの方々との橋渡し役で大活躍してくれました。

棚田を縁取る1000個の稲わら手漉き紙のランタンは、ワークショップで子供たちと作るはずが、子供たちが飽きてしまって1000個には遠く及ばず、ミュージシャンの皆さんが夜を徹して、なつかしのフォークソングなどなどを歌いながら、500個以上を作っていただきました。

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     ↑Photo by KURI

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     ↑棚田には100個の舟形のランタンを浮かべました。

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     ↑Anak di Kabilingan(山の子供たち)劇団のメンバーも
      セットアップに協力してくれました。

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棚田のど真ん中にある、宿泊先となったイフガオ族の伝統家屋のあるロッジでの、缶詰合宿のような(棚田のあぜ道を歩くのがたいへんで、お出かけできないだけ)2日間。初めて顔を合わせた人も多かった超個性的な日本からの参加者の方たちですが、いつの間にやら、心はひとつ。本番の棚田でのステージでは、息のあった素晴らしい演奏とパフォーマンスを披露していただきました。

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感性のするどい参加アーティストの方たちは、たった3日間の滞在でしたが、この地では戦争がまだ終わっていないということを、実感して下さったのではないでしょうか。KURIがブログの中で「演奏している間、とても混沌とした気持ちになった」と書いていましたが、大戦によって汚されてしまった大地の記憶は、65年たったいまも、まだ癒されて切っていないのでしょう。戦争というものが、人の心や自然や大地に遺す傷は、とてつもなく深いもので、どんな長い年月がたっても癒されることはないのかもしれません。
イフガオの人々にとって、あの戦争は日本とアメリカの戦争であり、ただただ、先住民族が深く愛してきた土地を戦場として使われてしまっただけであり、その恨みは、無意識のうちに引き継がれ、世代を超えても消えはしないものなのだと思います。今回も毎度のごとく私たちは(特に日本人の年配の参加者は)、「山下財宝探し」の御一行様と疑われ、酔っ払った地元の人に絡まれたりすることもありましたが、それも65年前の恨みのひとつの現れ方なのかもしれません。

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私たちがおこなった慰霊と平和のためのアート・プロジェクトは、ほんのほんの小さな償いの行いで、コミュニティにイフガオの人々の心や土地に大きな変化が起こるなんてことはまったく思い描いていません。アート・インスタレーションとパフォーマンスを見にくれた多くのイフガオの方たちは、北ルソン日本人会の小国さんがブログで書いてくれていたように「いったいなんだべ?」という驚きの反応がほとんどだったとのこと。
でも、あえて、私は言葉によって今回のプロジェクトの意図を説明したり、パフォーマンスの意味を解説したりしようととは思いませんでした。美しい棚田と自然の中で暮らしてきた素晴らしい感覚の持ち主であるコミュニティの人々には、あの灯されたキャンドルの静かな美しさと、そのほのかな灯りで照らされた廣田さんの作品に込められた祈り、素晴らしいミュージシャンの方々の即興演奏に伴われ、JUNさんが9日間の断食のあとに全身全霊を込めて、棚田の泥にまみれながら表現してくれたあの地と人々が感じてきた怒りと悲しみと絶望、そして平和の願いが、きっと心の深いところに届いたものと信じています。
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なによりも、雨続きだったのが、あの12月18日はパラリの雨も降らず、パフォーマンスの間、雲の中からまあるい月がそっとのぞいてくれたこと、突然の停電によって素晴らしいミュージシャンの方たちの音楽がマイクを通さずに、静かに深く大地にしみこんでいく時間をいただいたことで、神様には歓迎されたイベントだったのではないかとひそかに思っています。

今、昨年のイベントを振り返り、参加の方たちに対する深い感謝とともに
癒されきれない大地のために、
「だから、二度と戦争をしてはいけない。二度と過ちを繰り返してはいけない」
という想いを新たにしています。 

  
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        ↑参加アーティストとスタッフ。すべてを終えて晴れ晴れした笑顔です。


※写真は、日本から参加してくれた写真家の直井保彦さんの撮影です。
 素敵な写真をどうもありがとう。

CGNスタッフ・ブログでも、参加の松野下琴美が体験記をアップしています。そちらもぜひ。

by cordillera-green | 2011-01-11 09:37 | 環境イベント


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