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2011年 09月 12日

青年海外協力隊・木村さんからのうれしい報告です

フィリピンで活動している青年海外協力隊(JOCV)はたくさんいるようですが、コーディリエラ地方で活動しているのは、現在、イフガオ州のイフガオ国立大学(IFSU)に配属されている木村暁代さん一人とのこと。日本語の事業や日本文化紹介などとともに、環境問題にも関心の高い木村さんのコーディネイトで、IFSUでエコシアターキャラバンを実施した時のことを、木村さんがJOCVフィリピンの機関誌「TARABAHO」に寄稿してくれました。エコシアターキャラバンが地方でどんなふうに受け入れられているかとてもよくわかるので、木村さんの許可をいただいて、転載させていただきます。
ちなみに、この企画がとても評判がよかったので、来月のイフガオ州国立大学の設立記念日でふたたび環境シアター・ワークショップが実現しそう。楽しみです!

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イフガオの「こころ」を教えてくれたのは、
学生たちでした


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    ↑イフガオの伝承より。わが子の誕生の喜び!

★ECO THEATER CARAVAN@IFSU!
環境NGOコーディリエラ・ネットワーク(以下CGN)の代表、反町眞理子さんに初めてお会いしたのは2010年9月の終わりのことでした。CGNはコーディリエラ山岳地方で2001年から活動している環境NGO。以前からCGNの演劇を通した環境教育プログラムに興味があった私は、「イフガオ州立大学に是非来て頂けませんか?」とお願いしたのです。
大学とJICAにも経費の支援を頂き、そして迎えた1月27日。大学の会議室にファシリテーターのAngelo・Aurelio(以下ジェロ)さんのもとに緊張した面持ちの学生たち(年齢は16歳から30歳!) が集まり、いよいよ4日間の演劇ワークショップが始まりました。
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    ↑オープニング。イフガオの魂を聴け!

大半が演技の経験は全くない学生たち。ジェロさんは発声、体の使い方など基本的な演劇のメソッドを教えながら、一人ひとりとコミュニケーションを取ることでそれぞれの個性を見極め、才能を引き出しています。自分をさらけ出さなければならない演技のトレーニングは体力以上に精神的にも大きな負担。たくさんのジョークや笑いと共に時には激しく叱り飛ばすジェロさんに必死でついていこうとする学生たちにも疲労の色が見えだします。2日目終了時点で「自信がない」「出来ない」という声がちらほら。実際脱落者も出てきました。一体、最終日の夜に本当に上演が出来るのだろうか…そんな不安がよぎります。もっとも彼らの名誉のために言えば、その中には週末にかけてのワークショップだったために下宿生活費がなくなり、不本意ながらも実家に帰らざるを得なかった子たちも少なくなかったようで、これは完全に日時をコーディネートした私の責任。現状認識が甘かったのです。もう一つの心配は観客数。こんなに頑張っている学生たち。もし観客が全く入らなかったら、どんなに傷つくだろう…心が休まらず、準備の合間を縫って開演1時間前まで大学周辺でひとりビラを配り続けました。
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     ↑劇中では伝統的な暮らしを再現 
1月30日夜7時。上演時刻。嬉しい誤算、400人は入る会場は学生や近隣住民で満席。座りきれない人が出るほどです。ジェロさんとCGNテクニカルチームの演出に観客も沸き、日本語クラスの学生たちも「今日の日はさようなら」「ビューティフル・サンデー」の歌とダンスを披露。そして37人の学生たちの演劇は私の予想をはるかに超えた力強く素晴らしいものでした。
その日上演された3つの演劇はイフガオの伝承、もう一つは現代劇にイフガオの伝承を絡ませ自然保護とコミュニティへの想いを訴えたもの。民族衣装に身を包み、イフガオの言葉トゥワリ語で演じ、踊り、歌う学生たちの何と凛々しいことか。表現することの喜び、自らのアイデンティティへの誇り。誰もが自分の力を精いっぱいに出しきった、忘れられない一夜となりました。

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    ↑生まれて初めて民族衣装を着たという学生も少なくなかった 
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    ↑故郷への想いを歌う

終了後の学生たちのワークショップについての感想文から一部を紹介します。
[It more more to love my identity and understand the Environment.]
[I came to realize how rich our culture is and was able to appreciate its inner eauty.]
[I love Ifugao very much because this is my hometown. I would gladly do all my best to protect this place.]
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     ↑力強い歌声の中、堂々たるフィナーレ!

環境問題について、単純に「人間VS自然」「文明VS自然」「人間が滅びるか、地球が滅びるか」などと言うことは出来ない、と思うのです。環境破壊が行われるとき、自然災害が起きるとき、犠牲になるのは木々だけではなく動物たちだけではなく、抑圧された立場の人々です。先進国や都会の人々が豊かに暮らすための開発に伴う自然破壊は、自然と共に生きる人々の暮らしや伝統文化を破壊することでもあります。
厳しい自然の中、精霊を敬い、誇り高く生きるイフガオの知恵を、忘れられつつあったメッセージを、あの夜すべての出演者と観客が感じたと思います。たとえ、まだ言葉にならないものだとしても。
そして、人間が生きていく上で、「表現すること」がどれほど大切なことかを、ときに感動が知識や思考以上に強く人を動かす力を持つことを、私は学生に教えられました。その夜中、興奮で眠れなくなった私は、一度は勉強したのに、ほとんど通じないからと投げ出してしまっていたトゥワリ語のノートを久しぶりに引っ張りだしました。イフガオの文化を、ここに暮らす人々のことをもっと理解したくなったのです。

もう一つ嬉しかったこと。一緒に夜遅くまで働いてくれたカウンター・パートからの思いがけない一言。
「これで終わりにしちゃいけない。もう一度やろう。続ける努力を、資金を作る方法を探そう。イフガオの各地でこのシアターを上演しよう。」
イフガオの熱い誇りを胸に、フィリピン、そしてこの地球のために行動する人々がこの大学、この山の中の小さな町で育つことを私は願っています。そしてその中の1人に私もなりたい。これは播かれたばかりの小さな種にすぎないかもしれないけど、でもきっと大丈夫。だってイフガオの人々ほど「打てば響く」人々を私は知りませんから。

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by cordillera-green | 2011-09-12 20:51 | 環境教育


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