2012年 09月 28日
マウンテン州サバンガンで実施中の「アートを活用した環境教育ワークショップ」シリーズにマニラからファシリテイターとして来てくれたアルマ・キントさん(Alma Quinto)。布を使った「ソフト・スカルプチャー」という手法で、社会的に弱い立場にある人を対象にたくさんのワークショップをフィリピン各地や海外で行ってきています。日本にもアルマの熱烈なファンのアート関係者の友人がいて、今回は彼女の紹介でアルマのワークショップを逆輸入。 「いつもやっている紛争地域や被災地などではないけど、”環境問題”をテーマに先住民の子どもたちを対象にワークショップをやってくれないかしら?」 という私たちのリクエストに 「もちろん。環境問題も私のトピックスの一つよ」 と快く応え、遠い遠い山の村まで出向いてくれました。 山岳地方と一言で言いますがいろいろな先住民族が暮らしていて、風習や暮らし方や人々の性格も本当に驚くほど違います。CGNがこの事業を行っているサバンガン町は、幹線道路のハルセマ・ロードからも近く、バギオやマウンテン州州都・ボントク、ベンゲット州の州都トリニダードとの交流も盛んで、住んでいるカンカナイ族もそんなに閉鎖的ではありません。山の村々の中では教育レベルも高い方だと思います。 ポブラシオン村とその近くだけでも小学校が3校もあって、一クラス20人~30人と、バギオ市の50人以上という詰めこみ公立校に比べたらぐっと恵まれた環境です。今回アルマがワークショップを開催してくれたのはその3つのうちのひとつサバンガン小学校4-6年生の約50人です。 さすがに百戦錬磨のワークショップ・ファシリテイターのプロ、アルマ。あっという間に子供たちの心をつかみます。丸くなって床に腰かけて、子供たちと同じ視点で大口開けて笑いながら話すアルマにあっという間に子供たちは魅了されていきます。 ↑きれいな明るい色のアルマの洋服も子供たちの目を引くワークショップ・ツールの一つですね。 最終的に作るものは布を使ったタピストリーと決まっていますが。それまでには、身近な自然に関するハッピーな思い出についての絵を描いたり、グループになって自分のうちから学校までの地図を書いてゴミが捨ててある場所を書き込んだり、、小さなアート教室を重ねて、村の豊かな自然やそれを壊そうとしているゴミについて考える機会を得、最後に 「じゃ、そんなゴミがたくさんのみんなの村はどうしたらきれいになるかしら?」 と、アップリケによる布でのお絵かき開始です。 同じサイズに四角く切られたカラフルの布の中からお気に入りの色を選んで、CGNのスタッフがバギオの市場のテイラー(縫製やさん)から山のように集めてきたハギレの中から、気に入った布を選び、はさみでチョキチョキ。またまたカラフルな色の糸の中から好きな色を選んで縫い付けていきます。日本だったら「まず鉛筆で印をつけて、とか、下絵を描いてから。。とか指導されそうですが、誰一人「下絵を描いていいですか?」なんて言わず、迷わずハサミを入れ、真剣な表情でチクチク。 アルマ曰く。 「マニラでやると、裁縫なんて女の仕事だろう? 僕はやりたくない!」 っていう子供が必ずいるとか。 「ここでは男の子もためらわずに針と糸を使ってくれてうれしいわ」 とにかく山の子供たちは元気いっぱい。ちょっと飽きちゃうと適当に遊びに行って、でもまた戻ってきて作業を続けます。 「ほら、あの子、スペシャル・チャイルド(障害のある子)でしょう? 集中して作業はできないから、引っ掻き回したりしているけど、だれも邪魔者扱いしないし、上手に相手にして、ちゃんと仲間に入れてあげているのよ。都会の子にはなかなかできないの」 とアルマ。いつもの家庭の問題のある子や社会的に虐げられた立場の人たちとは違って、はじけんばかりに感情を外に出す子どもたちとのワークショップをとても楽しんでくれたみたいです。 最終日の3日目にはそれぞれが作った四角い「ゴミ問題解決策」の布の絵を一つに縫い合わせてタピストリーにします。もちろんその作業をするのも子供たち。 「明日は日曜日だけど手伝ってくれる人~~?」 というアルマの呼びかけに、たくさんの子どもたちが元気よく手をあげました。アルマによって選抜チームが結成され(選ばれなかった子供たちも来ちゃいましたが)、みんなの力が合わさった大きなタピストリーが完成しました。 アート・ワークショップでのファシリテイターの役割ってなんだろう? ってワークショップを企画するたびに考えます。 ファシリテイターによって考え方はいろいろですが、 参加者にアイデアを生むきっかけを与え、その力を信じてゆだねて、たぶん参加者自身も驚いちゃうような何かを生み出すように導いて、作るって楽しい!ってアートマジックをかけちゃうこと。 もちろん子どもたち対象のワークショップでは、思ったことを表現できるようにするための技術の指導もちょっぴり必要ですね。 今回の環境教育ワークショップ・シリーズでは、自然や環境をテーマとしているので、日常生活や自然の中にある素材探しやテーマ探しも大きな要素になっています。そのへんは、実は外から来たファシリテイターよりも参加者の子どもたちや先生や村の老人たちの方がよく知っていることなので、ファシリテイターのほうが村の人たちに教えを請わなくてはいけないところです。それもまたファシリテイターが村の人に「教える」という一方的な関係じゃなくて、ワークショップの楽しいところ。ファシリテイターのほうもいろいろ新しい発見があったリ学べちゃったりします。 今回のような学校でのワークショップでは、共同作業という側面も考えに入れなくてはなりません。参加者によって、いろいろな考え方、表現の仕方があるけど、それを一つにまとめて大きな形になってのを目にした時の喜びは大きなものがあります。そのへんはプロのアーティストであるファシリテイターの力の見せどころかな。それぞれの個性的な作品が結集した大きな見栄えのする作品になったら、作る楽しみに目覚めちゃう子供たち続出!と思います。 今年の夏(日本のね)バギオで演劇ワークショップをしてくれた劇団「黒テント」代表の宗重さんが 「旅もワークショップも、ゆだねなくてはいけませんね」 とおっしゃっていましたが、 道具や会場や下調べなど準備はばっちりして、でも方向性はゆるーーーく定めて、 あとは参加者の子どもたちにゆだね、 以外なる成果物に驚き動揺しながらも、子供たちの真剣なまなざしを思い出してプレッシャーをまじに感じながら、一人一人の思いが伝わるような作品に仕上げてあげるのが、ファシリテイターの役割かもしれないと学んだアルマのワークショップでした。 このタピストリーは11月23-25日の「コミュニティ・エコ・アートフェスティバル イン サバンガン」で、そのほかの環境教育アートワークショップで作った作品と一緒に展示します! また、アルマ・キントさんは10月、福岡アジア美術館のアジアの女性アーティストたちの作品展のために日本に行きます。大阪ではワークショップも企画されています。ぜひ、アルマに会いに行ってみてください。 アジアの女性アーティスト展「アジアをつなぐ-境界を生きる女たち1984-2012」 (福岡アジア美術館/2012年9月1日~10月21日) http://faam.city.fukuoka.lg.jp/exhibition/detail/23 アジアをつなぐ わたしたちがつなぐ ワークショップとフォーラム 2012年10月18日(木) 大阪大学待兼山会館会議室 http://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/seminar/2012/10/5262
by cordillera-green
| 2012-09-28 10:48
| 環境教育
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