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2019年 10月 07日

コーヒー育苗による森林保全事業 2018-2019報告① 実験苗場と苗木づくり

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コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)では、京都のNGOマナラボ 環境と平和の学びデザイン」とともに、「フィリピンのコーヒー育苗による森林保全事業」を、2018年―2019年にかけて実施しました。今回の事業はタイトルの通り、コーヒーの苗木づくりに焦点を当てたものです。(国土緑化推進機構 緑の募金公募事業/WE21コーヒーの森連絡会サポート)

 

CGNがアラビカ・コーヒーの木の最初の試験的な森林農法による植林をキブンガン町でしたのは2006年です。そのころ、コーディリエラ山岳地方では市場経済が入り込みはじめ、野菜栽培を行うための森林破壊がすごい勢いで進んでいました。森林破壊を食い止めるにはどうしたらいいかと官民を挙げて試行錯誤を繰り返していました。

バギオ市のお隣のラ・トリニダード町にある国立ベンゲット州大学Benguet State UniversityBSU)の高地農法システムと森林農法研究所Instituteof Highland Farming Systems and Agroforestry (IHFSA)では、コーディリエラ地方、特にベンゲット州に多い松(ベンゲット・パイン)の木の下でも、アラビカ・コーヒーが成長するというリサーチ結果がありました。環境に大きな負荷を与えないで、先住民の生計を助ける作物がないかと切り札として「アラビカ・コーヒー」が着目され始めたのです。

https://philcoffeeboard.com/learning-from-seed-to-cup/

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CGNBSUのマカネス・ヴァレンティーノ教授の指導に従って、2006年、イオン環境財団の助成を受け、キブンガン町サグパッド村に6000本ほどのアラビカ・コーヒーの苗木をベンゲット松の木の下などに植え、その生育具合の観察を始めました。

そのころキブンガン町では、大量に栽培されているという違法な大麻に代わる作物として、自治体もアラビカ・コーヒーの苗木の支給を始めていました。環境保全を目的とした環境資源省(DENR)、換金作物の栽培を目的としている農業(DA)もコーヒー栽培を推奨し始め、かなり多くの苗木がキブンガン町のいたるところに植えられたと思います。

それから早くも13年がたちます。サグパット村であの時私たちが支給した6000本のうちのどのくらいが生育しているかはわかりませんが(他団体から支給された苗木と区別がつきませんから)、キブンガン町ではアラビカ・コーヒーは一つの大きな産業となっています。すべての農家がコーヒー栽培に熱心だったとは言えませんが、一部の農家ではかなりの量を収穫をできるまでになりました。


CGNでは、キブンガン町以外にもアラビカ・コーヒーの栽培事業を拡大し、ベンゲット州カバヤン町、トゥブライ町、カパンガン町、マウンテン州バーリグ町、タジャン町などでもアラビカ・コーヒーを中心としたアグロフォレストリー(森林農法)による栽培指導を行ってきました。イオン環境財団には現在に至るまで毎年助成をいただいてこの事業をサポートしてもらっているほか、神奈川県のNPO法人WE21ジャパンにも継続的にサポートをいただいています。もやいネットなど、日本のパートナーNGOを通して国土緑化推進機構・緑の募金からのサポートも何度かいただきました。


事業地で収穫が始まってからは、収穫したコーヒーの実の加工指導も事業内容に加え、品質のいいコーヒーを生産するための技術指導やコミュニティで共有できる小さな加工機材や乾燥資材の提供も行ってきました。たまたま2014年からBSUに森林農法とコーヒー栽培を学びに来ていた山本博文氏には、留学中の2年間、ほんとうに多くのことを教えていただき、彼の指導で山岳地方のコーヒー栽培は大きな進歩を遂げました。

日本のフェアトレード会社への生豆の輸出も始まり、2019年は良質な生豆5トンを輸出するまでになりました。

しかし、10年以上コーヒー栽培に携わっているスタッフにはジレンマもありました。当初予測していた生産量には遠く及ばないのです。いったい原因はなにか?

私たちはもう一度、BSUに指導され私たちが行ってきたアラビカ・コーヒーの栽培の仕方を見直してみようということになりました。


最初は疑心暗鬼に始めたコーヒー生産が収入に結び付くということが証明されはじめ、いまも多くの農家が新たにコーヒー栽培に乗り出しています。CGNをはじめ、地方自治体、農業省、環境資源省、そして加工に関わる通称産業省(DTI)も多くの山岳民族の農民へのサポートを継続しています。

いまからでも決して遅くありません。農家の人たちの努力が報われる地域にあったコーヒーづくりを目指しての仕切り直しです。同時にコーヒー栽培がブームになっている今、現在残っている原生林を破壊して、コーヒー栽培を始める人がいないよう、アグロフォレストリー(森林農法)についてもう一度見直し、環境保全型の栽培を指導していこうということになりました。


NGO「マナラボ 環境と平和の学びデザイン」(京都市)は、私たちの置かれている状況を理解して協力を申し出てくれました。マナラボとともに地域にあった品種を選び、地域の厳しい気象・地理条件でも生き延びることのできる丈夫なコーヒーの苗木の育成事業と、環境に負荷が少ないアグロフォレストリーによる栽培指導が始まりました。(国土緑化推進機構 緑の募金公募事業)


以下は事業を担当したフォレスター、リリーからの報告です。

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*****

 環境保全に取り組むNGOとして、本プロジェクトではコーヒーをアグロフォレストリー・システムで栽培し、土壌と水質の保全と保護を行うと同時に、コミュニティの生計を助けることを目的としている。ゆえに、当事業では品質の良い苗木と認証のあるアラビカ・コーヒーの実験的な生産を行った。

当事業ではそれぞれ気候条件の違う3つのコミュニティで実験苗場を作った。

 

●コミュニティの選考

 計画では、苗場の造成地は、標高が高いところ(1600メートル)、中くらい(1400メートル)、低いところ(1000-1100メートル)としていた。それに基づき、標高が高いところはベンゲット州マンカヤン町バリリ村、標高が中くらいのところはベンゲット州トゥブライ町アンバサダー村。標高が低いところはマウンテン州タジャン町のカヤン村とした。

 標高の一番高いマンカヤン町バリリ村は通常午前11時には雲が出て、午後にはよく雨が降る。温度は15-22度くらい。トゥブライ町アンバサダー村はバリリ村に比べると、湿気は少なく、雨季でも雨の多くはない。気温は15-26度くらい。タジャン町カヤン村は暖かいが、早朝は気温が下がる。とくに乾季は湿度は低い。

 

●苗場(現存している苗場)へのカティモールの実験的育苗

地域の気候に合っているのんではないかと山本氏の推薦があったカティモール(当地域ではモンドノーボと長い間呼ばれてきた)という品種の苗木の実験的栽培を行った。カヤン村とアンバサダー村の現在使われている苗場にスペースがあったため、そこを利用した。マンカヤン町バリリ村には苗場はなく、すべて新しく建設した。

 

カヤン村とアンバサダー村では直径3インチ×高さ10インチのビニールポットに苗を育成した。ポットの中には通常ベンゲット州国立大学の指導に基づき、堆肥50%と土壌50%を混ぜたものを使用した。苗場では黒ネットで日照を50%に調整した。   

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<観察結果> 

二つの苗場とも初期ステージでの発育がよく、堅牢に育っていた。 しかし、苗木生育の後期ステージでは生育スピードはおそくなり、アンバサダー村の苗場では葉枯れや病気が観察された。栄養分はすでに苗木に吸収されており、葉枯れと病気は苗木を弱らせている要因である。こういった事例には苗木の生育を助ける処置が必要になる。

カヤン村では、豚の尿を水で希釈して1週間に一度スプレイしていた。また、ミミズ堆肥の施肥も行った。これらは移植までにコーヒーの苗木が必要としている処置である。堆肥のみでは十分でないと考えられる。苗木への継続的な処置が、のちのコーヒーの順調な生育には欠かせない。

               

標高が高低によるカティモールの苗木の生育状況の比較も行った。二つの苗場とも苗木の移植前までの生き残り比率は高かった。 

標高の高いアンバサダー村の苗場の苗木のほうが、追加の処置をしなくても苗木の葉と新芽がつるつるとしていた。しかし、標高の低いカヤン村の苗場の苗木のほうが生育は早い。カヤン村の苗木は1-1.5フィートに生育していた時に、アンバサダー村の苗木は1フィート以下であった。

上記のような処置は苗木の生育のサポートになる。生育状況の比較をするために、苗木の根のシステムの処理はこの実験では行わなかった。カティモールは、病気に敏感であるが、日陰で元気に生育していることが観察された。移植後の生育状況をさらに観察することが求められる。

 (この観察は、20188月から20196月に行われたものである)

 

 ●実験苗場のための種の入手と苗床への種まき

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ラオスからの証明書のある種の入手は事情により20194月になってしまった。コーヒーの種は、ラオス・コーヒー・リサーチ・センターから入手した。

以下がコーヒーの名称である。

1. H373

2. F5

3. C166 

4.P88

5. P 86  

6. P90

7. ST113 

8. B02

9. F5

10. T8667

11. T5175  

12.LC1662

13. Y 

14. G1702

15.H377  

16.H528

 

上記の種は2019618-19日に、マンカヤン町バリリ村の標高1600メートルの苗場に、527日にマウンテン州タジャン町カヤン村の標高1100メートルに作られた苗場に、522日にトゥブライ町アンバサダー村の標高1400メートルの苗場に蒔かれた。

 それぞれ、発芽率は60%(バリリ村)、70%(カヤン村)、80%(アンバサダー村)である。苗場で種をまくときに、バリリ村とカヤン村では、コーヒーの品種別にタグをつけて種をまいたが、アンバサダー村では種まきを担当した現地の農家が観察実験の意味を解さず、品種を分けずに種まきを行ってしまった。

入手した種の品質が悪かったのは、保存の仕方にあると予測される。コーヒーの発芽は収穫後6か月がもっともいい時期とされているが、種まきまでの保存の時期が長すぎた。また、ビニール製袋に長い時間保存されていたため、一部の種は腐ってしまっていた。種もまた生き物である。慎重に取り扱われるべきであった。

              

カティモール種の種はベンゲット州国立大学で購入した。カティモール種の種は苗床にマンカヤンに2019315日、カヤンで201935日、コロスで524日に蒔かれた。 

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種まきの日と発芽の日

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  種まきの時期、気候の違い、そして種が含んでいた水分の違いが、発芽までの時間に影響を与えている。一般的にコーヒーの種は雨季で1か月くらいで発芽し、乾季では2か月前後で発芽する。

カティモール種は、発芽した種の観察を通して、三地域すべてで栽培に適しているということができる。発芽した苗木のポットの中に用意した培土の違いによる生育状況は以下である。培土の種類別に最低200個を栽培している。

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以下の培土で生育を観察した。標高の違いによる平均的成長の具合(㎝)

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20197月時点で、カティモール種の苗木は元気に健全に生育している。マンカヤン村、カヤン村、アンバサダー村で育成中の苗木の高さはだいたい3-4インチである。中には2インチのものもある。

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 強化剤と農薬をかけた苗木に成長は見られなかった。苗場に苗木があるうちは引き続き観察を続ける。移植が行われたのちも、継続して気候条件の違いによる生育助教の違いの観察を行っていく。

 

●苗木育成のための苗場の造成

 バリリ村では苗床で種まきを終えたのちに、苗木場の造成を行なった。バリリ女性組織、ブギアス地区刑務所勤務の兵士と警察が土地提供者とともに造成作業を行った。バリリ女性組織がポットへの土入れの作業を行った。2019612日は13人の刑務所の職員と6人のCGNのスタッフとボランティア、656日は10人のベンゲット州国立大学森林学部の学生とCGNスタッフ2名で作業を行った。ポットへの土入れ作業はその後も土地提供者とボランティアによって継続された。

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アンバサダー村では、種まきに先んじて新しい苗木場の造成が行われ、20196月に完成した。土入れ作業はアンバサダー村の農民組織MOAPAメンバーとベンゲット州国立大学の学生4名によって、2019656日に行われた。その後、苗床に蒔いた種が発芽し、ポットへの植え替え作業が行われた。

 

カヤン村の実験のための苗場は個人所有の苗場の中に造成された。ラオスから入手した種の発芽率は30%にとどまっているが、引き続き観察を行っている。大量の苗木を生産するための苗場はベンゲット州カパンガン町でダイユコン農民組合を受益者とした。

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 2019年7月現在、バリリ村では1万本のカティモールの苗木が育成されている。ラオスから入手した種は苗床で発芽したところで、まだポットに植え替えられておらず、本数はわからない。

アンバサダー村でも1万本の苗木が生育中。ラオスで入手した種は発芽したばかりでまだ植え替えられていない。カヤン村では2000本のカティモールを育苗中。ラオスから入手した種は現在ポットに植え替え中である。


BPI(植物産業局)への苗場登録申請は延期となった。最低25,000本の苗木ポットがなくてはならず、最低1年間運営が行われていたという経歴が登録の条件であり、それを満たせていないためである。現在育成している苗木の数は各苗場とも約1万本であり、まだ1年が経過していない。今後、条件が満たされ、苗場の管理組織が望んだ場合、登録手続きを自主的に行うことになる。

 

●苗木づくりに関する講習会開催

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 この講習会は本事業を担当するリリー・ハミアスによって、2018712日(カヤン)、727日(コロス)、2019215日(マンカヤン)において開催した。主な講習内容は以下である。

<プラスチック製のポット> 

アラビカ・コーヒーの苗木づくりに適したポットの大きさは、3×3×10インチである。このサイズは森林樹種の苗木づくりに使うものより大きなものである。コーヒーはポットに植えた後、約6か月(クラシック・ビーンズ)から1年(BSU)で植樹地に移植可能になる。ポットの中で生育しすぎるとコーヒーの苗木の根はカールしてしまい、移植時に根の剪定が必要となる。茎と根の長さの比率を観察することが必要だ。

 <ポットの中の培土>

インドネシアのコーヒー専門家が強調しているように、コーヒー生育の基礎となる根はたいへん重要だ。

ポットに入れる培土はふるいにかけて使う(石や大きな土の塊、茎などを取り除くため)。そうすることで根はまっすぐに伸びる。ポットの中の培土は堆肥とまぜ、水をかけたときに土が固まらないようにすることが必要だ。

 <日陰を必要とするコーヒーの苗木> 

苗場は、苗木の葉が焼けるのを防ぐために、日陰を必要とする(黒ネットや木の葉によって)。日陰によって、葉枯れを防ぎ、苗木を弱らせないようにし、病気になることを避けさせることができる。コーヒーの木は生育に50%の日陰が必要だ。

 <種まき>

コーヒーの種は平らなほうを下向きにおいて蒔くことが必要だ(胚の部分が土に触れるように)。そして線上の溝を作って、まっすぐに穴をあけて種をまく。蒔く種にダメージがあってはいけない。病気のない種を選ぶ。ピーベリーも種には適していない。シェル豆(空洞になっている豆)も種には使ってはいけない。以上もエコ氏の講習会で説明された。

               

●コーヒーの古木の更新剪定(リジョビネーション)について

 コーヒーの古木の更新剪定は、トゥブライ町アンバサダー村のフェリー・ダミーロ氏のコーヒー農園で、試験的に2018723日―25日と201961112日に行われた。2018年には約30本、2019年には約40本の、20年以上たっているコーヒーの古い木を更新剪定をした。

20187月は、農園の持ち主、コロス集落の農民組織MOAPAのメンバーと4人のボランティアの学生によって作業が行われた。20196月は、農園主とMOAPA代表のエドウィン・ビサヤ氏と3人の学生ボランティアによって行われた。2回ともボランティアの学生はベンゲット州国立大学農学部の学生で、農園主の指示で更新剪定を行った。現在までに、更新剪定をしたコーヒーの木のうち100%が生存し、新たな芽が出てきて、フェリー・ダミーロ氏が管理をしている。ダミーロ氏の農園が更新剪定をした木としていない木を比較するための格好のサイトとなっている。

 

●植樹活動

 植樹活動はCGNの活動のコアをなすものであり、毎年可能な限りコミュニティにおいてパートナー団体やボランティアとともに植樹を行っている。植樹活動は苗場を造成した3つのコミュニティで実施した。カヤン村での植樹は201881819日に実施され、12人の日本人学生がカヤン村の住民の植樹をサポートした。学生たちはサミュエル・サヨグ氏の土地で植樹を行った。アンバサダー村では、2018811日に日本人ボランティア学生と組織メンバー6人で植樹を行った。2019622日にも5人の日本人ボランティアと4人の組織メンバー、CGN3人のスタッフで植樹を行った。バリリ村では、15人の警察官がCGNが寄付した苗木の植樹をおこなった。

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by cordillera-green | 2019-10-07 22:02 | 植林/アグロフォレストリー


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