2021年 03月 01日
フィリピン・ベンゲット州における鉱山開発地域の森林再生事業 「土地保全のためのシステム:トゥバ郡キャンプ3村における 持続可能なコーヒーをベースとしたアグロフォレストリーの推進」 中間報告(2021年1月) このプロジェクトは京都の環境NGO「マナラボー環境と平和の学びデザイン」が、パートナーである私たちフィリピンの環境NGO「Cordillera Green Network」から、鉱山開発の影響で荒廃している地域の状況とそこで植樹によって環境再生を図りたいと行動を開始している住民の話を聞いて共感し企画してくれたものです。国土緑化推進機構「緑の募金」の助成を受けて、2020年7月から開始し現在(2021年1月)も実施中です。 当初、マナラボのスタッフは、こちら植樹事業地に赴き、植樹活動、土地利用や環境状況を調査する予定でした。しかし、3月にコロナ感染拡大で移動制限が敷かれたまま、2021年に入っても渡航制限は解かれていません。 事業地であるここフィリピンの移動制限は日本より厳しく、マナラボのパートナー団体である私たちも昨年8月までは植樹地への訪問がかなり厳しい状況で、苗木の運搬も当初の予定より遅らせざるを得ませんでした。しかし、植樹地の住民たちのモチベーションはたいへん高く、苦労して移動許可をとって現地を訪れた森林官の指導により、配布された苗木の植樹作業を問題なく終了させてくれました。本プロジェクトで植樹予定の残りの苗木に関しては、植樹に適する雨季をまって(5月)再開する予定です。 以下、当事業を担当している森林官のマイラ・セセットからの報告です。 ***** 持続可能なアグロフォレストリーは、森林被覆を維持し、さまざまな森林土地の転換による森林の劣化を防ぐためのツールであることが証明されています。コーヒーをベースとしたアグロフォレストリー・システムを取り入れることで、農業と環境分野に大きな利益をもたらすと同時に、コミュニティに経済的な利益をもたらすことができます。 本プロジェクトの事業地であるベンゲット州トゥバ郡のキャンプ3とキャンプ1では、3種類の土地利用があります。林地、鉱物採掘場、農地であり、地域社会と地方自治体は資源の過度な搾取をしないようにバランスのとれた管理をしなければなりません。 トゥバを拠点とするマスター・オブ・オーガニック熟練農業者協会 (Master of Organic Skilled Farmers Association Inc. =MOSFAI)は、環境に優しい有機農業を推進するために、トゥバで稼働しているフェリックス鉱山採掘会社によって組織された組織です。この組織の目的は、化学肥料や農薬を使わずに、自然の恵みと資源を利用した持続可能な有機農業を行うことです。MOSFAIのメンバーは、有機農業を実践し、一部のメンバーはコーヒー栽培を始めすでに始めています。また、国家緑化プロジェクト(National Regreening Project)(環境自然資源省)の森林再生活動をサポートして、植林活動も行ってきました。環境自然資源省からは国家緑化プロジェクトが終了したのちも、森林保全を継続するように指導されています。地域住民は森林再生と同時に持続可能な栽培方法でコーヒー農園を持ちたいという関心があり、MOSFAIの役員たちによって、コーヒーをベースとしたアグロフォレストリープロジェクトが バギオ市をベースとする環境NGO「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)」に提案されました。CGNと京都の環境NGO「マナラボー環境と平和の学びデザイン」は協力し合い、緑の募金一般公募事業として助成を受け、2020年7月にスタートしました。 〈事業成果〉 コロナ(COVID-19)感染拡大を防ぐコミュニティのセキュリティ対策で、植樹予定地であるトゥバ町では2020年3月半ばから外出制限が実施され、このプロジェクトの活動は大きく影響を受けました。CGNの森林官チームの調整により、トゥバ町自治体農政課、ベンゲット州トゥバ郡キャンプ3バランガイ、キャンプ1バランガイ、そしてMOSFI メンバーの協力で、2021年1月までに実施できたプロジェクトの活動は以下です。 1.コンサルテーション&オリエンテーション 2020 年 7 月 8 日、移動制限下でのプロジェクト実施についての意見交換のために、CGNの プロジェクトコーディネーターである森林官マイラ・セセットと MOSFAI 代表オスムンド・サベロ氏による打ち合わせが行われました。プロジェクトの目的、活動内容、1年間のプロジェクトのスキーム、各チームの責任などについて協議しました。実施計画・内容を見て検討した結果、サベロ氏は、感染拡大で移動制限、集会の禁止などがあり困難を伴うことを理解したうえで、プロジェクトを推進したいと表明しました。 そして、2020年8月19日、CGNの担当森林官セセット氏はMOSFAIメンバー3名(植樹予定地の二つの集落それぞれの代表者)を対象に、本プロジェクトについてのオリエンテーションを再実施し、両集落とともにコミュニティのコロナ感染対策を考慮したプロジェクトの実施方法を計画しました。 2.植樹予定地のアセスメント 2020年8月19日・22日に、植林・再植林地として提案されている植樹予定地において、コーヒーと森林樹種の苗木の適性と本数を確定するための調査を実施しました。 3.苗木の調達・運搬 植樹のために調達した苗木は、アラビカ・コーヒー4,183本、カリアンドラ2,000本、アルヌス1,000本です。 コーヒーの苗木は、トゥブライ郡コロス集落の苗場から2,183本(2020年8月14日・22日)、トゥバ郡キャンプ3バランガイ、トレ集落の苗場から2,000本を調達しました。森林樹種の苗木については、カリエンドラはMOSFAIの苗場で調達し、アルヌスはトゥバ郡キャンプ1,リガイ Ligay, バスティアンBastianにあるデングワテンDengwaten氏のプライベートの苗場で購入しました。 4.植樹活動 CGNの担当森林官が現地に行くのが困難な中で、オリエンテーションで合意された通り、MOSFAI代表とディンワタン氏は、苗木の配布と植樹活動について、たいへんよくメンバーに指導し助言をしてくれました。 植樹活動は、MOSFAIのメンバーとコミュニティ内のいくつかのグループによって、2020年8月から10月にかけて実施されました。アラビカ・コーヒーとアルヌスの苗木については、受益者の私有地に、カリエンドラの苗木については、コミュニティ内のアラバンと呼ばれる荒廃した地域に、共有林再生を目的として植樹しました。コミュニティのプロトコルを遵守するために、代表はスケジュールを立て、1日あたり植樹をする人を8人に限定したグループを作りました。彼らは15日連続で植樹をし、2000本の苗木を植えることができました。 受益者ごとの植樹を終えた苗木の数 受益者であるMOFSAIメンバーの持続可能なコーヒーをベースとしたアグロフォレストリー農園作りに対する協力と関心により、今回の植樹シーズンには7,183本の苗木を植樹することができ、メンバーは今後も予定された本数を達成するために植樹を続けていくという強い意欲があります。 5.植栽されたコーヒーと森林樹種のモニタリング 2020年12月23日と2021年1月11日に、苗木が適切な場所にきちんと植えられ、順調に生育しているか確認するため、CGNの担当森林官がMOSFAIの代表と受益者と一緒に、ベンゲット州トゥバ郡キャンプ1バランガイのバスティアン/リゲイ集落と、キャンプ3バランガイのトーレ集落に新設・拡張されたコーヒー農園のモニタリングを行いました。 モニタリングの結果は、植えられた苗木のほとんどがすでにその環境に定着しており、新葉や新梢が発達し、逞しく成長していることが確認されました。植樹地には、コーヒーの生育を助ける十分な日陰の木(シェイドツリー)があります。アルヌス(ハンノキ属)、ハウイリ(Ficus septica=フィカス オオバイヌビワ)、マラ・ティビグ(Ficus congesta イチジク属)、トゥアイ(Bischofia javanica=赤木)などの在来の木が豊富に生育しており、環境と土壌に十分な水分を与え、乾季の間の苗木の成長を助けることができています。その他の植林地のモニタリングは、CGNの森林官チームによって今後も継続的に行われます。 〈今後の活動予定〉 ●植樹活動 1.当事業で植樹を予定している 残りの苗木(コーヒー3,817本、樹木2,033本)の運搬・配布は、2021年5月~6月第1週に行います。 2. 雨季入り(2021年5月中旬~6月)に合わせて植樹活動を継続します。農家は植樹予定地の準備に十分な時間がもてます。 ●講習会開催 コロナ感染状況とそれによる規制によりますが、講習会は、バランガイ(村)、地方自治体との調整のもと、2021年3月~4月に決行する予定です。 もし、感染拡大によりセミナーの実施の許可が出なかった場合は、講習会のの講師のよるテーマについてのレクチャーをビデオ収録し、受益者に配布する予定です。
by cordillera-green
| 2021-03-01 20:40
| 植林/アグロフォレストリー
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