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2023年 06月 07日
【プロジェクト期間】2022年4月‐2023年3月 【事業地】フィリピン共和国タジャン町 1.準備活動 ・2022年5月18日 申請団体現地事務所とタジャン地方自治体農政課、環境自然資源課、農業組合代表の間でプロジェクトの内容についての詳細打ち合わせ ・2022年5-6月 地方自治体農政課スタッフに伴われ申請団体スタッフによる植樹予定地域の調査 ・2022年6月 申請団体現地臨時採用森林官スタッフによる植栽予定の苗木の購入先調査 2.植樹 フィリピン共和国ルソン島北部マウンテン州タジャンにおいて、伝統の土地管理システム「ラコン(バンタガン)」によって土地管理の権利を与えられている団体、個人の土地において、アグロフォレストリーによる植樹を行った。 トゥア小学校 ランブータン115本/カヤン西小学校ランブータン180本 計295本 St. Michael of Arc Angel (SMAA) ハンノキ400本、アラビカコーヒー500本 計900本 バタンガン・システムにより管理を委託されている個人52名 アラビカコーヒー 10,300本、ランブータン145本、 ハンノキ1,050本 アカギ100本の計11,595本 タジャン警察署敷地と管轄地域内に、ランブータン60本、シタン300本、アカギ30本の計390本 合計13,180本 また、以下の共有地において、住民による水源涵養を目的とした植樹を行った。「ガラティス」と呼ばれる、民族に伝わる互助システムにより、地方自治体役員、地域警察官、地域住民、生徒がボランティアで植樹に参加した。 7月23日 トゥアTue共有地 ベンゲット松100本、シタン(Narra)400本の計500本を植樹 7月24日 ドゥアガンDumagan&マスラMaslaの共有地で600本のシタンを植樹。 7月26日 バタンガン共有林(カヤン西バランガイ) シタン150本、アカギ50本、ハンノキ50本 計250本を植樹。 8月13日 タベヨ共有林 ベンゲット松200本を植樹。 9月13日 SIPAT(山岳地方の共産勢力と国家政府との和平協定締結)36周年記念植樹祭にて、地方自治体環境自然資源課(MENRO)に運搬した950本のベンゲット松の苗木、225本のハンノキの苗木、計1,175本をタジャン町のPEPO(Permanent Environmental Protection Order)条例で定められた3つの保護地域(Cadad-anan,Lenga,,Dacudac)に植樹した。イベントの主催は、内務地方自治省(DILG)。 9月16日 マバライトMabaliteの共有林で、ハンノキ130本、ベンゲット松375本、シタン510本、計1,015本を植樹 9月下旬 ブンガBungaの共有林で、ハンノキ20本、シタン20本、アカギ20本、計60本を植樹 9月下旬 ルボンLubonの共有林で、ハンノキ125本、ベンゲット松375本、シタン520本、計1,020本を植樹。 9月30日 カヤンKayan東共有林 (ホーリーロザリー高校敷地内)で、 シタン500本 を植樹。 合計5,320本 3.講習会&環境教育ワークショップ プロジェクト上半期にアグロフォレストリー(森林農法)で植樹した苗木の生育を助けるための講習会を開催した。 ▶2022年10月21日 「アラビカコーヒーの苗木育成と苗床作り」 会場:タジャン町ポブラシオンSMAAホール 参加者:受益者43名,タジャン町農政課スタッフ 講師:Lily Jamias、Aida Sulipa 内容: ・アグロフォレストリーの重要性について。 ・ラコン(バタンガン)システムを応用したアグロフォレストリーの実施例。 ・良質な苗木生産の方法。種子の選定,苗床の設計,苗の育成方法 ・移植後のアラビカ・コーヒーへの施肥の方法や除草について ▶2022年12月20日「結実したコーヒーの収穫方法と収穫した実の処理・加工方法」 会場:タジャン町ポブラシオンSMAAホール 参加者:受益者36名、タジャン町農政課職員 講師:Lily Jamias、Danilo Ligao 内容: ・コーヒーチェリーの収穫方法 ・収穫したチェリーの精選と乾燥方法についての説明と実習 ▶2023年3月22日「精選と乾燥を終えたコーヒー豆の品質評価の方法」 会場:タジャン町ポブラシオンSMAAホール 参加者:受益者24名、タジャン町農政課スタッフ3名 講師:Lily Jamias 内容: ・コーヒー市場におけるコーヒーの品質評価の基準(見た目と香味) ・焙煎したコーヒーの香味に影響を与える要因 ・消費者のコーヒーの抽出方法 ・香味の品質評価の方法 ・品質を上げるために栽培,収穫,精選方法の改良について ▶事業地であるタジャン町における環境保全に関する関心を高めるための環境教育ワークショップ開催 開催日:2022年11月24,25,28,29,12月2,5,6,7日(8日間) 各半日 会場:タジャン町の8小学校 参加者:各校の小学生及び教員 講師:Bentor Ganado、Hector Kawig、Shane Daweg、Leemar Damuasen,Yurie Nhel Cadangen 内容: ・ネイチャーゲーム各種(Web of Life、自然の葉っぱあて,など) 4.苗床づくり 2022年10月にタジャン町ポブラシオンのセント・マイケル教会(SMA)の敷地内と,マバリテ村の2か所に苗床をつくるための資材が運搬された。マバリテ村の苗床は,バタヤン村,バンタイ村,ドゥアガン村での植樹のために支給するものである。その他の地域はセント・マイケル教会の苗床から支給することになる。 入手できた種子の品質が悪く発芽率が低く,マバリテの苗床では2,000本,セント・マイケル教会の苗床では1,000本の苗しか発芽しなかった。そこで,新たにベンゲット国立大学から種子を購入し,2023年3月に再幡種を行った。 5.モニタリング ▶アグロフォレストリー植樹地 上半期に受益者が植樹したアラビカ・コーヒーの苗木のモニタリングと受益者への個別栽培指導 上半期に植えたアラビカ・コーヒーの苗木のモニタリングは, 2023年の1月初旬にトゥアTueとポブラシオンで1回目を行い,2月初旬にトゥエ,カブナガン,ポブラシオン,カヤン西で2回目を行った。そして3月中旬にカブナガン,バラオア,ポブラシオンで行った。 タジャンは標高が比較的低く気候は温暖で,多くの受益者がアグロフォレストリーの手法を実践し,マンゴ-,カカワッティ,イピルイピル,バナナなどとともにアラビカ・コーヒーの苗木を植樹していた。また,アラビカ・コーヒーの木の下には,パイナップル,ショウガ,タロイモなどを栽培していた。これらの地域ではアラビカ・コーヒーの品種のなかでもカティモールとブルボンが適していた。 カブナガン,ポブラシオン村ではほかの村より少し標高が高く気温も低いため,アラビカ・コーヒーの品種のなかでもティピカ,ブルボン,カティモールが栽培されている。 すべての栽培場所には,ハンノキ(アルヌス),ベンゲット松,アボガドが自生しており,植樹された苗木の多くは十分な日陰があった。 プロジェクトを担当するフォレスター(森林官)はモニタリング時に受益者に対して,雨の降らない乾季の苗木の手入れ法を指導した。マルチングや可能であれば水やりを勧めた。リング除草を行い防火帯を作り,山火事に備える指導も行った。 ▶共有地における植樹 上半期にコミュニティによって水源涵養のために植樹された森林樹種の苗木の生育状況モニタリング 3月下旬に2週間にわたって植樹した苗木の生育状況をチェックするためのモニタリングを実施した。カヤン東とカヤン西の植樹地では,ハンノキとアカギの枯死率が高かったが,ベンゲット松とランブータンは順調に生育していた。シタンの生育状況は万全とはいえないものの,苗木が環境に適応してなんとか生き延びようとしている。 6.森林火災の発生について モニタリング中の2023年3月22日、タジャン町のカブナガン村で大規模な森林火災が発生し、瞬く間にポブラシオン村と隣町バウコのバグニン村の森林地帯に燃え広がった。ポブラシオン村で当植樹事業で植樹を行った2つのアグロフォレストリーによるコーヒー農園も焼失した。3月26日、住民たちがポブラシオン村の火災を鎮圧するために「galatis di depdep」という伝統の風習に則り,各家庭から最低1名をボランティアとして派遣し消火にあたった。しかし,バグニン村の森での火災がエスカレートしてカブナガン村に戻り、2023年3月27日にコミュニティ消防隊、CENROサバンガン消防隊、防火局チームによって鎮圧されるまで森を焼き尽くしつづけた。 環境天然資源省DENRが発表した、カブナガン村、バラオア村、ポブラシオン村で発生した火災事故に関する報告書によると、被害を受けた森林面積は合計203ヘクタールであった。不幸中の幸いで2022年8月にバラオア村において当事業で植樹した200本のベンゲツ松の苗木は消失を免れた。 バラオア村では,そのひと月前の2023年2月第3週にも森林火災が発生しており、当事業の受益者の一人であるアカブ家の植樹地では、200本のコーヒーと150本のアルヌスを含むアグロフォレストリー農園が被害を受けた。焼失したコーヒーはカカオに植え替えられた、アルヌスは雨季の到来とともに植え替えられる予定である。 この大規模な山火事は、「気候変動の影響」の一言では片づけられない深刻な被害をコミュニティに残した。タジャン町の広域にわたって将来にわたる間接的な影響が出ることも予想されている。 家屋の建築やインフラ整備に必要な木材を自給しているコミュニティであるだけに,その原材料の供給源を失ったばかりでなく,野生動物の生息地の損失、温度の上昇、そして最悪の事態は水供給の不足である。 タジャン町・環境天然資源事務所(MENRO)は,トゥアTue村、ブンガBunga村、マスラMasla村、バンタイ村Bantey、バタヤン村Batayan、レンガ村Lengaといった,今回の火災を免れた地域のモニタリングに取り組み,こういった事態の再発を防ぐとしている。また当団体では,本年度も貴財団の助成により当地域で事業を継続する予定であり,MENRO事務所と連携を取りながら,山火事被災地域での,とくに水源地における植え替えなどに協力をしていく予定である。
by cordillera-green
| 2023-06-07 11:43
| 植林/アグロフォレストリー
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