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2019年 12月 30日

コーヒーの森で野鳥観察ワークショップ開催

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コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)では、2019年度イオン環境財団の助成を受けて「ベンゲット州キブンガン郡における森林農法によりコーヒー栽培を通じた野生生物保護事業」を実施中です。

事業地のキブンガン郡サグパット村は、2006年にCGNが初めてアグロフォレストリーによるアラビカ・コーヒー植林事業を始めた場所です。

その後、環境自然資源省(DENR)や各自治体(LGU)や農業省(DA)でもコーヒーの植林の後押しが始まり、あれよあれよという間に、サグパット村を含む山岳地方の様々なコミュニティでコーヒー栽培が広がりました。収穫されたコーヒー豆の加工とマーケットには、通商産業省(DTI)も全面サポート。コーヒーの品質も値段もぐんぐん上がっていて、コーディリエラ山岳地方はコーヒー栽培ブームに沸いています。


「コーヒーの苗木をこんなに植えちゃって、収穫できるようになった時にコーヒーが売れなかったらたいへんだ。責任重大だぞ」

と、CGNのコーヒー栽培事業地のコーヒーの販売をサポートするために、CGN関係者を中心に「カピタコ・ソーシャルエンタープライズ(KapiTako Social Enterprise」)を起業しましたが、売り先がないどころか生豆の獲得合戦になっているという予想外の展開になっています。

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↑アグロフォレストリーのコーヒー農園はこんな感じです


もともと、純粋な森林再生のための在来種の植樹では山岳地方の先住民の森林の畑への転換は止められないと、苦肉の策で始めたアフロフォレストリーでのコーヒー栽培です。目標は山岳地方の環境保全と環境への負荷の小さい方法での先住民の暮らし(生計ですね)の向上です。どこでどんな風に、だれが育てているコーヒーかということが大切なわけです。

ブームにのってコーヒービズネスに新規参入の人たちは、もう、そんなことどうでもいいです。

量の確保。それもなるべくおいしいコーヒー。。。というわけでコーヒー買い付け競争は過熱しています。


CGNとしては、ここで深呼吸。。。

当初のコーヒー事業の原点に戻ってみようということになりました。

そこで、ほんとうに私たちの事業地であるコーヒーのアグロフォレストリー農園には、野鳥や哺乳類や両生類やそのほかの植物や微生物などの生き物たちがちゃんと棲めるような環境があるのだろうか? という調査を、改めてしてみることになりました。

野生の哺乳類や両生類(野ネズミ、こうもり、りす、山猫、大とかげ、蛇、カエルなどがいるそうです)はなかなか目にすることが難しいということで、野鳥観察に焦点を絞ることになりました。野鳥観察するのはコーヒー農家の人たち。

まずは野鳥観察の意味や方法についてコーヒー農家の人たちに学んでもらおうと講習会を開きました。講師として、以前からCGNの環境教育プログラムでお世話になっている日本野鳥の会の下重喜代さんのご紹介で、NPO法人バードリサーチの神山和夫さんと、マニラのCenter for Conservation Innovation Incのジェニカ・マシガン(Jennica Masiganさん)に来ていただき、講習会とバードウォッチングの実習を行いました。

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↑講師のバードリサーチの神山和夫さん


講習会では、二人に以下のようなテーマでプレゼンテーションをしていただきました。

ー野鳥の自然界や人の暮らす村落での役割、

ールソン島で見られる野鳥の種類、

ーコーヒー農園における野鳥の働き、

ー日本からのフィリピンに来る渡り鳥の紹介、

ー環境保全に配慮したアグロフォレストリーによるコーヒー農園の価値、

ーバードフレンドリー・コーヒーの紹介

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Center for Conservation Innovation Incのジェニカ・マシガンさん


講習会の参加者たちは、CGNがサグパットでコーヒーを植え始めた2006年前後から、CGNだけでなく自治体や農業省、環境自然資源省などから支給されたコーヒーの苗木を栽培してきた農家の人たちです。サグパット村の主な栽培作物であるサヨテ(はやとうり)の栽培で忙しく、コーヒー栽培をあきらめてしまった農家もいる中、熱心にコーヒー栽培に取り組み、近年かなり収穫量を上げてきている農家に参加を促し、14名が参加しました。

また、日本から画家の高濱浩子さん、CGNインターンの松田雅代さんもゲスト参加してくれました。

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神山さんは講習の中で、コーヒー・ベリーボーラーやステム・ボーラーというコーヒー農家を悩ませている害虫が、野鳥が増えることによって数を減らしたというコスタリカでの事例を紹介し、生物多様性がコーヒー栽培に与える益についても学びました。


ジェニカさんは、フィリピンが世界有数の生態系の多様を持つ国であることを紹介。700種類以上の野鳥が生息していると話し、21種類のルソン島に生息している鳥の紹介をしました。


参加者は年配の人が多く、ジェニカさんの紹介する鳥の写真に

「子供のころはたくさんいたが、すっかり最近見なくなった」

という声が多く聞かれ、サグパット村の自然環境がこの数十年の間に大きく変化してしまったことがうかがえました。


さすが、山岳地方の村で生まれ育ってきた参加者たちです。写真で紹介された鳥の鳴き声や潜んでいる場所、目にすることのできる時期や時間などにとても詳しく、研究者も顔負けです。どんどん話を聞いていくと、子供のころに遊びで野鳥を捕まえた経験があって、罠の仕掛け方などにもめっぽう詳しく、それゆえの知識なのだと気がつきました。

村でよく見かける鳥たちには地域での呼び名があり、それらはほとんど、その鳴き声に由来しているとのことです。

神山さんが探していた日本からの渡り鳥ノゴマ(英語名はSiberian Rudy Throat)も、「キーリン」というローカル名で地元の人に愛されている鳥であることが判明しました(今回は残念ながら見つからず!)。



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さて、午後からは、実際に双眼鏡の使い方を学んで、参加者のうちの一人のコーヒー栽培地にバードウォッチングに出かけました。

実習のために訪問した農園は、もともとサヨテ畑だったところをコーヒーのアグロフォレストリー農園にかえたところで、コーヒーノキとアルノス(ハンノキ)のほぼ2種の木しか生えていません。神山さんによると農園の周辺にある、他の木が生えていたりやぶがあったりする多様な植生の中のほうが野鳥が見つかりやすいとのこと。また、農園は急な斜面にあり、アルノスが茂りすぎていて野鳥を見つけるのは素人には難しいということです。

実習目的ですので、農園近くの比較的見晴らしのいいなだらかな場所で観察を行いました。ベンゲット松の実がエサになるのか、ベンゲット松にかわいいきれいな鳥を見つけて参加者は興奮気味です(特に日本人ゲスト参加者)。


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それにしても、参加者の人たちの鳥探しのうまいこと。鳴き声で居どころにあたりをつけ、あっという間に探し当てます。まったくかないません。

散り散りになって夢中で鳥を探し、最後に再集合。どんな鳥を見つけたかの話を聞き、だいたい13種類の鳥がほんの2時間ほど間に確認できたことがわかりました。野鳥を観察する楽しみも十分体験できたと思います。

双眼鏡をそのまま持ちかえってもらい、1月の終わりまでそれぞれの農園で観察を継続し、その記録をノートにつけてもらうことになりました。どんな観察ノートが出来上がってくるか楽しみです。

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バードリサーチ神山氏とジェニカさんは、講習会の前後に、サグパット村の中の様々なスタイルのコーヒー栽培地を訪問して野鳥観察をしました。

詳細は神山さんのバードリサーチでのブログで。

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Photo by Rainel Lee, SDS Multimedia

 

今回のバードウォッチングの実習中に観察された鳥は以下です。

1.White-eared Brown-Dove (ローカル名:Ot-ot)テリアオバト

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2. Colasisi (Olis/Bolilising)シュバシサトウチョウ

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3. Pygmy Swiftlet (Pipingew) コビトアナツバメ
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4. Red-rumped Swallow コシアカツバメ
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5. Yellow-vented Bulbul (Piloklok) メグロヒヨドリ
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6.Elegant Tit (Kusili) シラボシガラ
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7.Velvet-fronted Nuthatch (Ak-kap) ビロウドゴジュウカラ
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8. Tawny Grassbird (Salaksak) ズアカオオセッカ
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9.Little pied Flycatcher (Kalinbabanga) ハジロマユヒタキ
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10.Blue-headed Fantail (Lebeg) ズアオオウギビタキ  *Leader of the birds
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11. Brown Shrike (Tala or Aladdas(male))アカモズ
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12.Luzon Bush-Warbler (Samote) ルソンウグイス
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13.Mountain White-eye (Kuyotan) ヤマメジロ

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by cordillera-green | 2019-12-30 13:52
2019年 12月 20日

マナラボとの世界の人びとのためのJICA基金事業「小規模農家によるコーヒー生産のための加工・運営指導プロジェクト」

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コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)は、2019年度,「世界の人々のためのJICA基金」事業を受託した京都のNGO「マナラボ 環境と平和の学びデザイン」の現地パートナー団体として、「小規模農家によるコーヒー生産のための加工・運営指導プロジェクト」のお手伝いをしています。

事業地はベンゲット州カパンガン町サグボ村。

CGNは、20122013年度にこの村のビレン地域で水源保全と再生事業を実施し、1年目30,320本、2年目42,940本の植樹を行いました。住民たちの生計向上に貢献することで緑化事業を促進しようと、植樹樹種に1年目には12,500本、2年目には18,720本、計31,220本のアラビカ・コーヒーの苗木を植樹しました(イオン環境基金助成事業)。


20152017年度に日本のNPO法人「平和環境もやいネット」のパートナーとして実施した「フィリピン北部山岳地方におけるアラビカ・コーヒー品質向上のための基準作りと普及事業」(日本国際協力財団助成)では、2016年にサグボ村のコーヒー栽培農家の一人、ダニーロ・リガオさんが東ティモールへのコーヒー研修に参加しました。

さらに、2017年度には「マナラボ」と協力し、サグボ村のティモック=プスプソック地域で「森林農法の普及と森林再生事業」(緑の募金公募事業)を実施し、アラビカ・コーヒー7,200本を含む13,200本の苗木を植樹しました。また、同じ年に京都のNPO法人「フェアプラス」とフェアトレードショップ「シサム工房」の協力を得、「フィリピン・ルソン島北部における環境に配慮した持続可能なコーヒー生産とフェアトレードによるマーケティング能力向上事業」(地球環境基金助成)を行い、将来のフェアトレード認証取得に向けての具体的な準備として組織強化のためのセミナーを年間を通して実施しました。この事業でビレン集落を拠点とするダイヨコン農業者組織は、組合として国の組合開発機構(CDA)に登録ができました。

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 最初の植樹事業から6年がたった昨収穫期(2018年11月-20191月)、サグボ村ではコーヒーの収穫がようやく本格的になりました。何ごとも目の前に起こってからでないとなかなか重い腰を上げない慎重派の山岳民族の人たち。ようやく、「収穫したコーヒーの加工はなかなか大変だぞ」と本気で困った気配です。そこで「マナラボ」と協力し、コーヒーチェリーの加工をグループで協力して行うことで、生産の効率を高め、品質を上げ、確実に生産者の収入向上につなげるための事業を開始することにしたわけです。


2019年10月に開始された「小規模農家によるコーヒー生産のための加工・運営指導プロジェクト」では以下の内容で事業を進行中です。

1.品質を上げるのに最低限必要な資材の支給

2.それらの機材を使った品質のいい豆を作るための加工技術トレーニング

3.生産者のグループが共同して支給された機器を使用し管理することができるように、組織強化のためのトレーニング

 

収穫期が始まった2019年11月、収穫に間に合わせるために加工機器を支給すると同時に、日本からコーヒー栽培専門家の山本博文氏をお招きし、ベンゲット州トリニダード町在住のコーヒー専門家のリリー・ハミアス氏とともに、加工技術のトレーニングを行いました。

山本氏はCGNの事務所のあるバギオ市に到着後、事業地・サグボ村の事前視察、購入予定の資材のチェックを行い、講習会1日目にのぞみました。

以下、山本氏の講習会についてのレポートです。

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山本氏は収穫後のコーヒーチェリーの加工方法について、参加した農家さんにわかりやすくていねいに説明します。山本氏がコーヒー栽培の指導に訪れた経験のあるミャンマー、東ティモール、インドネシア、ラオスなど、そのほかのアジアの国々の例を引いて、大きな加工機械を使用せずにコミュニティ単位で品質の良いコーヒー豆を生産する方法について解説しました。

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加工の方法の概略は以下です。

収穫したコーヒーのチェリーは、まず1か所にまとめて、緑の未熟のもの、熟しすぎて発酵が進んでいるものを除きます。赤くきれいに熟したものだけを選んで、重さを計ります。もちろん、チェリーを持ってきてくれた農家ごとに、ちゃんと何キロ持ってきたかを記録します。そして、その豆を大きなタライのような容器に入れ水を加えます。浮いたチェリーは取り除きます。浮いたチェリーは、虫が入っていたり、中がスカスカだったりで、生豆にまで加工したあとに、結局選別で取り除くことになる欠点豆となります。この段階で取り除くことで、のちの作業が軽減されることになるのです。

赤い果皮を取り除いたのちコーヒー豆には、まだパーチメントという殻がついています。そしてその殻にはミューシレージ呼ばれるヌメヌメの粘液質のものがついています。「ウオッシュド」と呼ばれる加工手法では、このミューシレージを発酵させて取り除きます。

まず、果皮を取ったパーチメントをもう一度水につけて浮いてくる豆を取り除きます。そして水を捨て、そのまま蓋のある容器に入れて一晩(12-24時間)おきます。ミューシレージには糖分が多く、自然発酵して、ヌメヌメの部分が固まり始めます。発酵状態が適切かどうかは、何かの棒をつきさして抜いてみて、その棒の穴が崩れずそのまま穴の形が残ることで判断してほしいと、山本氏は農家には指導しました。

この発酵度合いがコーヒーの味に影響を及ぼすので、小規模な農家さんたちがそれぞれ作業する時に、同じような発酵度合いに揃えることが必要です。発酵時間を時間で指定すると、発酵槽が置かれている場所の温度、湿度などによって発酵度合いにばらつきが出てしまいます。そのため、身近な道具を使ってそれぞれが発酵度合いを判断できる方法を教えているのです。

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日本の人は時間にとても正確で、時計なしでは生きていけそうもありませんが、山の人たちは、あまり時計をあてにしません(どこもかしこも止まっている壁掛け時計だらけです)。明るくなったら起きて畑仕事に行く。日が暮れかかったから作業を切り上げる。いつもお日様と一緒に暮らしています。時計や温度計に頼らず、「加減」を見るのがとても上手だなあと思います(文字通りいい「加減」なときもありますが)。「○○時間!きちんと発酵!」なんて指定をすると、負担に感じてしまう人もいそうです。山本氏が村の人の暮らしにあった指導者方法ができるのは、2年余フィリピンに暮らし、コーヒー農家とともに栽培に携わってきからこそなのです。 

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  午後には、実際の加工方法について、実習が行われました。講習内容がちゃんと頭に入っているか、参加者の人たちに自主的にやってもらい、加工のステップごとに、その作業の意味について山本氏は参加者の説明に答えながら教えていきます。


「なぜ、熟したものだけを分離する必要があるのか?」

山本氏は「未熟な実と熟しすぎた実はコーヒーの味に影響する」と説明。


次に「なぜ日陰で発酵させなければならないか」

山本氏は、「微生物が適切に働くために、日陰で発酵させる必要がある」と説明します。さらに「空気が入り、24時間以上たったあとに発生する微生物が引き起こす悪い発酵を防ぐために、ふたをする必要がある」と説明しました。


発酵がいい具合に終了したことを確認する手段についても、実際にやってみて参加者の人たちはみな納得した表情です。棒をさして確認する以外の方法も教えてくれました。容器の中で発酵させているパーチメントの上に手を置く。もし多くの豆が手にくっついてきた場合は、発酵が終了しているのだそうです。

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 参加者はみなでわいわい、「あら、こうだったかしら?」「間違ってるよ。順番」と、午前中の講習内容を思い出しながら自分たちの手で作業をしてみます。山本氏は、間違いは正すものの、楽しそうにその過程を眺めています。自分たちの力でやってみることで、ちょっと複雑な加工作業の工程を体で覚えてほしいということですね。


発酵が終わった後の工程についても、山本氏からわかりやすい説明がなされました。ヌメヌメが固まった状態のパーチメントを洗い流し、その後、乾燥作業に入ります。プロジェクトで支給された乾燥箱に乾燥を開始した日付のタグをつけて管理します。アフリカン・ドライベッドといわれる乾燥棚を作り、風通しのいい場所で乾燥します。にわか雨に備えて、乾燥棚にはビニールシートを備え、いつでもカバーできるようにします。

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コーヒー豆の理想とされる水分率は10~12%です。山本氏は豆を均一に乾燥させるためには、1時間に1回程度かき混ぜてほしいと説明しました。乾燥の度合いを確かめるには、水分計がない場合は「歯で噛んでみて確かめてみましょう」。これも加減を図るのが上手な山岳民族の人々。噛んでみた感触で、今やだいたいの水分率がわかるようになっています。

乾燥がすんだら、重さを計ってから保管します。コーヒーパーチメントを保管する際は、空気を循環させないように、サグボの人々がサヨテ(はやとうり)の出荷に使っているビニール製の丈夫な透明袋に入れ密閉します。そして冷暗所に1か月程度寝かせてから出荷するのが理想だといいます(実際にはその間にバイヤーが現れたら売ってしまうことがほとんどです)。


山本氏は参加者からの質問に答え、加工方法のみならず苗床からコーヒーの木の成長まで、そしてコーヒーの木の手入れとメンテナンスまで、栽培方法について幅広く説明してくれました。とくに、ダイヨコン農業組合は組合としてコーヒーの苗木生産を始めたばかりで、丈夫で収穫量の多い品質の高いコーヒーの苗を生産する方法についての質問が飛び交いました。

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コーヒー栽培は種まきに始まります。種子は、日陰のある上げ床に植え、細かい土で覆う。そしてシダのような葉やサトウキビの葉、農場の近くにある他の利用可能なもので覆うことが必要だそうです。種から芽が出て、種が持ち上げられ「ホーステイル」(馬のしっぽのようなので)と呼ばれるステージに成長した時、ビニールポットへ移植します。種まきから移植までには12ヶ月かかります。

ポットに苗木を植えて68か月経過して成長した苗木は、いよいよ栽培予定地の山の斜面に移植できます。コーヒーの苗木の生育にはシェイドツリー(日陰樹)と呼ばれる日陰を作る木が必要になるので、それを確認することが必要です。シェイドツリー(日陰樹)がなく、1日中直射日光にさらされた苗木は枯れてしまいます。コーヒーに適したシェイドツリーは、アルヌス、カリエンドラの木など。この地域に多いベンゲット松の木は適していないそうです。松の木は、非常に高い酸性を持つため、コーヒーの木のシェイドツリーには適していません。植え替えの際にはコーヒーの苗の根をまっすぐに植えることも、コーヒーノキが健康に育つには欠かせない要素だそうです。植え替え時に掘る穴の直径と深さは最低60cmは必要だということです。

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講習会2日目はサグボ村のティモック&プスプソック地域に赴き、収穫後のチェリーの加工技術の講習とトレーニングを行いました。この地域は、2017年にマナラボが「森林農法の普及と森林再生事業」を行った場所です。その事業で植えたコーヒーの苗木はまだ収穫期を迎えていませんが、来たるべき収穫に備え、加工技術についての講習を行いました。

この地域には、今年6月に新しくプスプソック消費者組合(Puspusok Consumers Cooperative)が、国の組合開発機構(CDA)に登録しました。組合として小さな店舗を共同で経営するための組合設立だそうですが、来たる収穫の本格化に備えて、加工についての知識を得たいという熱意がメンバーにはあります。山本氏による講習内容は、前日のダイヨコン組合と同様でしたが、積極的な質疑応答が行われました。

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講習会3日目は再びビレン集落のダイヨコン農業組合に会場を移します。

まずは、コーヒー加工資材の支給を行いました。

この事業で支給した資材は以下です。

―コーヒーチェリー皮むき器

―スチール製の水タンクとさび止めの塗料

―発酵などの加工に使う容器

―乾燥箱

―乾燥台のためのスクリーン、ネット、プレスチック・シート

―はかり(フェアトレードショップ、シサム工房から支払われた奨励金(プレミアム)で購入)

―タグをするためのマスキングテープ、データをそこに書き込むためのマジックペン

ー各加工所のリーダーが持ち込まれたチェリーなどの記録を取るためのノート

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サグボ村ベレン地域ではコーヒー栽培地が広い地域に分散しており、また、コーヒー栽培農家が運搬のための車両を持っていないということで、資材を設置する加工センターを集落内の4か所とすることが提案されていました。事前の事業地訪問で講師の山本氏、ハミアス氏とCGNスタッフはその4か所を訪問し、加工に必要な水、乾燥に必要な土地、そして施設や機器を管理することができる組合メンバーがいることを確認しました。


4つの地域は以下です。

1.ダイヨコン農業組合ホール:周辺の11人のコーヒー栽培農家

2.ビレン集落 ボビーさん:8人の栽培農家

3.ロウワービレン集落 アナさん:10人の栽培農家

4.ビレン集落ランディンlanding メイラさん:13人の栽培農家


加工技術のトレーニングもばっちり(たぶん)。加工に必要な資材も届き、その設置場所も決まり、それぞれのミニ加工センターを使うグループ分けもできました。

さて、いよいよここからが難関です。どのようにしてその施設を管理運営していくかです。グループのメンバーたちが協力し合い、公平に、品質のいい豆を作るための組織づくりになるわけです。山本氏はミャンマーで何もないところから3年をかけて小さなコミュニティでコーヒー生産者の組織を立ち上げた経験があり、そこでの経験を引用しながら指導をしてくれました。


加工作業は各グループ週1回集まって行うことになりました。グループに分かれて、リーダーを決めます。そして、それぞれのグループごとにメンバーたちがコーヒー収穫に時間をさける曜日を決めました。その日に集中してみなで集まって作業をするということです。収穫と加工の曜日は以下に決定。

1ダイヨコン:収穫は毎週金曜日の午後であり、翌日土曜日の朝に加工

2ビレン :収穫は土曜日で、プロセスも同日

3ロウワー・ビレン :収穫は、毎週土曜日で加工も同日

4ランディン:収穫と加工は、毎週月曜日


それぞれの地区のリーダーは品質管理責任者でもあり、各農家から持ち込まれたコーヒーチェリーの記録(日付、名前、重さ)を取ります。そして、コーヒーチェリーの加工のプロセスが、指導されたように適切に行われているかをモニタリングすることになりました。

各加工所で加工されたコーヒー豆は乾燥されたパーチメントの状態で、組合の拠点であるダイヨコン農業組合のホールに持ち込まれます。組合の現在の事業のメインは組合ストアの運営ですが、その運営とコーヒー豆のトレーディングは別会計にしたいとのこと。全体の品質管理責任者は、CGNの事業で東ティモールにコーヒー生産の研修にいったことのあるダニーロ・リガオさんに決定しました。

さっそく翌週から、決められたスケジュール通りに加工所を使ってみようということになりました。

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さて、収穫は最盛期を迎えています。コーヒー加工所はうまく機能しているでしょうか。事業担当のバージニアとリリー・ハミアス氏は毎週サグボ村に足を運んで、収穫と加工の現場でモニタリングと指導を継続しています。どんなおいしいコーヒーが生まれるか楽しみです。


なお、事業では、マーケティングに向けての組織強化の講習会を1月に開催予定です。

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講習会のそのほかの写真は以下のリンクにあります。


 



by cordillera-green | 2019-12-20 15:17 | コーヒー