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2019年 12月 20日

マナラボとの世界の人びとのためのJICA基金事業「小規模農家によるコーヒー生産のための加工・運営指導プロジェクト」

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コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)は、2019年度,「世界の人々のためのJICA基金」事業を受託した京都のNGO「マナラボ 環境と平和の学びデザイン」の現地パートナー団体として、「小規模農家によるコーヒー生産のための加工・運営指導プロジェクト」のお手伝いをしています。

事業地はベンゲット州カパンガン町サグボ村。

CGNは、20122013年度にこの村のビレン地域で水源保全と再生事業を実施し、1年目30,320本、2年目42,940本の植樹を行いました。住民たちの生計向上に貢献することで緑化事業を促進しようと、植樹樹種に1年目には12,500本、2年目には18,720本、計31,220本のアラビカ・コーヒーの苗木を植樹しました(イオン環境基金助成事業)。


20152017年度に日本のNPO法人「平和環境もやいネット」のパートナーとして実施した「フィリピン北部山岳地方におけるアラビカ・コーヒー品質向上のための基準作りと普及事業」(日本国際協力財団助成)では、2016年にサグボ村のコーヒー栽培農家の一人、ダニーロ・リガオさんが東ティモールへのコーヒー研修に参加しました。

さらに、2017年度には「マナラボ」と協力し、サグボ村のティモック=プスプソック地域で「森林農法の普及と森林再生事業」(緑の募金公募事業)を実施し、アラビカ・コーヒー7,200本を含む13,200本の苗木を植樹しました。また、同じ年に京都のNPO法人「フェアプラス」とフェアトレードショップ「シサム工房」の協力を得、「フィリピン・ルソン島北部における環境に配慮した持続可能なコーヒー生産とフェアトレードによるマーケティング能力向上事業」(地球環境基金助成)を行い、将来のフェアトレード認証取得に向けての具体的な準備として組織強化のためのセミナーを年間を通して実施しました。この事業でビレン集落を拠点とするダイヨコン農業者組織は、組合として国の組合開発機構(CDA)に登録ができました。

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 最初の植樹事業から6年がたった昨収穫期(2018年11月-20191月)、サグボ村ではコーヒーの収穫がようやく本格的になりました。何ごとも目の前に起こってからでないとなかなか重い腰を上げない慎重派の山岳民族の人たち。ようやく、「収穫したコーヒーの加工はなかなか大変だぞ」と本気で困った気配です。そこで「マナラボ」と協力し、コーヒーチェリーの加工をグループで協力して行うことで、生産の効率を高め、品質を上げ、確実に生産者の収入向上につなげるための事業を開始することにしたわけです。


2019年10月に開始された「小規模農家によるコーヒー生産のための加工・運営指導プロジェクト」では以下の内容で事業を進行中です。

1.品質を上げるのに最低限必要な資材の支給

2.それらの機材を使った品質のいい豆を作るための加工技術トレーニング

3.生産者のグループが共同して支給された機器を使用し管理することができるように、組織強化のためのトレーニング

 

収穫期が始まった2019年11月、収穫に間に合わせるために加工機器を支給すると同時に、日本からコーヒー栽培専門家の山本博文氏をお招きし、ベンゲット州トリニダード町在住のコーヒー専門家のリリー・ハミアス氏とともに、加工技術のトレーニングを行いました。

山本氏はCGNの事務所のあるバギオ市に到着後、事業地・サグボ村の事前視察、購入予定の資材のチェックを行い、講習会1日目にのぞみました。

以下、山本氏の講習会についてのレポートです。

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山本氏は収穫後のコーヒーチェリーの加工方法について、参加した農家さんにわかりやすくていねいに説明します。山本氏がコーヒー栽培の指導に訪れた経験のあるミャンマー、東ティモール、インドネシア、ラオスなど、そのほかのアジアの国々の例を引いて、大きな加工機械を使用せずにコミュニティ単位で品質の良いコーヒー豆を生産する方法について解説しました。

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加工の方法の概略は以下です。

収穫したコーヒーのチェリーは、まず1か所にまとめて、緑の未熟のもの、熟しすぎて発酵が進んでいるものを除きます。赤くきれいに熟したものだけを選んで、重さを計ります。もちろん、チェリーを持ってきてくれた農家ごとに、ちゃんと何キロ持ってきたかを記録します。そして、その豆を大きなタライのような容器に入れ水を加えます。浮いたチェリーは取り除きます。浮いたチェリーは、虫が入っていたり、中がスカスカだったりで、生豆にまで加工したあとに、結局選別で取り除くことになる欠点豆となります。この段階で取り除くことで、のちの作業が軽減されることになるのです。

赤い果皮を取り除いたのちコーヒー豆には、まだパーチメントという殻がついています。そしてその殻にはミューシレージ呼ばれるヌメヌメの粘液質のものがついています。「ウオッシュド」と呼ばれる加工手法では、このミューシレージを発酵させて取り除きます。

まず、果皮を取ったパーチメントをもう一度水につけて浮いてくる豆を取り除きます。そして水を捨て、そのまま蓋のある容器に入れて一晩(12-24時間)おきます。ミューシレージには糖分が多く、自然発酵して、ヌメヌメの部分が固まり始めます。発酵状態が適切かどうかは、何かの棒をつきさして抜いてみて、その棒の穴が崩れずそのまま穴の形が残ることで判断してほしいと、山本氏は農家には指導しました。

この発酵度合いがコーヒーの味に影響を及ぼすので、小規模な農家さんたちがそれぞれ作業する時に、同じような発酵度合いに揃えることが必要です。発酵時間を時間で指定すると、発酵槽が置かれている場所の温度、湿度などによって発酵度合いにばらつきが出てしまいます。そのため、身近な道具を使ってそれぞれが発酵度合いを判断できる方法を教えているのです。

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日本の人は時間にとても正確で、時計なしでは生きていけそうもありませんが、山の人たちは、あまり時計をあてにしません(どこもかしこも止まっている壁掛け時計だらけです)。明るくなったら起きて畑仕事に行く。日が暮れかかったから作業を切り上げる。いつもお日様と一緒に暮らしています。時計や温度計に頼らず、「加減」を見るのがとても上手だなあと思います(文字通りいい「加減」なときもありますが)。「○○時間!きちんと発酵!」なんて指定をすると、負担に感じてしまう人もいそうです。山本氏が村の人の暮らしにあった指導者方法ができるのは、2年余フィリピンに暮らし、コーヒー農家とともに栽培に携わってきからこそなのです。 

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  午後には、実際の加工方法について、実習が行われました。講習内容がちゃんと頭に入っているか、参加者の人たちに自主的にやってもらい、加工のステップごとに、その作業の意味について山本氏は参加者の説明に答えながら教えていきます。


「なぜ、熟したものだけを分離する必要があるのか?」

山本氏は「未熟な実と熟しすぎた実はコーヒーの味に影響する」と説明。


次に「なぜ日陰で発酵させなければならないか」

山本氏は、「微生物が適切に働くために、日陰で発酵させる必要がある」と説明します。さらに「空気が入り、24時間以上たったあとに発生する微生物が引き起こす悪い発酵を防ぐために、ふたをする必要がある」と説明しました。


発酵がいい具合に終了したことを確認する手段についても、実際にやってみて参加者の人たちはみな納得した表情です。棒をさして確認する以外の方法も教えてくれました。容器の中で発酵させているパーチメントの上に手を置く。もし多くの豆が手にくっついてきた場合は、発酵が終了しているのだそうです。

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 参加者はみなでわいわい、「あら、こうだったかしら?」「間違ってるよ。順番」と、午前中の講習内容を思い出しながら自分たちの手で作業をしてみます。山本氏は、間違いは正すものの、楽しそうにその過程を眺めています。自分たちの力でやってみることで、ちょっと複雑な加工作業の工程を体で覚えてほしいということですね。


発酵が終わった後の工程についても、山本氏からわかりやすい説明がなされました。ヌメヌメが固まった状態のパーチメントを洗い流し、その後、乾燥作業に入ります。プロジェクトで支給された乾燥箱に乾燥を開始した日付のタグをつけて管理します。アフリカン・ドライベッドといわれる乾燥棚を作り、風通しのいい場所で乾燥します。にわか雨に備えて、乾燥棚にはビニールシートを備え、いつでもカバーできるようにします。

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コーヒー豆の理想とされる水分率は10~12%です。山本氏は豆を均一に乾燥させるためには、1時間に1回程度かき混ぜてほしいと説明しました。乾燥の度合いを確かめるには、水分計がない場合は「歯で噛んでみて確かめてみましょう」。これも加減を図るのが上手な山岳民族の人々。噛んでみた感触で、今やだいたいの水分率がわかるようになっています。

乾燥がすんだら、重さを計ってから保管します。コーヒーパーチメントを保管する際は、空気を循環させないように、サグボの人々がサヨテ(はやとうり)の出荷に使っているビニール製の丈夫な透明袋に入れ密閉します。そして冷暗所に1か月程度寝かせてから出荷するのが理想だといいます(実際にはその間にバイヤーが現れたら売ってしまうことがほとんどです)。


山本氏は参加者からの質問に答え、加工方法のみならず苗床からコーヒーの木の成長まで、そしてコーヒーの木の手入れとメンテナンスまで、栽培方法について幅広く説明してくれました。とくに、ダイヨコン農業組合は組合としてコーヒーの苗木生産を始めたばかりで、丈夫で収穫量の多い品質の高いコーヒーの苗を生産する方法についての質問が飛び交いました。

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コーヒー栽培は種まきに始まります。種子は、日陰のある上げ床に植え、細かい土で覆う。そしてシダのような葉やサトウキビの葉、農場の近くにある他の利用可能なもので覆うことが必要だそうです。種から芽が出て、種が持ち上げられ「ホーステイル」(馬のしっぽのようなので)と呼ばれるステージに成長した時、ビニールポットへ移植します。種まきから移植までには12ヶ月かかります。

ポットに苗木を植えて68か月経過して成長した苗木は、いよいよ栽培予定地の山の斜面に移植できます。コーヒーの苗木の生育にはシェイドツリー(日陰樹)と呼ばれる日陰を作る木が必要になるので、それを確認することが必要です。シェイドツリー(日陰樹)がなく、1日中直射日光にさらされた苗木は枯れてしまいます。コーヒーに適したシェイドツリーは、アルヌス、カリエンドラの木など。この地域に多いベンゲット松の木は適していないそうです。松の木は、非常に高い酸性を持つため、コーヒーの木のシェイドツリーには適していません。植え替えの際にはコーヒーの苗の根をまっすぐに植えることも、コーヒーノキが健康に育つには欠かせない要素だそうです。植え替え時に掘る穴の直径と深さは最低60cmは必要だということです。

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講習会2日目はサグボ村のティモック&プスプソック地域に赴き、収穫後のチェリーの加工技術の講習とトレーニングを行いました。この地域は、2017年にマナラボが「森林農法の普及と森林再生事業」を行った場所です。その事業で植えたコーヒーの苗木はまだ収穫期を迎えていませんが、来たるべき収穫に備え、加工技術についての講習を行いました。

この地域には、今年6月に新しくプスプソック消費者組合(Puspusok Consumers Cooperative)が、国の組合開発機構(CDA)に登録しました。組合として小さな店舗を共同で経営するための組合設立だそうですが、来たる収穫の本格化に備えて、加工についての知識を得たいという熱意がメンバーにはあります。山本氏による講習内容は、前日のダイヨコン組合と同様でしたが、積極的な質疑応答が行われました。

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講習会3日目は再びビレン集落のダイヨコン農業組合に会場を移します。

まずは、コーヒー加工資材の支給を行いました。

この事業で支給した資材は以下です。

―コーヒーチェリー皮むき器

―スチール製の水タンクとさび止めの塗料

―発酵などの加工に使う容器

―乾燥箱

―乾燥台のためのスクリーン、ネット、プレスチック・シート

―はかり(フェアトレードショップ、シサム工房から支払われた奨励金(プレミアム)で購入)

―タグをするためのマスキングテープ、データをそこに書き込むためのマジックペン

ー各加工所のリーダーが持ち込まれたチェリーなどの記録を取るためのノート

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サグボ村ベレン地域ではコーヒー栽培地が広い地域に分散しており、また、コーヒー栽培農家が運搬のための車両を持っていないということで、資材を設置する加工センターを集落内の4か所とすることが提案されていました。事前の事業地訪問で講師の山本氏、ハミアス氏とCGNスタッフはその4か所を訪問し、加工に必要な水、乾燥に必要な土地、そして施設や機器を管理することができる組合メンバーがいることを確認しました。


4つの地域は以下です。

1.ダイヨコン農業組合ホール:周辺の11人のコーヒー栽培農家

2.ビレン集落 ボビーさん:8人の栽培農家

3.ロウワービレン集落 アナさん:10人の栽培農家

4.ビレン集落ランディンlanding メイラさん:13人の栽培農家


加工技術のトレーニングもばっちり(たぶん)。加工に必要な資材も届き、その設置場所も決まり、それぞれのミニ加工センターを使うグループ分けもできました。

さて、いよいよここからが難関です。どのようにしてその施設を管理運営していくかです。グループのメンバーたちが協力し合い、公平に、品質のいい豆を作るための組織づくりになるわけです。山本氏はミャンマーで何もないところから3年をかけて小さなコミュニティでコーヒー生産者の組織を立ち上げた経験があり、そこでの経験を引用しながら指導をしてくれました。


加工作業は各グループ週1回集まって行うことになりました。グループに分かれて、リーダーを決めます。そして、それぞれのグループごとにメンバーたちがコーヒー収穫に時間をさける曜日を決めました。その日に集中してみなで集まって作業をするということです。収穫と加工の曜日は以下に決定。

1ダイヨコン:収穫は毎週金曜日の午後であり、翌日土曜日の朝に加工

2ビレン :収穫は土曜日で、プロセスも同日

3ロウワー・ビレン :収穫は、毎週土曜日で加工も同日

4ランディン:収穫と加工は、毎週月曜日


それぞれの地区のリーダーは品質管理責任者でもあり、各農家から持ち込まれたコーヒーチェリーの記録(日付、名前、重さ)を取ります。そして、コーヒーチェリーの加工のプロセスが、指導されたように適切に行われているかをモニタリングすることになりました。

各加工所で加工されたコーヒー豆は乾燥されたパーチメントの状態で、組合の拠点であるダイヨコン農業組合のホールに持ち込まれます。組合の現在の事業のメインは組合ストアの運営ですが、その運営とコーヒー豆のトレーディングは別会計にしたいとのこと。全体の品質管理責任者は、CGNの事業で東ティモールにコーヒー生産の研修にいったことのあるダニーロ・リガオさんに決定しました。

さっそく翌週から、決められたスケジュール通りに加工所を使ってみようということになりました。

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さて、収穫は最盛期を迎えています。コーヒー加工所はうまく機能しているでしょうか。事業担当のバージニアとリリー・ハミアス氏は毎週サグボ村に足を運んで、収穫と加工の現場でモニタリングと指導を継続しています。どんなおいしいコーヒーが生まれるか楽しみです。


なお、事業では、マーケティングに向けての組織強化の講習会を1月に開催予定です。

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講習会のそのほかの写真は以下のリンクにあります。


 



by cordillera-green | 2019-12-20 15:17 | コーヒー
2019年 10月 08日

コーヒー育苗による森林保全事業 2018-2019報告③ 受益者と担当した森林官の感想

マンカヤン町バリリ村

マンカヤンには以前からコーヒーの木があったが、このプロジェクトは新しい取り組みだ。しかし、種まきから苗木ポットに移すまでの育苗は少々複雑だった。私たちは実生の苗から栽培することに慣れている。いままで私たち農家は何の手もかけず、ただコーヒーの苗木が自然に育つままにしてきた。プロジェクト受益者になってよかった点は、苗場での育苗が重要であることを知ったことだ。また、たい肥、有機肥料、化学肥料のいずれもが、苗木栽培を促すことを知ることができたことだ。

 わたしたちは苗木を大事に育てている。これらの苗が、新しい苗木づくりにつながるからだ。将来は、育てた苗木をコーヒー栽培に興味がある他のコミュニティに共有したいと思っている。バリリ村がマンカヤン町のコーヒーの苗木の供給源になることを目指したい。

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カヤン村

タジャン町は、昔、森林を守るバタンガンBatanganという 伝統システムがあったが、今それが町の条例として復活している。また、結婚するすべての夫婦は、植林をしなければならないという法律もある。カヤン西村では、毎年6月12日(注:フィリピンの独立記念日)に植林をしており、すべての家庭はカヤン村の共有林に植林をしなければならない。そのため、カヤン西村では、苗木を生産する苗場が必要なのだ。

CGNは、2年前に始まった事業で、共有林での植林だけでなく、私有地でコーヒー栽培をすることを住民に教え始めた。カヤン西村の行政も住民も私有地にも植樹をすることを推奨してきた。今回のプロジェクトで、そのための苗木を無料で手に入れることができるようになったのだ。

カヤンには以前はコーヒーの木があった。そしてコーヒー豆はお金の代わりとして砂糖との物々交換に使われた。しかし、いつのまにか誰もコーヒーを買わなくなり、コーヒーの木は手入れをされずに放られたままになっていた。しかし、住民たちはいま一度、違う品種のコーヒー栽培をし、コミュニティを豊かにしたいと思っている。コーヒーの木の面倒をちゃんとみてなるべく早く収穫を得る決意だ。

だが、コーヒーは他の植物と違い、入念な世話が必要な植物だ。夏の間の苗木は、水が不足し、ゆっくりとしか育たない。雨季の間は、コーヒーの木を食べる害虫が出るため、常に苗木の世話をする必要がある。それでもやはり、コミュニティにとって苗木生産は社会生活のサポートとなるであろう。育てだ苗木を環境資源省(DENR)が実施する他の植樹プロジェクトに販売することも可能だからだ。

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 アンバサダー村

(CGNが9年にわたって事業を行っているので)アンバサダー村コロス集落の住民は、アグロフォレストリーについてよく知っている。環境面、社会面においてアグロフォレストリーの重要さが分かっている。彼らは、環境保全のためにコーヒーを植林し、また一年の終わりの追加の収入源としてもコーヒーを栽培している。

ここの住民は苗場造りから収穫後の加工に至るまで、コーヒー生産に関する技術について知識がある。苗場造りも新しいことではなかった。しかし、それでも新しい品種の栽培には関心がある。その品種がたくさん実をつけ収穫量が多く、将来の暮らしの向上に役立つかもしれないからだ。

今回のプロジェクトを通し、苗木の質向上のためにも、まだまだ経験を積む必要があると感じた。過去にコミュニティを訪れてくれた山本博文氏、スマトラ島から訪ねてくれたガニ・サリバンGani Silaban氏もそうだが、今回講師を務めてくれたジャワのエコ・ポロムウィディEko Poromwidi氏から学ぶ機会をもてたことには、とても感謝している。コーヒーの品質の良しあしは苗木づくりが決定づける。いい苗木を植えることができたら、確実にその木はよく育つということを学んだ。

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森林官・リリー・ハミアスの感想

異なる地域、異なる標高、異なる文化の地域で活動することになったが、プロジェクトに対する誠意と意欲は共通しており、プロジェクト遂行は難しくはなかった。彼らのプロジェクトへの誠意を感じたので、苗場造成の困難を乗り切れると感じながらプロジェクトを担当してきた。彼らの文化は、彼らの仕事の仕方、そして育てている苗木にも影響していると感じた。

一方、コーヒーに関するある先入観やある程度の知識を持った農家と接するのは難しいと感じた。真によい品質の苗木を栽培したいと欲しているものは、きちんと細部まで気を使って仕事をする。ここでも文化は人の仕事の仕方に影響を及ぼすと実感した。

この苗場プロジェクトはコーディリエラ山岳地方で唯一無二のものである。この事業は、ほか地域のコーヒー農家、コーヒーに関する研究者に基礎的な情報を提供し、今後のコーディリエラ地方のコーヒーの品質向上に貢献することだろう。 

苗場における調査では、苗木が苗場でいかに生育するかを知ることができた。しかし、引き続き移植後の生育具合の観察を続けていくことに尽力したい。苗場における環境と、移植後の外の環境では異なっているからである。
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by cordillera-green | 2019-10-08 01:06 | 植林/アグロフォレストリー
2019年 10月 07日

コーヒー育苗による森林保全事業 2018-2019報告② エコ氏とアビイ氏による持続可能なコーヒー栽培セミナー

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以下は持続可能なコーヒー栽培と苗木づくりの実際についてのセミナーについてのレポートである。苗場を造成した3か所とバギオ市においてセミナーが行われた。

インドネシアの「KlasikBeans Cooperative」のエコ・プロノモウィディEkoPurnomowidi氏とアビイAbytar氏によって持続可能なコーヒー栽培についての講習会は行われた。エコ氏は持続可能なコーヒー生産について実際に行動に移している素晴らしい講師だった。

エコ氏は木の大切さについてまず概要を述べた。コーヒーもアグロフォレストリー・システムの中では、ほかの森林樹種と同じく樹木の一つにすぎない。樹木は含有している炭素が人間が作り出した公害を吸収し、人間のために酸素を供給する。樹木はあらゆる生物が排出する毒を吸収する空気清浄機の役割を果たしている。樹木は多くを与えているにも関わらず、そのことは人間には無視されているといえる。

「あなたのことをサポートしているものについて忘れてしまったら、あなたに成功はないでしょう。いつも心を込めて小さな自分にできることをしましょう」。

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エコ氏はアグロフォレストリーについての考えも共有してくれた。

「アグロフォレストリーについては、計画をきちんと立てることが必要だ。注意深く計画を立てたら、私たち人間もそのシステムの一部となれる。しかし、そうしないとアグロフォレストリー・システムの中に入らない物たちが出てきてしまう。このシステムを実行するには、他者(人、植物、動物など)について考慮することが必要だ。そうしたら、環境のなかですばらしいシステムを実現できる。持続可能性を考えるときに避けられない10の要素が以下だ」

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1.社会性と環境

他の農家と相互に学ぶ事は非常に大切である。それぞれの異なる考えや長所を活かすことができるからである。しかし、それは他人の助けとなりたいという気持ちがなければできないことである。

 

2.生態系の保護

植林や苗木供給のための苗場づくりなどの環境保全活動は、一農家の利益だけではなくまた、野生動物の生息地、食糧や酸素などの供給源の確保のためにも必要である。地球は、生き物すべての住処であり、何か一つが欠けると、ほかの生き物たちに影響が及ぶのだ。

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 3.野生生物

野生生物は大きな動物だけでなく、昆虫や微生物、小さな哺乳類の動物、鳥類も含まれる。小さな昆虫にも生態系において非常に重要で大切な役割がある。野生動物の保護は、こうした小さな生き物を守ることから始まるのである。

 

4.水保全

水源涵養は、人間のみならず全ての生き物が生きていくために必要なことである。水源を維持するためにはさらなる植林が効果的だ。農業における農薬の使用は水を汚染し、人間の健康と環境にとって)有害である。水を大切にしよう。

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 5.平等な扱い

全ての農家と人間は平等な扱いを受ける必要がある。共に学ぶためには、尊敬の心と相手の意見に耳を傾けることが必要だ。平等な扱いは、すべての子どもたちに、物事がどのように機能しているかを学ぶ場を与える事も含まれる。子どもたちはこういった場で、目で見て学ぶ事ができるのだ。

 

6.健康と安全

すべての人の食は農家によって作られている。農家がコーヒー、米、野菜などを生産しているのだ。農家はすべての消費者のために安全な食を作らなくてはならない。

食の安全は農家から始まるべきである。食の安全は、人間と環境のために、オーガニック、もしくは環境にやさしい肥料を使用した農園から始まるべきである。

 

7.コミュニティ関係

あなたの見聞を共有することは、他の農家の助けとなる。

教えることで、教えられた側もまた学んだことを共有したくなる、その結果、きょう数された側もまたより良い「先生」になるのだ。

 

教えることで、教えられた側もまた学んだことを共有したくなる。その結果、共有された側も、より良い「先生」となる事ができる。つまり、知識は共有を受け入れたすべての人に行き渡り、知識の継承につながるのだ。

 

8.総合的作物管理技術(ICM

これは、同じ地域で農業と林業を組み合わせて栽培するアグロフォレストリーと似ている。作物の統合的作付け(注:多品種を混栽すること)はコーディリエラ地方の習慣であるが、商業農業の推進により、この習慣は消滅してしまった。コーヒーをほかの作物と一緒に統合的に栽培することは追加収入となる。どういう作物を統合して植えるか、

病気や害虫予防など目的による。様々な作物を統合的に栽培することは、よい農法)といえるだろう。

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 9.土壌管理

栄養分が作物に吸収され、水は灌漑施設によって川に流され、土壌もやせ続けている。土壌の質を保たなければ、コーヒー及びその他の植物に影響を及ぼす。土壌に使用するものは同時に、私たちが口にするものでもある。そのため、土壌を生き物として扱わなければならない。

 

10.廃棄物の管理

農家はゼロ・ウェイストを実践し、生分解性の廃棄物は土壌に戻す必要がある。可能であれば、廃棄物を再利用する。土壌の質はコーヒーのカッピング(※香味評価)にも影響を及ぼす。

 

以上の10の原則は、環境とコーヒー生産に関わる全ての人々の幸福の維持につながる。苗場造り、堆肥作り、土壌と水保全、人間の幸福などの保全はまた、コーヒーの品質に集約されると言えるのだ。

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by cordillera-green | 2019-10-07 23:52 | 植林/アグロフォレストリー
2019年 10月 07日

コーヒー育苗による森林保全事業 2018-2019報告① 実験苗場と苗木づくり

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コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)では、京都のNGOマナラボ 環境と平和の学びデザイン」とともに、「フィリピンのコーヒー育苗による森林保全事業」を、2018年―2019年にかけて実施しました。今回の事業はタイトルの通り、コーヒーの苗木づくりに焦点を当てたものです。(国土緑化推進機構 緑の募金公募事業/WE21コーヒーの森連絡会サポート)

 

CGNがアラビカ・コーヒーの木の最初の試験的な森林農法による植林をキブンガン町でしたのは2006年です。そのころ、コーディリエラ山岳地方では市場経済が入り込みはじめ、野菜栽培を行うための森林破壊がすごい勢いで進んでいました。森林破壊を食い止めるにはどうしたらいいかと官民を挙げて試行錯誤を繰り返していました。

バギオ市のお隣のラ・トリニダード町にある国立ベンゲット州大学Benguet State UniversityBSU)の高地農法システムと森林農法研究所Instituteof Highland Farming Systems and Agroforestry (IHFSA)では、コーディリエラ地方、特にベンゲット州に多い松(ベンゲット・パイン)の木の下でも、アラビカ・コーヒーが成長するというリサーチ結果がありました。環境に大きな負荷を与えないで、先住民の生計を助ける作物がないかと切り札として「アラビカ・コーヒー」が着目され始めたのです。

https://philcoffeeboard.com/learning-from-seed-to-cup/

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CGNBSUのマカネス・ヴァレンティーノ教授の指導に従って、2006年、イオン環境財団の助成を受け、キブンガン町サグパッド村に6000本ほどのアラビカ・コーヒーの苗木をベンゲット松の木の下などに植え、その生育具合の観察を始めました。

そのころキブンガン町では、大量に栽培されているという違法な大麻に代わる作物として、自治体もアラビカ・コーヒーの苗木の支給を始めていました。環境保全を目的とした環境資源省(DENR)、換金作物の栽培を目的としている農業(DA)もコーヒー栽培を推奨し始め、かなり多くの苗木がキブンガン町のいたるところに植えられたと思います。

それから早くも13年がたちます。サグパット村であの時私たちが支給した6000本のうちのどのくらいが生育しているかはわかりませんが(他団体から支給された苗木と区別がつきませんから)、キブンガン町ではアラビカ・コーヒーは一つの大きな産業となっています。すべての農家がコーヒー栽培に熱心だったとは言えませんが、一部の農家ではかなりの量を収穫をできるまでになりました。


CGNでは、キブンガン町以外にもアラビカ・コーヒーの栽培事業を拡大し、ベンゲット州カバヤン町、トゥブライ町、カパンガン町、マウンテン州バーリグ町、タジャン町などでもアラビカ・コーヒーを中心としたアグロフォレストリー(森林農法)による栽培指導を行ってきました。イオン環境財団には現在に至るまで毎年助成をいただいてこの事業をサポートしてもらっているほか、神奈川県のNPO法人WE21ジャパンにも継続的にサポートをいただいています。もやいネットなど、日本のパートナーNGOを通して国土緑化推進機構・緑の募金からのサポートも何度かいただきました。


事業地で収穫が始まってからは、収穫したコーヒーの実の加工指導も事業内容に加え、品質のいいコーヒーを生産するための技術指導やコミュニティで共有できる小さな加工機材や乾燥資材の提供も行ってきました。たまたま2014年からBSUに森林農法とコーヒー栽培を学びに来ていた山本博文氏には、留学中の2年間、ほんとうに多くのことを教えていただき、彼の指導で山岳地方のコーヒー栽培は大きな進歩を遂げました。

日本のフェアトレード会社への生豆の輸出も始まり、2019年は良質な生豆5トンを輸出するまでになりました。

しかし、10年以上コーヒー栽培に携わっているスタッフにはジレンマもありました。当初予測していた生産量には遠く及ばないのです。いったい原因はなにか?

私たちはもう一度、BSUに指導され私たちが行ってきたアラビカ・コーヒーの栽培の仕方を見直してみようということになりました。


最初は疑心暗鬼に始めたコーヒー生産が収入に結び付くということが証明されはじめ、いまも多くの農家が新たにコーヒー栽培に乗り出しています。CGNをはじめ、地方自治体、農業省、環境資源省、そして加工に関わる通称産業省(DTI)も多くの山岳民族の農民へのサポートを継続しています。

いまからでも決して遅くありません。農家の人たちの努力が報われる地域にあったコーヒーづくりを目指しての仕切り直しです。同時にコーヒー栽培がブームになっている今、現在残っている原生林を破壊して、コーヒー栽培を始める人がいないよう、アグロフォレストリー(森林農法)についてもう一度見直し、環境保全型の栽培を指導していこうということになりました。


NGO「マナラボ 環境と平和の学びデザイン」(京都市)は、私たちの置かれている状況を理解して協力を申し出てくれました。マナラボとともに地域にあった品種を選び、地域の厳しい気象・地理条件でも生き延びることのできる丈夫なコーヒーの苗木の育成事業と、環境に負荷が少ないアグロフォレストリーによる栽培指導が始まりました。(国土緑化推進機構 緑の募金公募事業)


以下は事業を担当したフォレスター、リリーからの報告です。

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 環境保全に取り組むNGOとして、本プロジェクトではコーヒーをアグロフォレストリー・システムで栽培し、土壌と水質の保全と保護を行うと同時に、コミュニティの生計を助けることを目的としている。ゆえに、当事業では品質の良い苗木と認証のあるアラビカ・コーヒーの実験的な生産を行った。

当事業ではそれぞれ気候条件の違う3つのコミュニティで実験苗場を作った。

 

●コミュニティの選考

 計画では、苗場の造成地は、標高が高いところ(1600メートル)、中くらい(1400メートル)、低いところ(1000-1100メートル)としていた。それに基づき、標高が高いところはベンゲット州マンカヤン町バリリ村、標高が中くらいのところはベンゲット州トゥブライ町アンバサダー村。標高が低いところはマウンテン州タジャン町のカヤン村とした。

 標高の一番高いマンカヤン町バリリ村は通常午前11時には雲が出て、午後にはよく雨が降る。温度は15-22度くらい。トゥブライ町アンバサダー村はバリリ村に比べると、湿気は少なく、雨季でも雨の多くはない。気温は15-26度くらい。タジャン町カヤン村は暖かいが、早朝は気温が下がる。とくに乾季は湿度は低い。

 

●苗場(現存している苗場)へのカティモールの実験的育苗

地域の気候に合っているのんではないかと山本氏の推薦があったカティモール(当地域ではモンドノーボと長い間呼ばれてきた)という品種の苗木の実験的栽培を行った。カヤン村とアンバサダー村の現在使われている苗場にスペースがあったため、そこを利用した。マンカヤン町バリリ村には苗場はなく、すべて新しく建設した。

 

カヤン村とアンバサダー村では直径3インチ×高さ10インチのビニールポットに苗を育成した。ポットの中には通常ベンゲット州国立大学の指導に基づき、堆肥50%と土壌50%を混ぜたものを使用した。苗場では黒ネットで日照を50%に調整した。   

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<観察結果> 

二つの苗場とも初期ステージでの発育がよく、堅牢に育っていた。 しかし、苗木生育の後期ステージでは生育スピードはおそくなり、アンバサダー村の苗場では葉枯れや病気が観察された。栄養分はすでに苗木に吸収されており、葉枯れと病気は苗木を弱らせている要因である。こういった事例には苗木の生育を助ける処置が必要になる。

カヤン村では、豚の尿を水で希釈して1週間に一度スプレイしていた。また、ミミズ堆肥の施肥も行った。これらは移植までにコーヒーの苗木が必要としている処置である。堆肥のみでは十分でないと考えられる。苗木への継続的な処置が、のちのコーヒーの順調な生育には欠かせない。

               

標高が高低によるカティモールの苗木の生育状況の比較も行った。二つの苗場とも苗木の移植前までの生き残り比率は高かった。 

標高の高いアンバサダー村の苗場の苗木のほうが、追加の処置をしなくても苗木の葉と新芽がつるつるとしていた。しかし、標高の低いカヤン村の苗場の苗木のほうが生育は早い。カヤン村の苗木は1-1.5フィートに生育していた時に、アンバサダー村の苗木は1フィート以下であった。

上記のような処置は苗木の生育のサポートになる。生育状況の比較をするために、苗木の根のシステムの処理はこの実験では行わなかった。カティモールは、病気に敏感であるが、日陰で元気に生育していることが観察された。移植後の生育状況をさらに観察することが求められる。

 (この観察は、20188月から20196月に行われたものである)

 

 ●実験苗場のための種の入手と苗床への種まき

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ラオスからの証明書のある種の入手は事情により20194月になってしまった。コーヒーの種は、ラオス・コーヒー・リサーチ・センターから入手した。

以下がコーヒーの名称である。

1. H373

2. F5

3. C166 

4.P88

5. P 86  

6. P90

7. ST113 

8. B02

9. F5

10. T8667

11. T5175  

12.LC1662

13. Y 

14. G1702

15.H377  

16.H528

 

上記の種は2019618-19日に、マンカヤン町バリリ村の標高1600メートルの苗場に、527日にマウンテン州タジャン町カヤン村の標高1100メートルに作られた苗場に、522日にトゥブライ町アンバサダー村の標高1400メートルの苗場に蒔かれた。

 それぞれ、発芽率は60%(バリリ村)、70%(カヤン村)、80%(アンバサダー村)である。苗場で種をまくときに、バリリ村とカヤン村では、コーヒーの品種別にタグをつけて種をまいたが、アンバサダー村では種まきを担当した現地の農家が観察実験の意味を解さず、品種を分けずに種まきを行ってしまった。

入手した種の品質が悪かったのは、保存の仕方にあると予測される。コーヒーの発芽は収穫後6か月がもっともいい時期とされているが、種まきまでの保存の時期が長すぎた。また、ビニール製袋に長い時間保存されていたため、一部の種は腐ってしまっていた。種もまた生き物である。慎重に取り扱われるべきであった。

              

カティモール種の種はベンゲット州国立大学で購入した。カティモール種の種は苗床にマンカヤンに2019315日、カヤンで201935日、コロスで524日に蒔かれた。 

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種まきの日と発芽の日

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  種まきの時期、気候の違い、そして種が含んでいた水分の違いが、発芽までの時間に影響を与えている。一般的にコーヒーの種は雨季で1か月くらいで発芽し、乾季では2か月前後で発芽する。

カティモール種は、発芽した種の観察を通して、三地域すべてで栽培に適しているということができる。発芽した苗木のポットの中に用意した培土の違いによる生育状況は以下である。培土の種類別に最低200個を栽培している。

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以下の培土で生育を観察した。標高の違いによる平均的成長の具合(㎝)

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20197月時点で、カティモール種の苗木は元気に健全に生育している。マンカヤン村、カヤン村、アンバサダー村で育成中の苗木の高さはだいたい3-4インチである。中には2インチのものもある。

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 強化剤と農薬をかけた苗木に成長は見られなかった。苗場に苗木があるうちは引き続き観察を続ける。移植が行われたのちも、継続して気候条件の違いによる生育助教の違いの観察を行っていく。

 

●苗木育成のための苗場の造成

 バリリ村では苗床で種まきを終えたのちに、苗木場の造成を行なった。バリリ女性組織、ブギアス地区刑務所勤務の兵士と警察が土地提供者とともに造成作業を行った。バリリ女性組織がポットへの土入れの作業を行った。2019612日は13人の刑務所の職員と6人のCGNのスタッフとボランティア、656日は10人のベンゲット州国立大学森林学部の学生とCGNスタッフ2名で作業を行った。ポットへの土入れ作業はその後も土地提供者とボランティアによって継続された。

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アンバサダー村では、種まきに先んじて新しい苗木場の造成が行われ、20196月に完成した。土入れ作業はアンバサダー村の農民組織MOAPAメンバーとベンゲット州国立大学の学生4名によって、2019656日に行われた。その後、苗床に蒔いた種が発芽し、ポットへの植え替え作業が行われた。

 

カヤン村の実験のための苗場は個人所有の苗場の中に造成された。ラオスから入手した種の発芽率は30%にとどまっているが、引き続き観察を行っている。大量の苗木を生産するための苗場はベンゲット州カパンガン町でダイユコン農民組合を受益者とした。

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 2019年7月現在、バリリ村では1万本のカティモールの苗木が育成されている。ラオスから入手した種は苗床で発芽したところで、まだポットに植え替えられておらず、本数はわからない。

アンバサダー村でも1万本の苗木が生育中。ラオスで入手した種は発芽したばかりでまだ植え替えられていない。カヤン村では2000本のカティモールを育苗中。ラオスから入手した種は現在ポットに植え替え中である。


BPI(植物産業局)への苗場登録申請は延期となった。最低25,000本の苗木ポットがなくてはならず、最低1年間運営が行われていたという経歴が登録の条件であり、それを満たせていないためである。現在育成している苗木の数は各苗場とも約1万本であり、まだ1年が経過していない。今後、条件が満たされ、苗場の管理組織が望んだ場合、登録手続きを自主的に行うことになる。

 

●苗木づくりに関する講習会開催

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 この講習会は本事業を担当するリリー・ハミアスによって、2018712日(カヤン)、727日(コロス)、2019215日(マンカヤン)において開催した。主な講習内容は以下である。

<プラスチック製のポット> 

アラビカ・コーヒーの苗木づくりに適したポットの大きさは、3×3×10インチである。このサイズは森林樹種の苗木づくりに使うものより大きなものである。コーヒーはポットに植えた後、約6か月(クラシック・ビーンズ)から1年(BSU)で植樹地に移植可能になる。ポットの中で生育しすぎるとコーヒーの苗木の根はカールしてしまい、移植時に根の剪定が必要となる。茎と根の長さの比率を観察することが必要だ。

 <ポットの中の培土>

インドネシアのコーヒー専門家が強調しているように、コーヒー生育の基礎となる根はたいへん重要だ。

ポットに入れる培土はふるいにかけて使う(石や大きな土の塊、茎などを取り除くため)。そうすることで根はまっすぐに伸びる。ポットの中の培土は堆肥とまぜ、水をかけたときに土が固まらないようにすることが必要だ。

 <日陰を必要とするコーヒーの苗木> 

苗場は、苗木の葉が焼けるのを防ぐために、日陰を必要とする(黒ネットや木の葉によって)。日陰によって、葉枯れを防ぎ、苗木を弱らせないようにし、病気になることを避けさせることができる。コーヒーの木は生育に50%の日陰が必要だ。

 <種まき>

コーヒーの種は平らなほうを下向きにおいて蒔くことが必要だ(胚の部分が土に触れるように)。そして線上の溝を作って、まっすぐに穴をあけて種をまく。蒔く種にダメージがあってはいけない。病気のない種を選ぶ。ピーベリーも種には適していない。シェル豆(空洞になっている豆)も種には使ってはいけない。以上もエコ氏の講習会で説明された。

               

●コーヒーの古木の更新剪定(リジョビネーション)について

 コーヒーの古木の更新剪定は、トゥブライ町アンバサダー村のフェリー・ダミーロ氏のコーヒー農園で、試験的に2018723日―25日と201961112日に行われた。2018年には約30本、2019年には約40本の、20年以上たっているコーヒーの古い木を更新剪定をした。

20187月は、農園の持ち主、コロス集落の農民組織MOAPAのメンバーと4人のボランティアの学生によって作業が行われた。20196月は、農園主とMOAPA代表のエドウィン・ビサヤ氏と3人の学生ボランティアによって行われた。2回ともボランティアの学生はベンゲット州国立大学農学部の学生で、農園主の指示で更新剪定を行った。現在までに、更新剪定をしたコーヒーの木のうち100%が生存し、新たな芽が出てきて、フェリー・ダミーロ氏が管理をしている。ダミーロ氏の農園が更新剪定をした木としていない木を比較するための格好のサイトとなっている。

 

●植樹活動

 植樹活動はCGNの活動のコアをなすものであり、毎年可能な限りコミュニティにおいてパートナー団体やボランティアとともに植樹を行っている。植樹活動は苗場を造成した3つのコミュニティで実施した。カヤン村での植樹は201881819日に実施され、12人の日本人学生がカヤン村の住民の植樹をサポートした。学生たちはサミュエル・サヨグ氏の土地で植樹を行った。アンバサダー村では、2018811日に日本人ボランティア学生と組織メンバー6人で植樹を行った。2019622日にも5人の日本人ボランティアと4人の組織メンバー、CGN3人のスタッフで植樹を行った。バリリ村では、15人の警察官がCGNが寄付した苗木の植樹をおこなった。

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by cordillera-green | 2019-10-07 22:02 | 植林/アグロフォレストリー
2018年 09月 19日

コロス集落の台風22号(フィリピン名:オンポン)の被害状況

914日深夜(15日早朝)にルソン島北部に上陸した台風22号(フィリピン名オンポン)は、ルソン島北部に甚大な被害を及ぼしました。

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CGNの事業地の一つであるトゥブライ町コロス集落に、アグロフォレストリー(森林農法)で植えたコーヒーの木の台風被害の状況を視察しに行ってきました。

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まずは道路沿いの北西に傾斜した斜面にシェイドツリーとて植えられたアルノス(ハンノキ)の葉は、ほぼ全部吹き飛ばされています。

そしてその下に植えたコーヒーの木も葉も。青くまだ固いコーヒーの実も多くが地面に散乱していました。

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強風に倒されている木も多くあります。

こういった木が生き延びることができるかどうかは、しばらく様子を見る必要があるそうです。

何度もこういった災害を経験しているコロス集落の人たちによると、

「無理矢理まっすぐに戻してはいけない」そうです。

「倒れてしまった木は、周囲の倒木などを片付けてそのままにしておくこと。生命力のある木はまた太陽に向かって再び枝を張り始めます」。


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強風に吹かれているうちに根っこの周りがえぐれてしまい、土がへこんでいる木もあります。

そんな木には、同行してくれた受益者団体MOAPAのプレジデントのエドウィンさんは優しく土を盛ります。

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ネネータさんの農園も被害を受けていました。

「台風が終わった後、農園に様子を見に行くのが怖かった。どんなひどいことになっているかと思って。

この程度ですんでよかったと思っています」

と二コリとしました。

ああ、それでもこの被害。。

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ジョセリンさんの農園も同様の被害です。

倒された木、飛ばされた葉っぱ、落ちてしまった緑のチェリー。。。


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見に行った農園の中では、東南に斜面が向いているベネティン夫妻の農園の被害がいちばん少なかったようです。3人の子供をいずれも10代で奇病で失ったという夫婦には子供がおらず、二人で建てかけのブロックづくりの家で台風をしのいだそうです。まもなく赤く色を変えるであろうコーヒーが、台風後もちゃんと立っているのを見てとてもうれしかったそうです。

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バギオのお隣、トリニダード町の大学に留学中にコーヒー栽培指導をしてくれていたコーヒー博士の山本博文君が、フィリピンを去るときにコロス集落に置き土産のようにおいて行ってくれた「モンドノーボ」という品種が、台風でも葉が落ちず、しっかりと実を付けていました。

ベンゲット州で大学が栽培を勧めてきたブルボンやティピカといった品種はほんとうに大きな被害を受けています。

「同じコーヒーでもこうも違うのか?」

とコーヒーの栽培品種に詳しくない私にも驚きでした。

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CGNの苗場も、直射日光を避けるために設置している黒ネットが大きく破れていました。


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コロス集落のコーヒー栽培をけん引しているフェリーさんは、台風時はマニラの「Coffee Festival」に招待されていて家にはいなかったようですが、戻ったら農器具を置いたり、薪での料理に使ったりしている作業小屋がペシャリとつぶれていたそうです。

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そして堆肥を作っていたコンポストピットも。ミミズ堆肥の台もぺしゃんこです。

「ああ、やることがたくさんありすぎる」

とフェリーさん。

「でもこれを機にもっとしっかりした施設にするわ」

と前向きです。

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2009年に村の真ん中で土砂崩れを起こした台風ペペンの被害を思えば大丈夫」

と集まってくれた受益者の皆さんの笑顔に助けられました。

復興がんばりましょう!


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みなさん、台風被害で生き残ったコーヒーの木のまもなく始まるであろう収穫をとても楽しみにしていて、本年度事業で設置が予定されている乾燥台の設置場所について積極的な意見交換をしていました。

災害が来ても来ても、へこたれずに立ち上がる農家の人たちの忍耐とたくましさには敬服します。

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帰路途中には、ベンゲット町役場の農政課事務所に立ち寄り、課長のジェフリーさんに被害状況についてお話を伺いました。いろいろな地域に視察に行き、バランガイ(村)ごとに被害状況を集計しているそうで、まだ全部の情報が集まっていないそうですが、ジェフリーさんをはじめとする農政課職員のおおまかな観測では約50%の農作物がダメージを受けているという印象だそうです。正式なデータ集計がまとまり次第、CGNにも共有してくれることになっています。

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↑小学校の校庭のウエイティング・シェイドもこんなになっていました。


by cordillera-green | 2018-09-19 20:35 | 緊急支援
2018年 04月 01日

東ティモールのNGOとコーヒー交流

 コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)は、NPO法人「平和環境もやいネット」のパートナーとして実施している「フィリピン北部山岳地方におけるアラビカ・コーヒーの品質向上のための基準作りと普及事業」(公益財団法人・日本国際協力財団助成)の活動として、20168月に3人のコーヒー農家さんとともに東ティモールの日系NGOとコーヒー農家への研修ツアーを実施した。

詳細はこちらのブログで。

 コーヒー栽培の実際について先輩格の東ティモールの農家さんやNGOスタッフから学んだことは多く、また、同じ農家としていろいろな面で共感を感じた有意義なツアーであった。とくに、コーヒーチェリー収穫後の皮むきのための手作りのデパルパーの作り方を、村の名人から手取り足取り教わったのは、かけがえのない経験だった。

 ツアーに参加した3人の農家さんたちは、帰比後それぞれ東ティモールで学んだデパルパー(皮むき機)を手作りし、2017年末から2018年あたまの収穫期では実際に使用した。山の村に流れている空気同様ゆっくりではあるが、東ティモールでの研修の成果は徐々に浸透し、広がりを見せている。



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 そして、フィリピンのコーヒー農家の東ティモール研修から1年余。今度は東ティモールのコーヒー生産に関わって草の根でコミュニティで活動している3つのNGOからスタッフが来比し、コーヒー栽培地を訪問してさまざまなアドバイスを与えるとともに、東ティモールのコーヒー栽培について紹介した。


フィリピンを訪問してくれたのは以下の4名。

●ピース・ウィンズ・ジャパンPeace Winds JapanPWJ)

Mr. Domingos Magalhaes

Field Officer/Coffee farmers (14 years)

Mr. Ademar Martins dos Santos

Field Division Manager

●パルシックParcis

Mr. Nelson Jase Fatima Alves

Processing Manager/Coffee farmer

●パーマティルPARMATIL

Ms. Adozinda Coutinho Barreto Soares

Project Coordinator and Trainer


 4人は東ティモールに帰国後、フィリピンでの経験に関する感想や、経験からフィリピンでのコーヒー事業や農家に対するコメントをお願いした。

 印象に残った場所や出来事を3つ挙げて、その理由を教えてください。

フィリピンの人々がよりよく暮らすために、大切だと思ったことがあれば教えてください。

③東ティモールの人々がよりよく暮らすために、大切だと思ったことがあれば教えてください。

④コーヒー育成に関して、講習で話したこと以外で、特に伝えたいことがあれば簡単に教えてください。

⑤ その他、感想があれば何でも教えてください。


以下は4名からの回答である。

Mr. Domingos Magalhaes(ピース・ウインズ・ジャパン(PWJ))

Mr. Ademar Martins dos Santos(ピース・ウインズ・ジャパン(PWJ))


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1.印象に残った場所や出来事を3つ挙げて、その理由を教えてください。

キブガンでのワークショップが印象的でした。標高が1600mあり、とてもコーヒーにあった土地であったからです。将来的に高品質のコーヒーを作り出すことができる地域であると思います。

2.フィリピンの人々がよりよく暮らすために、大切だと思ったことがあれば教えてください。

コーヒー農園の管理をしっかりと始めることが大切です。また農園の拡張そして、化学肥料を使わないことです。

3.東ティモールの人々がよりよく暮らすために、大切だと思ったことがあれば教えてください。

東ティモールの農家はコーヒーがメインの収入源であり、問題なく暮らしています。例えばレテフォホという生産地では100%の農家がコーヒーを育てており、その収入源で暮らしています。

4. コーヒー育成に関して、講習で話したこと以外で、特に伝えたいことがあれば簡単に教えてください。

コーヒー農家とともに働くことが大切だと思います。政府との連携をしっかりと測り、特に農業省との連携が大切であると思います。そうすることによって農家へ情報が流れ、農家は多くの苗木を植える気になり、農場近くで化学肥料を使用することを控えることができると思います。

5.その他、感想があれば何でも教えてください。

CGNに対する提案は下記のものになります。

-農家のためにデモファームの建設

-苗木の移植とカットバックの推奨

-コーヒーを植えて、カットバックを行わない。トリニダッドの大学の近くのコーヒーの木を見た時に、問題なく生育しており、良い結実であった。

ベンゲットのコーヒー農家に対して言えることは、辛抱強く待つということです。農家と話している時によく聞いたことは、生産量が少ないということでしたが、それはまだコーヒーの木が若いからだと思います。


Ms. Adozinda Coutinho Barreto Soares(パーマティル)

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1.印象に残った場所や出来事を3つ挙げて、その理由を教えてください。

CGNとの旅行はとても印象的でした。ベンゲットの村々を周りとてもまとまっており、楽しくプレゼンテーションができました。若者たちも熱心に話を聞いてくれ、熱意を感じました。私が援助している東ティモールの方々にも共有しようと思っています。

2.フィリピンの人々がよりよく暮らすために、大切だと思ったことがあれば教えてください。

農家の結束力が大切です。実際にたくさんの農家さんがいてとても驚かされました。

3東ティモールの人々がよりよく暮らすために、大切だと思ったことがあれば教えてください。

東ティモールのコーヒー農家は独特なキャラクターがあります。お金のことだけを考えている農家もいれば、しっかりと地に足をつけて働いている方々もいます。満足のいく結果を出すためには、今後は品質を向上させていく必要があります。

4. コーヒー育成に関して、講習で話したこと以外で、特に伝えたいことがあれば簡単に教えてください。

私の提案できることは、コーヒー農家は最高品質のコーヒーを目指すべきだと思います。デモファームを作ると良いと思います。有機のコーヒーが良いと理解するために、有機と非有機栽培で行うと良いかもしれません。サヨテ栽培を行っている村で思ったことは、コミュニティの方達は将来の子供達のために考えていかなければならないと思います。コーヒー栽培を継続することがサヨーテ栽培よりも将来環境にも子供達にも良いことだと思います。もっとコーヒー栽培に関する技術を身につける必要があります。

5その他、感想があれば何でも教えてください。

インドネシア語では、しっかりと説明はできるのですが、私の英語力が足りなく、PWJスタッフとCGNに対して申し訳ない気持ちでいっぱいです。



Nelson Jose F. Alves (パルシック)

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フィリピンの農家さんは熱心に東ティモールの話を聞いてくれました。

ー第一日目カパンガン訪問

フィリピンの農家さんは木製のパルパーをしっかりと作成していました。

アフリカンベッドで乾燥させていた。

1212日収穫されたコーヒーはしっかりと熟しており完熟のみを収穫していた

コーヒーの木はまだ小さく生産量は少なかった。

グラニカという品種を知った

食事は、カパンガンの伝統料理、鳥とサヨーテを煮込んだもの、そしてコメ。お米から作ったお酒。

カパンガンのコーヒー農園へ訪問


-キブガンへ訪問

組合のメンバーは72世帯
メンバーの多くは女性で子供を抱えながらの参加

東ティモールのコーヒー産業並びにパルシックのコーヒーの活動について連絡した

気候は寒く、サヨーテの生産がメインの土地

コーヒーはまだ生育途中で、500キロ。ローカルのマーケットで販売する予定

キブガン訪問後トゥブライ所有の水洗工場に訪問

郡長とともに工場を見学した

工場はコーヒー農家が使用できるようになっており、高品質のコーヒーを産出できる。コーヒーを焙煎することができ、マーケットへの販売も可能


ーベンゲット州の農業省でセミナー

セミナーは8時から5時まで行われ、参加者はすべてのセミナーにしっかりと参加していた。

セミナー内ではディスカッション並びにオープンフォーラムも開かれ、英語とタガログ語で行われていた

CGNより感謝状を拝受した

マニラへ販売される野菜を集荷している大きなマーケットを訪問

珈琲屋を訪問し、コーヒー実から作ったお酒を飲んだ

巨大なマーケット施設SMを訪問


ー今回の渡航のまとめ

訪問したバギオでは、野菜の生産が多く、化学肥料をたくさん使っているようだった。人口が多いためそのようにしていると思われる 。車両の交通が多く、排気ガスの量が多い。コーヒー生産者は女性と老人のみであった。コーヒーを植えている人はあまり多くない。それよりも多くの時間をサヨーテに割いているようだ。サヨーテの栽培だけではなく、コーヒーの栽培にも時間を割けるようになると良い。


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by cordillera-green | 2018-04-01 19:27 | コーヒー
2018年 02月 04日

アラビカ・コーヒー収穫ツアーの参加者から感想をいただきました

 コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)が山岳地方各地で行っているコーヒーのアグロフォレストリー(森林農法)による栽培指導事業は、すでに開始から10年以上がたちました。収穫量も増えつつあり、CGNでは収穫後の加工指導のトレーニングも行っています。また、農家が丹精を込めて育ててきたコーヒー豆が適正価格で取引され、確実に農家の収入につながるように、ソーシャル・エンタープライズ部門https://kapitako.jimdo.com/を創設し、日本のフェアトレードショップへの輸出も本格化させています。
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 山奥深い山岳地方の村々から長い旅路を経て、日本やフィリピン国内でCGNの事業地で栽培されたコーヒーをお楽しみいただいている皆さまに、生産地での植樹、収獲、収穫後の加工を体験してもらおうと、CGNでは雨季(日本の6-9月)には植樹ツアーを、収獲期(11月-翌年1月)には収穫体験ツアーを企画しています。
 2017-2018年収穫期には、4回の収穫ツアーを企画し、フィリピン産のコーヒー産地に興味津々の方々にご参加いただきました。
 2018年1月の収穫ツアーにはパナイ島イロイロ市の日系NGO法人「LOOB」のスタッやインターンの方々も参加くださいました。食品加工の世界で活躍され、退職後の現在はLOOBでアドバイザー的な立場で活動されている江原嘉夫氏より、感想とご意見、ご提案をいただきましたので、ご紹介させていただきます。
 たった1日の農園訪問での的確な観察力とご提案、オリジナリティあふれるアイデアには感服です。企業で培った経験や知識を、こんな小さい片田舎のコーヒー農家でも応用して真摯に意見を下さり心より感謝いたします。

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↑真剣にコーヒー選別体験を行う江原氏(手前黄色いTシャツ)


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CGN Coffee Harvest Tourに参加して                 

江原嘉夫

 なぜ環境NGOがフェアトレードを営んでいるのか、環境と事業とが結びつく背景が理解できました。

1.フェアトレードの意義(私の理解)
 先住民は貧農で市場に遠路農作物を売りに行っても仲買人に買いたたかれ、不当に利益を搾取されている。
 コーヒー園を営むことで不当な利益をむさぼる仲買人を介さず、最終顧客に近いバイヤーを顧客にした市場に参入し、世界標準のフェアな市場のプレイヤーとなる。
 一方、コーヒー園を営まない農家はサヨテSAYOTEという果物を栽培し、生計を立てている。これらは仲買人に買いたたかれるため、貧しい農家は熱帯雨林を伐採してサヨテ畑にして収量を増やし、生計をたてようとしている。そのため、人口増に伴いサヨテ畑が拡張され熱帯雨林が減少しつつある。
 サヨテはコーヒーよりも安いが年間を通じて収穫することができるため、年に1回の収穫しかできないコーヒーよりも不作時のリスクが小さく済むため、普及が進んでいる実態である。しかしながら、モザイクウィルスによる病気がサヨテに大発生し、サヨテ農家は大打撃を受け、コーヒー農家への転向を希望する者も出始めた。コーヒー農家で生計が建てられれば、大いに期待できる。
 コーヒーの木はシェイドツリーShade treeを必要とし、サヨテよりも森林保全の方向へと向かう。また、フェアトレードでつかんだ顧客であれば不当な利益の搾取もなく、努力の報われる農業への転換が期待できる。
 山間地の若者は学校に行って仕事に就きたいと願っているが、貧農のために学校へ行けない若者がたくさんいる。それらの若者の中には、仲買人に一生買いたたかれる貧農の暮らししかない自らの将来を憂い、希望を失って農薬を飲んで自殺するものが多いという。そんな不当な搾取が人の自己実現機会を奪い、本人に落ち度のない形で不幸な人生に終わっているのであればそれはunfairどころではなく許されないことだ。コーヒー栽培を通じてフェアトレードを行い、その貧困のサイクルを打破すること。ここにフェアトレードの大きな意義があるのだと感じた次第です。

2.コーヒー農園で気づいたこと
1)第一印象
・コーヒーの木が整然と並んでいるのかと思ってたら、さにあらず。ぽつりぽつりと木いちごを取るような感覚で摘み取った。枝の高いところに実がなっていたがなかなか取れない。山形のサクランボのように高いところはおいしいのだろうか? そうでもなさそう…。
 であれば、やはり積極的な剪定とシェードツリーとのハーモニーのとれた整然としたコーヒー畑にしないと狭い面積で採算をとるのは難しいのではなかろうか?
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↑アグロフォレストリーでのコーヒー栽培はシェイドツリーとして植えた木の他、
バナナやかんきつ類、パッションフルーツ、しょうが、パイナップルなど
さまざまな換金作物と一緒に植えられている。

・有機農法のコンポスト作成、木酢の製造など、あらゆる有機農法を実行している。お母さんパワーは凄い。すべてのアイテムをこなしていることにおいて、有機農法十種競技のメダリスト級の実践家ではなかろうか!
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↑コーヒー収穫ツアーのために農園を開放してくれたフェリーさんの農園には
ミミズ堆肥施設も。

2)設備に関して

① デパルパー(果肉除去機)
 デパルパーが貧弱。摩擦の強くかかるところが減りやすいウレタン製?と思われるプラスチックでできているとは! 耐久摩耗性からいって設計センスを疑う。軸の芯だしも適当だ。フィリピン農水省推奨とはフィリピンの農水省もだらしがない。その点、CGNさんが東ティモールの手作りのデパルパーの技術をフィリピン農家に伝えようと、農家さんを連れて研修ツアーを実施した行動力はさすがだなと思いました。もっと生産機械を大事に、そして工夫して改善を重ねることが生産性向上につながると思います。
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↑お世辞にも性能がいいとはいいがたい手回し果肉除去機(デパルパー)

②臼と杵
Dehull(脱穀)と粉砕が臼と杵の手作業とは生産農家なのに生産財が貧弱すぎると思います。この工程の機械はそんなに高価にならないと思うので、忙しい農家さんの時間を人力に使うのはもったいないと思いました。時間がコスト(金銭)である感覚がないのではなかろうか?
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↑江原さんも杵臼による脱穀に挑戦。重労働だ。

③小規模コーヒー農園用のロースター
 中小企業の鉄工所に頼んだらできそうな気もするけど金属素材の機能(熱伝導とバーナーの火にさらされてもさびないこと)であることが求められそう。円筒内にフィンを据え付けて撹拌効率を上げるのもありでしょう。要はロースターの構造や材質の機能をあきらかにすれば、ほかの素材でロースターの設計ができるかもしれません。焼鳥では備長炭の遠赤外の調理が好まれてます。
 電気炉内で遠赤外線でのローストをやったらおいしいコーヒーができるかも…と思いました。
 確か遠赤外焙煎の宣伝文句の焙煎豆を買った記憶があります。新製法でオリジナルなコーヒーを作ってみるのも面白いと思います。電気炉なら温度コントロール(火加減)も簡単で、リリーさんのように熟練工でなくとも再現性良く熱履歴をかけられる気がします。プレミアムコーヒーを狙って従来法をエキスパートレベルで追うのもいいですが、一般受けするオリジナルな製法開発も面白いと思います。
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↑農家さんはパーチメントいう殻付きの状態か、生豆の状態でコーヒーを販売する。
自家用には鍋で辛抱強く焙煎。

 ちなみに私はカッピングでNGでしたが、液のTastingになったときにC(正解)に傾きかけたのも事実です。コーヒー初心者の好みを引き寄せる戦略もありでしょう。日本のお米でも、昔は無洗米はなかった。精米技術の進歩(精米機内でスポンジ粒と一緒に擦って糠を落とす)で無洗米が珍しくなくなりました。むしろ糠を取る手間が省ける分、無洗米が売れてます。洗米の排水負荷がかからない分、環境にやさしい形態となっています。技術革新の賜物でしょう。

④コーヒー豆の粒度をそろえる篩(ふるい)
 ダイソーで百円のバドミントンのラケットを買って篩うのではだめですかね。篩の目を細かくする方向であれば糸をさらに巻き付けて篩を正方形にすることはできると思います。サイズが合えばいいんですがね! ミシュレッジ付きでの篩なら精度は悪くともそのあとの製造工程の手間を考えると一次篩として使ってもよいような気もします。ロースト時の焙煎のばらつきを抑えることが目的なら、焙煎時の豆の撹拌で小さい豆が伝熱面にあまり来ないようにする撹拌邪魔板の設計で粒度分布の許容度を広げることもできないでしょうか?たとえば、円筒底面に小さい豆だけが載るような8mmφくらいのバスケットをつけて観覧車のごとく小さい豆は伝熱面の遠いところまでリフトされて落ちるなんてのもどうかしら?コーヒー好きの機械屋がいたらおもしろいですね。どこかに居そうな気もします。

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↑オレンジ色に熟するグラニカ品種
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↑年末年始の休暇を利用して、日本の二つのフェアトレードショップからも
収穫ツアーにご参加くださいました。






by cordillera-green | 2018-02-04 15:10 | スタディツアー
2016年 10月 15日

東ティモールでのコーヒー農家さんとの研修

 

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 2016年8月24~29日、コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)がNPO法人「平和環境もやいネット」のパートナーとして実施している「フィリピン北部山岳地方におけるアラビカ・コーヒーの品質向上のための基準作りと普及事業」(公益財団法人・日本国際協力財団助成)の一環として、3人のコーヒー農家とCGNスタッフとともに、東ティモールに研修に行く機会を得た。


 東ティモール研修の目的は以下。

 フィリピンのコーヒー農家とNGOスタッフが、日本のNGO団体などのサポートにより品質の高いコーヒーを生産し、輸出を拡大している東ティモールのコーヒー栽培地、加工、乾燥、集荷の現場を訪問し、品質向上のための適正技術を学び、東ティモールのコーヒー農家との意見交換を行う。フィリピンからの参加者は、その経験を帰比後、それぞれのコミュニティや活動の場で共有し、実践し、生産するコーヒー豆の品質向上に役立てていく。

*


 一般的にフィリピンのようなアジアの新興国の人々が研修に行くときの行き先は、先進国となる。今回は、アジアで最も新しい国であり、最貧国のひとつである東ティモールが訪問先だった。2016年市場でも街中の商店でも、商品の数は少なく、人々の暮らしが北ルソンの農家以上にシンプルで貧しいものであることは参加者みな感じたと思う。 

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 長いインドネシアとの戦火を経て2002年の独立後に経済の復興・再生を目指したときに、唯一の経済再生のホープとみなされたのが、山岳地域を中心とした広大なエリアにポルトガルの植民地時代から植えられていたコーヒーだったそうだ。独立当初は品質も悪く、信じられないような低価格で取引されており、とても輸出産物として扱われる代物でなかったという。それを、今回お世話になったピース・ウィンズ・ジャパン(PWJ)をはじめとする海外のNGOや政府系機関によって、品質向上の指導が行われ、また流通・輸出ルートの確立に資金投入が行われ、わずか15年の間に目覚ましい品質の向上が行われた。そして、今ではPWJだけでも日本にパーチメントで250トンを輸出しているという、東ティモールを代表する輸出産物に成長した。


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 今回、同行したルソン島北部コーディリエラ地方のコーヒーの農家と比較すると、もっとも違うのは、東ティモールの農家がコーヒーの単一栽培であるのに対し、コーディリエラ地方のコーヒー農家は野菜や米の栽培と兼業している点である。参加者はコーヒー農園の広さに驚き、収獲期の重労働を想像したが、コーヒーしか生計手段がないだけに選択伎はない。コーヒーの品質と収穫量が、そのまま農家の年収に響くわけだから、農家のコーヒー栽培にかける意気込みは中途半端なものではない。地域に生えてる木を切った木材とドラム缶の廃材を使った手作りの果肉除去機(パルパー)の処理能力の高さに一同感心したが、外部からの支援がとどかない小さなコミュニティで、なんとかコーヒー加工の労働を効率的にしようと、身近に手に入るもので工夫して長い年月を改良を重ねて作り上げてきたものなのだろう。

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 このパルパーはコーディリエラ地方の貧しい農家でも、多少複雑ではあるが、資本なしでも自ら作ることができるものだった。問題はメンタリティ。野菜や米の栽培で多少の収入が得られ、またそのための農作業でかなりの時間を割かれるコーディリエラの農家には、農閑期はないと言ってよく、時間と手間をかけて副産物であるパルパーを手作りするより、野菜をもっとたくさん栽培してその収益で買ったほうがラクと思う向きもあるだろう。

 台風被害に常に悩まされているコーディリエラ地方の農家にとっては、東ティモールには台風が来ないという話は羨望のまなざしで受け止められていた。また、訪問したコーヒー農園にまったく病害虫の被害が出ていないことも驚きとともに受け止められた。ある意味、気象条件、そして地理的条件も、訪問した東ティモールの山岳地より厳しいコーディリエラの農家は、無意識のうちに自然災害による打撃を避けるために、複合的な農業を選択していると言えるだろう。コーヒー農園のみが果てしなく続くエリアを移動しながら、

「もっと野菜栽培をしたらいいのに」

と参加者同士は会話を重ねていた。

「病害虫でコーヒーが被害を受けたり、今まで来なかった台風が異常気象でやってきたらどうするのだろう?」

「主食の米さえだれも作っていないのだから、飢えるではないか」


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↑小さな野菜農園を始めた人もいる

 海外からの援助によって輸出産物として成長したコーヒー豆の品質は、コーディリエラ地方の豆とは比較にならないくらい均一で素晴らしいものだった。生産量もケタが違う。今回訪れた地域で目にしたコーヒーの生産過程から学ぶことは実に多かった。

 一方で、あまりに大きな海外中心の資本がまとめて集荷し、どこかわからないところで取引されている状況に、農民があまり関心がないことも気にはなった。コーヒーが食卓に上がるまでの「種」から「カップ」までの、ごく一部のみを担っているコーヒー農家。言われた通りの品質の豆を生産するために精魂込めてつらい作業もこなしているのだろうが、その先の販売は、海外NGOだのみだったり、大資本により大量買い付けだったり。山の中のコミュニティからはまったく目が届かない。

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 コーディリエラの農家はある意味、もっとどん欲だ。隣の農園よりいい豆を生産で来たら、隣よりいい値で売りたい。野菜栽培と販売で身につけてきた競争心がある。できるなら販売ルートを自分や自分たちの農民グループで確立して、ほかとは違うコーヒーとして小売りまで手掛けたいという思いがある。ここでも、他人頼みの大規模な集荷・販売システムに「何かあったらどうする?」とコーディリエラの農家は一抹の不安を感じたようだ。

 国としてはまだまだ若い東ティモール。今の時点では海外からの支援なしでのコーヒー産業の確立は難しいかもしれないが、インドネシア占領時代の苦い経験からアレルギーがあるという農民組合の組織運営を自らの力で行い、農家が誇り高く仕事ができ、国の経済が自立する日がそう遠くない未来に実現することを願ってやまない。


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****************



研修概要:

東ティモールの独立(2002年)前から交流し、独立後もコーヒー栽培による経済の再生をサポートしている平和環境もやいネットが、東ティモールでコーヒー栽培・加工指導と販売サポートを展開する日本のNGO「ピース・ウィンズ・ジャパン(PWJ)」の協力を得て、フィリピンからの5人の参加者(コーヒー栽培農家代表とNGOスタッフ)を対象とした6日間の研修を行った。

研修では、PWJの事業地であるエルメラ県レテフォホの4つのコーヒー栽培コミュニティを訪問し、栽培、収獲、加工、加工機器づくり、乾燥、集荷、販売の現場を見学し、フィリピンのコーヒー栽培地で実践できる技術と知識を学んだ。

また、やはりコーヒー事業を行っている日本のNGO「パルシック」のドライミルの見学も行なった。さらに日本のNGOAPLA」などと協力して有機野菜ガーデンの学校への普及や水保全システム事業を行っている東ティモールのNGOPermatil」代表とも意見交換を行った。

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↑パルシックのコーヒー豆選別工場



旅程:

活動

宿泊地

8/22

PM

<フィリピンからの参加者> 

バギオに集合

バギオ~マニラ 夜行バス移動

バス中泊

8/23

フィリピンから参加者 マニラ4am~インドネシア・バリ8:35(Cebu Pacific 5J279 )

もやいネット・阿部健一、フィリピン参加者と合流

バリ島

エアポートホテル

8/24

AM

PM

バリBali9:30am~東ティモール・ディリDili12:20

(Air Timor QG 7300)

もやいネット・山本博文、フィリピン参加者と合流

ピース・ウィンズ・ジャパン(PWJ)ディリ事務所訪問

PWJスタッフと打ち合わせ

・地域住民によるコーヒー生豆選別場の見学

ディリ~エルメラErmera県レテフォホLetefoho

(レンタカー)

PWJレテフォホ事務所のスタッフと顔合わせ

PWJレテフォホ・ゲストハウス

8/25

AM

PM

レテフォホ~レヌマタRenumata(レンタカー)

・果肉除去機の(デパルパー)の作り方の実習

  講師:Pedrp Soares(レヌマタのコーヒー農家)

・コーヒー農園と水源地見学

・有機野菜畑見学

・レヌマタのコーヒー農家との交流

レヌマタ~レテフォホ

PWJ事務所のサンプル焙煎見学

PWJレテフォホ・ゲストハウス

8/26

AM

PM

レテフォホ~ラカウLacau(レンタカー)

PWJのコーヒー買い付けの様子を見学

・ラカウのコーヒー農家と交流

ラカウ~レテフォホ

レテフォホ~レヌマタ

・果肉除去機作りの実習(前日の続き)

レヌマタ~レテフォホ

PWJコーヒー倉庫見学

PWJレテフォホ・ゲストハウス

8/27

AM

PM

・レテフォホの市場見学

レテフォホ~エラトイEratoi(レンタカー)

・エラトイのコーヒー農家とともに収穫作業体験

・コーヒー農家の栽培地メンテナンス方法を見学

・収獲したコーヒーの実の加工・乾燥現場を見学

・エラトイのコーヒー農家と交流

エラトイ~レテフォホ(レンタカー)

レテフォホ~フンダHunda(レンタカー)

・乾燥台の見学

フンダ~レテフォホ

PWJレテフォホ・ゲストハウス

8/28

AM

PM

レテフォホのカトリック教会のミサ参列

参加者の振り返りミーティング

レテフォホ~ディリ(レンタカー)

・環境NGOPermatil」代表エゴ・レモス氏Ego Lemos氏と会合

ディリ・ビーチ・ホテル

8/29

AM

ディリ

・日本NGO「パルシック」のドライミル工場見学

<フィリピン参加者>

ディリ1:20pm~バリ2:10pm (Air Timor QG 7310)

バリ Ayu Lili Garden Cottages

8/30

AM

PM

バリ8:35am~マニラ12:35pm

Cebu Pacific 5J280

マニラ~バギオ


研修内容詳細:

<果肉除去機作り>

レヌマタ・コミュニティにおいて、約2日間コーヒーの果肉除去機 の作成方法の講習をおこなった。講師は同コミュニティのペドロ氏。果肉除去 において、重要なディスク部分の作成を学び、機械の構造を一つ一つ丁寧にレクチャーしてもらった。部品器具等は、すべてフィリピンにおいても手に入る もので、フィリピンでの製造は可能である

<集荷>

コーヒーの買い付け場面での、集荷方法を学びに ラカウ・コミュニティを訪問した。PWJ においては、パーチメントの段階で買い付けが行われる。収穫から精 選を経て、パーチメントまで仕上げる方法をあらかじめ農家に講習会を行い、品質の均一化を図っている。フィリピンにおいては、生豆の状態まで仕上げる。 集荷は各コミュニティをトラックで訪問し、その場で計量を行う。計量した数 値を記した紙を農家に手渡し、後日事務所にて支払う方法をとっている。フィリピン農家も集荷方法を考え出すとのこと。

<収穫>

エラトイ・コミュニティにて収穫を体験した。一面のコーヒーの木に一同目を奪われて、コーヒー栽培が主に行われている地域の環境を肌で感じることができた。 同地域では、コミュニティ一丸となって、協力し合いながら収穫と精選を行う。

<乾燥>

レテフォホ地域においては、コーヒーの乾燥は、ブルーシートもしくは、アフリカンベットと呼ばれる高床式の乾燥台を使用する。フィリピンにおける乾燥 問題に、直接的に解決できる方法であるとみな感じた。

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<ドライミル工場見学 >

パーチメントを脱觳し、生豆の状態にまで仕上げる工場(ドライミル)を見学した。1 日に約5トンのパーチメントを加工できる施設で、すべて全自動でおこ なえるもの。フィリピン農家が暮らす地域にはまだ存在せず、今後生産量が拡 大してきたときに重要となる施設である。


<まとめ>

それぞれのコミュニティにおいて、各農家と交流した中で、共通していたことは、高く販売するには品質の高いコーヒーを産出しなければならないというこ と。そして、その品質を作り出すための方法を農家は知っているということで ある。このマーケットの求める品質に、農家たちが正確に理解し、生産していくという考えかたにフィリピン農家一同が感心していた。また、果肉除去機等の技術の高さを目の当たりにしたことは、良い経験になったと思われる。

上記とともに、この地域のコーヒーの単一栽培における欠点・問題点がフィリピン農家の間で議論された。もっと土地を有効に使う方法がある。野菜をも っと植えた方が良い。堆肥をもっと使用した方が良い等々。フィリピン農家の 過去の経験から、アグロフォレストリーによる、主作物・副作物の栽培に行い、環境と農業ビジネスのバランスをとっていく必要があるだろうとの指摘があっ た。

東ティモール側においては、今まで供給される側だった農家たちが、フィリピンから自分たちのコーヒーを学びに来ているという事実を知り、彼ら自ら率 先して、フィリピン農家に対して、快活に指導していること自体が成果であっ たと感じる。 今後もこのような活動は続けていくと良い

(平和環境もやいネット 山本博文)

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by cordillera-green | 2016-10-15 13:23 | コーヒー
2016年 08月 30日

カトリック教会グループのフィリピン・ツアー報告

 2016年2月の頭に、カトリックの伊藤幸史司祭と信徒の方々がフィリピンを訪れました。コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)では、イトゴンの鉱山開発地域、コーヒー農園などをご案内しました。参加者の方々がとても素敵な体験レポートを冊子にしてくださいました。オンラインで読めますので、ぜひ!







by cordillera-green | 2016-08-30 13:35 | スタディツアー
2015年 10月 07日

鉱山開発からの脱却・コーヒー栽培にかける人々~トゥブライのコーヒー栽培地レポート 


 コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)では、2010年からトゥブライ町アンバサダー村のコロス集落で神奈川県のNPOWE21ジャパン」とともに「コーヒーの森づくり」事業を行ってきました。2014年度にはキープ協会の協力を得てお隣のマムヨッド集落にもコーヒーの苗木9500本を植樹しました。アンバサダー村ではその他の集落でもコーヒー栽培が盛んと聞いて、マムヨッド集落から周辺集落に足を延ばしてみました。

 

 アンバサダー村は大変貧しく、人々は現金収入につながる手段を探しています。標高や気候はコーヒー栽培に適した地域なのですが、栽培技術の指導もいきわたっておらず、また、苗木も足りません。古いコーヒーの木もありまずがほとんどが伸び放題。きちんと手入れをし、収穫量を上げられれば現金収入にもつながります。また、収穫したコーヒーチェリーを生豆にするまでの適切な加工方法の指導がされ、加工に必要な機材の支給がされたら、かなりおいしいコーヒーができると思います。


 住民の方々の中には、「コーヒー栽培がお金儲けにいいらしい」とうわさで聞き、少しずつでも自力で苗木をつくり新たに植え始めている人も見られます。「栽培技術指導」「苗木支給」「加工技術指導」「加工資材支給」そして「マーケットにつながる組合などの設立と運営」など、せっかく自力で植え始めたコーヒーが暮らしの向上に役立たせるためにサポートできることは数限りなくあると感じました。

 

 今回の視察を通してわかったのは、この地域全体が抱えている問題が「水」であるということです。とくにアンバサダー村の中でも標高の高い地域の乾季における水不足は深刻です。料理や水浴び、洗濯にも水が足りないのに、とても苗木にあげる水がないというのが現状です。

 水源枯渇の原因は1970年代に稼働していたアンバサダー村のサント・ニーニョ鉱山にあるといわれています。露天掘りで掘り出した金の精錬のために大量の水がいるため、鉱山会社が2キロに及ぶ大きなトンネルを掘ったのです。それ以降、今までの水源が枯れ、水はすべて下方にあったサント・ニーニョに流れ出ることになったそうです。

 鉱山は1980年代前半に廃坑となりましたが、変わってしまった地下水脈は元には戻りません。今でも精錬所のあとには水があふれ、「もったいないから、スイミングプールにしよう」という話も持ち上がっています。以前は劇薬を使って精錬に使っていた貯水施設に水を貯めようというのです。世界一大きいスイミング―ルになること間違いなしです。なんという皮肉。


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 トゥブライ町役場の環境資源省事務所のアブナーさんははっきり言います。

「この町のもっとも深刻な環境問題は、標高の高い地域の深刻な水不足。そして標高の低い地域の水の薬品汚染」

 廃坑になって30年以上がたち、精錬に使われていた薬品の恐ろしさを忘れたのか、また、お金の必要な暮らしが蔓延してきたせいか、再び、小規模の個人採掘があちこちで見られます。中国系といわれる中規模の鉱山開発も始まり、今も集落内の土砂崩れ・地盤沈下に苦しむマムヨッド集落の人は村人全員の署名を集め「いかなる鉱山開発も認めない」という嘆願書を提出しました。


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 この地域でコーヒー事業を行うことには、「鉱山開発に代わる生計手段を提案する」という意義が大きいのです。近年、先住民の人々の暮らしは変わり、現金なしには生活できなくなっています。鉱山開発によって先祖代々の大地を傷つけ水を汚すという、苦渋の決断を先住民族自身がすることなく、生計を成り立たせていくための「最後の望みがコーヒー栽培なのです」(アブナーさん)。


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以下、今回訪問した集落のコーヒー栽培に関するレポートです。



マムヨッド集落Mamuyodとアンカワイ集落Ancaway

 マムヨッド集落はハルセマ・ハイウエイからコロスに入る道の1本先を右手に入って約30分の集落。78家屋98家族が暮らしています。200910月の台風ぺペンでコロス集落と同じく集落内に大きな土砂崩れが起き、環境資源省(DENR)のMGB事務所により、集落全体が居住には危険との調査結果が出て、コロス集落地近くのタバオ集落に移住を勧められました。政府(DSWD=社会福祉省)のサポートで資材代が各家屋に7万ペソ支給され、全住民が再定住地に家を建設中。しかし、畑がマムヨッド集落にあるため、だれ一人完全に移住はしていま

せん。集落内では地盤沈下があちこちで起きているほか、台風や大雨、長雨の旅に土砂崩れは拡大しているそうです。


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 トリニダードからのジプニーは11便。集落内にカソリックの一団体が14haを所有し、8年くらい前から有機野菜とコーヒー栽培のモデル農場を始めましたが、土壌浸食、土砂崩れが激しく、プロジェクトを中止し今は土地は売りに出ています。カソリックのシスターたちの協力を得て、コーヒーと有機農業で村おこしを!と張り切っていたマムヨッド集落の人にとって、2009年の台風による土砂崩れと土壌浸食・地盤沈下の進行は大きな痛手でした。

 キープ協会とCGNが行った植樹事業の現地パートナーである住民組織のCitio Mamuyod CommunityAssociation(CMCA)のプレジデントのジミーさん

「先祖代々の土地を守るため、できることはなんでもしたい」

「事業で配布された数の苗木では不十分。もっと苗木をサポートしてほしい」

 マムヨッド集落ではこの事業の前から多くの家で家庭用で飲むためのコーヒーの木を家の近くで栽培していました。また、数軒が販売にも回せる本数のコーヒー栽培をしています。もっとも多くのコーヒーの木を育てているのはダンシオさん(97歳)。高齢であるため、精神障害のある二人の息子が収穫や加工を行っているそうです。1962年に植え始めたそうで1000本近いコーヒーの木を育てていると思われますが、手入れはされておらず伸び放題。古い木は若返りなどの手入れが必要と見受けられました。木製の自家製の手動皮むき器(デパルパー)を使って収穫後の加工はしているそうです。


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 集落の問題は乾季の水不足。隣のアンカワイ集落にある水源林24ヘクタールをマニラの実業家が購入し、近年ほか地域からの移住者に貸しはじめ、森を切り開き野菜畑に転換し始めたそう。

CGNで水源の森を買い取って、コーヒーを植えてくれないか? 24ヘクタールが無理なら1ヘクタールでもいい。あの森が野菜畑になってしまったら、マムヨッドの水は完全に枯渇するだろう」

とジミーさん。

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 マムヨッドのお隣りはたった6家屋(11家族)だけの小さなアンカワイ集落。住民たちはサン・ラモン種のコーヒーを栽培しています。フィリピンのコーヒー会社「Figaro」が仲買人を通じて生豆を買付けに来ていたそうですが、最近は来たり来なかったりでマーケットが安定していないとのこと。


●ロソック集落Los-oc

 アンカワイ集落とナルセブ集落をつなぐ未舗装の道路沿いにある7家屋の小さな集落がロソック。集落の多くを松林に覆われていますが、近年、所有者が切り売りをはじめ、移住者(キブンガンやブギアスの野菜農家)によって野菜畑に転換されつつあります。ロソックの森はトゥブライの貴重な水源であるため、トゥブライ町の環境資源省も阻止に必死ですが、もともと先祖代々の土地を所有していた有力者が個人に販売して私有地となっているため、コントロールが難しいそうです。

 集落内の一等地はバギオの実業家が購入し 以前はバギオの財団「Shongtog Foundation」が有機モデル農場がとして使用していたそうです。しかし、今は稼働しておらず広大なサヨテ畑となっています。手入れがされてないせいか、サヨテにも病気が見られて、もったいないばかり。

 集落の住民は以前から家庭用にコーヒーを裏庭栽培していますが、多くが手入れがされておらず伸び放題でした。

 実はこの集落にはCGNスタッフのレナートの実家があり、そこでは約600本が手入れされて生育中です。レナートの父親は1990年からコーヒーの木を植え始め、少しずつ増やしていったそうです。

ここでも集落全体の問題は水不足。雨水をためて生活用水としているとのことでした。


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●サポアン集落Sapoanナルセブ集落Nalseb


 ハルセマ・ハイウエイからマムヨッドに行くのと同じ道を入り、三叉路を右手に入ってからしばらく行くとサポアン。その奥がナルセブです。サポアン、ナルセブとも世帯数は各約80軒。ナルセブは集落内の大きな面積をカトリックの修道院が保有しており、水源として森を保全しています。ナルセブのさらに奥にはラバイLabay集落があり、隣のボコッド町と接しています。

 ここでも多くの住民が裏庭で家庭用のコーヒーを育てているが手入れはされていません。バランガイ役員のモーセスさんの家には新旧約500本のコーヒーの木が栽培されています。昨年は20キロ程生豆を収穫できたそう。ほかにもナルセブ集落では数軒が同じくらいの本数を育てているとのこと。いままで、NGOや政府によるコーヒー関係のプロジェクトが行われたことはなく、住民もコーヒー栽培への関心は余り高くないとのこと。むしろトゥブライではちょっとしたブームになっているレモン栽培に関心を示しているようです。


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 「コーヒーは収穫後、生豆にするまでの作業がとてもたいへん。皮むき機などの機材もないし、あまり本数を増やしても、加工処理ができないかもしれません」とモーセスさん。


●アキキAkikiAquique)集落

 ナルセブへ行く道から支道を下ったところにある15軒ほどの集落です。CGNの元スタッフで現在双子を育てながら州庁舎で働くジョセリンの実家があります。標高が低いため、今回訪問した集落の中で唯一水不足問題がない集落でした。


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アキキ集落ではジョセリンのお母さんともう1軒が家庭用以上の量を収穫できるコーヒーの木を育てているそうです。それぞれ新旧の木を混ぜてそれぞれ500本ほどのコーヒーの木があるとのこと。

「毎年少しずつ苗木を植えているが、収穫後の杵と臼での作業が大変で、実ったチェリーをすべて収穫できないこともあります。皮むき器(デパルパー)がないのでトウモロコシの粉砕機を工夫して使っているが気を付けないと豆がつぶれてしまいます。いい機械がほしい。そうしたらもっとコーヒーの木を植えたいです」


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by cordillera-green | 2015-10-07 15:11 | コーヒー